サステナ車両とは? わかりやすく解説

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サステナ車両

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/20 06:25 UTC 版)

サステナ車両(サステナしゃりょう)は、西武鉄道(西武)が他社から譲受して運行するVVVFインバータ制御車両に対する同社での独自呼称である。

2024年度から2029年度にかけて約100両の導入が予定されている。

概要

西武は、戦後以降は国鉄払下げ車を導入した一部の例外を除き、自社独自の新造車の導入を進めることで旧型車両を置き換える方策となっている。しかし、これまで新造車によって古い車両をいつまでに、どう置き換えていくかという目標は立てておらず、省エネ車両の導入についても、他社に後れを取っている状況にあった[1]

そんな中、親会社の西武ホールディングスは2022年5月12日、「2022年3月期 決算実績概況 および『西武グループ中期経営計画(2021~2023年度)』の進捗」を発表し[2]、その中でサステナ車両として他社の車両を譲受する方針を明らかにした[3]。他社からの中古車両の譲受は大手私鉄としては初の事例ではないものの、異例である[4]

西武ではメンテナンス性や省エネ性に優れた無塗装車体の導入や制御方式のVVVF化を進めてはいるが、前述の通り関東大手各社の中では後れを取っている状況であった[5]。さらにコロナ禍で需要減が続く鉄道事業の収益構造を見直すべく、固定費の低減などを前倒しで実現する一環として、他社から中古車両を譲り受ける方針を示した形である[6]。2022年12月の「JREA」誌では、2030年度までに西武鉄道の保有する全車両のVVVF化を目指していることが明かされ、また非VVVF車を全て新造車に置き換える場合はVVVF車への統一が2036年度になる見込みであったとしている。

西武によると、中古車両の導入費用は新車の投入と比べて半分程度で、初期投資を大幅に抑えられるという。西武は「サステナ車両の導入はコストよりもSDGsへの貢献や環境への配慮が目的」と強調しつつも、短期間に大量の車両を置き換えることで、省エネ化、固定費削減を前倒しで実現するために、低コストでの置き換えを計画している[5]

「サステナ車両」の定義としては、当初の発表では「無塗装車体、VVVFインバーター制御車両等の他社からの譲受車両を当社独自の呼称として定義[3]」と記されていたが、西武の2023年度鉄道事業設備投資計画では「VVVFインバータ制御車両等の環境負荷の少ない他社からの譲受車両を指す(当社独自呼称) [7]」となり、後述する2023年9月26日の発表以降では「他社から譲受したVVVFインバータ制御車両を西武鉄道独自の呼称として定義 [8]」と変更されている(同日発表された車種には塗装を必要とする普通鋼製の小田急8000形も含まれていた)。これについて西武鉄道は、無塗装の車種に絞ると条件が見合わず、また無塗装でなくともVVVFインバータ制御であれば環境負荷の軽減につながると説明している[5]

投入形式

2023年9月26日、西武はサステナ車両の内訳について発表した。小田急電鉄8000形国分寺線に、東急電鉄9000系多摩川線多摩湖線西武秩父線狭山線に、合計約100両導入するものとし、このうち前者は2024年度に運行を開始する予定(後者は2025年度以降)であるとした[8]。直後の報道では上記に加え、車両数の内訳が小田急8000形は6両編成で40両程度、東急9000系は4両編成で60両程度となること、また後者には東急9020系も含まれることが示された[5][9][10][11]。なお、これらは有償で譲り受けるものである[12]

西武8000系と種車の小田急8000形
西武鉄道が譲受を予定している東急9000系および9020系

動向

小田急8000形→西武8000系について

2024年(令和6年)9月20日発売の鉄道ファン誌にて具体的な導入予定数(6両編成7本の42両)が明かされ[13]、続けて最初の発表から丁度1年となる同9月26日にはデザインと西武での車両形式(8000系)が発表された[14]。このデザインは社内で車両係員より募集し検討の上で決定されたものである[14]。その後2025年1月7日には、運行開始予定を当初の2024年度末から2025年5月末に変更したと発表[15]。同年4月10日には車両が報道陣に公開され、同5月9日、定期列車としての営業運転開始が5月31日になると発表された[16]

サステナ車両1本目となったのは元小田急8000形の8261×6→西武8000系の8103編成で、2024年5月20日に小手指車両基地に到着、同日にX(旧Twitter)にて公表された[17]。7月1日に武蔵丘車両検修場へ自走の上で入場し改造工事を実施、その後2025年1月7日に主要な更新を終えて出場したことが同日にリリースされている[15]。西武ではこれ以外にも輸送、回送や改修工事の様子をXやYouTubeに随時投稿し、またかわら版に「サステナ車両 デビューへの道」として2024年7月より隔月で掲載しているほか、改造にあたっては報道の取材も受け入れている。

東急9000系について

2025年4月11日の報道において、8000系同様に車両部内で新たなデザインを募集中であることが明かされている[18]

出典

  1. ^ 西武「黄色い電車」に終了宣告 他社からの譲受で“無塗装車”増備へ 大手私鉄で異例”. 乗りものニュース (2022年5月13日). 2023年10月2日閲覧。
  2. ^ 決算関連資料”. 西武ホールディングス. 2023年10月2日閲覧。
  3. ^ a b 2022年3月期決算実績概況および「西武グループ中期経営計画(2021~2023年度)」の進捗 (PDF) - 西武ホールディングス
  4. ^ 過去に大手私鉄が他社から車両を譲受した事例としては、名古屋鉄道が東京急行電鉄(当時)から3700系(名鉄では3880系)を、南海電気鉄道泉北高速鉄道から3000系を譲受したという例が知られる。
  5. ^ a b c d 西武が小田急・東急の「中古車両」を導入する狙い”. 東洋経済オンライン. p. 2 (2023年10月1日). 2023年10月2日閲覧。
  6. ^ 西武が中古車両の導入を視野に…鉄道事業の固定費削減などを推進”. レスポンス (2022年5月16日). 2023年10月2日閲覧。
  7. ^ 2023年度鉄道事業設備投資計画 安全追求・環境対策・魅力向上・技術革新へ総額251億円”. 西武鉄道. 2023年10月2日閲覧。
  8. ^ a b c 西武鉄道と東急電鉄・小田急電鉄 「サステナ車両(※)」を授受 各社連携して、SDGsへの貢献を加速してまいります”. 西武鉄道 (2023年9月26日). 2023年10月2日閲覧。
  9. ^ 西武鉄道に東急や小田急の車両 中古車両を有償で 導入いつから 理由は?”. NHK首都圏ナビ (2023年9月28日). 2023年10月2日閲覧。
  10. ^ 西武の「サステナ車両」実は3車種!? 東急9000系そっくり元・田園都市線「9020系」のゆくえ”. 乗りものニュース (2023年9月30日). 2023年10月2日閲覧。
  11. ^ “西武が導入する「サステナ車両」、発表にない「第3の形式」も? 譲受車両の運用、既存車両の今後の動向を聞く”. 鉄道コム. (2024年9月30日). https://www.tetsudo.com/column/643/ 
  12. ^ “西武鉄道“サステナブルな車両”運行へ 東急と小田急から約100両譲り受け”. 日テレNEWS NNN. (2023年9月26日). https://news.ntv.co.jp/category/society/54d0a48f73aa47ba84b514cc4e62eed8 
  13. ^ 橋本政明「小田急電鉄8000形の足跡」『鉄道ファン』通巻763号、2024年11月、058 - 065,158。 
  14. ^ a b 「サステナ車両※」小田急電鉄譲受車両のデザイン・車両形式が決定』(プレスリリース)西武鉄道、2024年9月26日。オリジナルの2025年1月8日時点におけるアーカイブhttps://web.archive.org/web/20250108161902/https://www.seiburailway.jp/newsroom/news/20240926_sasutenatrain/2025年1月8日閲覧 
  15. ^ a b 「サステナ車両(8000系)」運行開始が2025年5月末に決定!”. 西武鉄道. 2025年1月28日閲覧。
  16. ^ "「サステナ車両」いよいよデビュー! 営業運転開始日が2025年5月31日(土)に決定!" (Press release). 西武鉄道ニュースリリース. 9 May 2025.
  17. ^ Xユーザーの西武鉄道【公式】さん: 「小田急電鉄から授受された #サステナ車両 「8000形」の第1編成が小手指車両基地に到着しました🚃ロイヤルブルーの帯がとても輝いていますね✨ 西武の電車との貴重なツーショットもお届け!国分寺線での営業運転開始に向け着々と準備していきます✨   #西武鉄道 #西武線 #小田急電鉄 #小田急 #8000形
  18. ^ 東急→西武の譲渡車両は「大がかりな改造」に!そのワケとは? いよいよ始まる車両の移籍”. メディア・ヴァーグ 乗りものニュース (2025年4月11日). 2025年5月6日閲覧。



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