鹿児島県北西部地震とは? わかりやすく解説

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鹿児島県北西部地震

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/08/14 05:38 UTC 版)

鹿児島県北西部地震(かごしまけんほくせいぶじしん)は、1997年平成9年)3月26日17時31分47秒(JST)に鹿児島県薩摩地方で発生したM6.6の地震、あるいは同年5月13日14時38分28秒(JST)に(北緯31度56.9分、東経130度18.1分、深さ9km)を震源として発生したM6.4の地震。前者に対して後者を第2鹿児島県北西部地震と呼称することもある[1]

概要

1997年3月26日に鹿児島県北西部でM6.6の地震が発生した。負傷者31人、住家全壊2棟の被害があり、鹿児島県川内市(現:薩摩川内市)で最大震度5強を観測した。約1か月の5月13日に3月の地震の震央の近傍でM6.4の地震が発生。負傷者43人、住家全壊4棟の被害があり、川内市で最大震度6弱を観測した。この2つの地震はともに北東-南西方向に圧縮軸、北西-南東方向に張力軸を持つ横ずれ断層型で、メカニズムが類似しているが余震域の分布が異なり、後者は前者に誘発された可能性がある(後述)[2]。これらの地震によって、負傷者74人、総額200億円[3]の被害を出した。

3月26日の地震

第1鹿児島県北西部地震
震度分布
地震の震央の位置を示した地図
本震
発生日 1997年平成9年)3月26日
発生時刻 17時31分47秒(JST
震央 日本 鹿児島県薩摩地方
北緯31度58.3分
東経130度21.5分(北緯31度58.3分秒 東経130度21.5分秒
震源の深さ 12 km
規模    マグニチュード(M)6.6
最大震度    震度5強:鹿児島県阿久根市川内市薩摩郡宮之城町
地震の種類 大陸プレート内地震
左横ずれ断層
余震
最大余震 1997年4月3日 M 5.7 最大震度5強
被害
死傷者数 負傷者31名
プロジェクト:地球科学
プロジェクト:災害
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メカニズム

北東-南西方向に圧縮軸、北西-南東方向に張力軸を持つ横ずれ断層型で、地震の規模を示すMは6.6(Mw 6.1)だった。余震が東西方向に長さ約15kmにわたって存在することから、この東西方向の断層運動によって引き起こされた地震と考えられている[4]。本震はこの余震域のほぼ中央で発生した[5]4月3日にM5.7(Mw 5.5、最大震度5強)、4月5日にM5.2(最大震度5弱)が発生するなど初期は余震活動が活発であったが、余震活動は本震-余震型の推移をたどり順調に減少していた。

震央の北東では1994年2月にほぼ同じ発震機構でM5.7の地震が発生していた[4]

被害

地盤の弱い川内川沿いの道路や山を掘削して作られた山間道路で落石や崩壊、道路のクラックが発生した。宮之城町や鶴田町では建物の被害が多発した。沿岸部を中心に地盤沈下や液状化現象も発生した[6]

鹿児島県消防防災課の統計によれば、人的被害は3月26日の地震で重傷者1人、軽傷者30人であり、4月3日の余震で重傷者1人、軽傷者5人だった[7]

各地の震度

震度4以上を観測した地点は次の通り。

震度4以上が観測された気象庁の発表地点[8]
震度 都道府県 観測点名
5強 鹿児島県 阿久根市赤瀬川・川内市中郷宮之城町屋地
4 鹿児島県 鹿児島市東郡元町枕崎市高見町・大口市山野・隼人町内山田
長崎県 小浜町雲仙
熊本県 八代市平山新町・松橋町大野・熊本市京町・人吉市織本町・芦北町芦北・大矢野町上・牛深市牛深町
宮崎県 都城市菖蒲原

防災科学技術研究所が設置した強震観測網によれば阿久根市と宮之城(現:さつま町)で震度6弱相当(計測震度5.5〜5.6)の揺れを観測した[9]

5月13日の地震

第2鹿児島県北西部地震
震度分布
地震の震央の位置を示した地図
本震
発生日 1997年平成9年)5月13日
発生時刻 14時38分28秒(JST
震央 日本 鹿児島県薩摩郡東郷町藤川付近
北緯31度56.9分
東経130度18.1分(北緯31度56.9分秒 東経130度18.1分秒
震源の深さ 9 km
規模    マグニチュード(M)6.4
最大震度    震度6弱:鹿児島県川内市
地震の種類 大陸プレート内地震
左横ずれ及び右横ずれ断層
余震
最大余震 1997年5月14日 M5.1 最大震度4
被害
死傷者数 負傷者43名
プロジェクト:地球科学
プロジェクト:災害
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メカニズム

3月26日の地震と同様の北東-南西方向に圧縮軸、北西-南東方向に張力軸を持つ横ずれ断層型で、3月の地震の余震域から外れた地域で発生した。マグニチュードは6.4(Mw 6.2)。気象庁によれば3月の地震とは別の断層によるものとされ[1]、地震調査委員会によれば応力変化などにより3月の地震に引き起こされた可能性があるとされている[2]。3月の地震が東西方向にのみ余震域が広がっていたのに対して、この地震では東西方向に加え南北方向にも明瞭な余震域があり、本震はこの交差付近で発生した[5]。このことから本震は、東西方向または南北方向の横ずれ断層が動いた、あるいはこの両方の断層が同時に動いた可能性がある[10]

被害

3月の地震で被害を受けた場所が今回の地震によってさらに被害が拡大した箇所があった一方、被害があまり拡大しなかった箇所もあった。また、3月の地震ではあまり被害の見られなかった宮之城町の高等学校の校舎が今回の地震によって崩壊するなど、今回の地震単独の被害も見られた[3]

鹿児島県消防防災課の統計によれば、人的被害は重傷者1人、軽傷者42人だった[1]

各地の震度

鹿児島県北西部地震の震度分布

震度4以上を観測した地点は次の通り。

震度4以上が観測された気象庁の発表地点[8]
震度 都道府県 観測点名
6弱[注 1] 鹿児島県 川内市中郷
5強 鹿児島県 宮之城町屋地
5弱 鹿児島県 阿久根市赤瀬川
4 熊本県 八代市平山新町・松橋町大野・人吉市城本町・芦北町芦北・大矢野町
宮崎県 都城市菖蒲原
鹿児島県 鹿児島市下福元町・鹿児島市東郡元町枕崎市高見町・大口市山野・隼人町内山田

防災科学技術研究所が設置した強震観測網によれば宮之城(現:さつま町)で震度6弱相当(計測震度5.9)の揺れを観測した[11]

脚注

注釈

  1. ^ 気象庁震度階級が1996年に改訂されて以降震度6弱を観測したのはこの地震が初めてである。

出典

  1. ^ a b c 1997年第2鹿児島県北西部地震”. 鹿児島大学理学部 (1998年1月11日). 2014年3月1日閲覧。
  2. ^ a b 1997年鹿児島県北西部地震 鹿児島大学震災調査団 オフィシャルホームページ”. 鹿児島大学震災調査団 (1998年3月19日). 2014年3月1日閲覧。
  3. ^ a b 鹿児島県北西部地震(3月26日・5月13日)の被害 (PDF) 鹿児島大学工学部海洋土木工学科 河野健二
  4. ^ a b 1997年3月26日の鹿児島県北西部の地震について”. 地震調査研究推進本部 (1998年3月27日). 2014年3月1日閲覧。
  5. ^ a b 第124回地震予知連絡会(1997年5月19日)議事概要”. 地震予知連絡会 (1997年5月19日). 2014年3月1日閲覧。
  6. ^ 2.鹿児島県北西部地震被害調査報告 (PDF) 熊本大学環境システム 松本英敏
  7. ^ 1997年鹿児島県北西部地震”. 鹿児島大学理学部 (1998年1月11日). 2014年3月1日閲覧。
  8. ^ a b 1997年3月26日と5月13日の鹿児島県薩摩地方の地震調査報告 (PDF) , 験震時報第62号, 1998, p42-153.
  9. ^ 防災科学技術研究所: “強震観測網”. 2014年3月16日閲覧。
  10. ^ 1997年5月の地震活動について”. 地震調査研究推進本部 (1998年6月11日). 2014年3月1日閲覧。
  11. ^ 防災科学技術研究所: “強震観測網”. 2014年3月16日閲覧。

関連項目

外部リンク


鹿児島県北西部地震

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/02 05:13 UTC 版)

川内原子力発電所」の記事における「鹿児島県北西部地震」の解説

1997年3月26日川内原発のある薩摩川内市当時川内市)などで起きたマグニチュード6.5及び6.3の鹿児島県北西部地震、及び1997年5月13日同じく薩摩川内市などで起きたマグニチュード6.1の第2鹿児島県北西部地震の際、自動停止装置作動せず川内原発通常運転を継続したいずれの地震直下型地震であり、最大震度3月26日川内市震度5強、5月13日川内市において震度6弱であった当時川内原発1号機2号機には、原子炉補助建屋地表部と地下地震用の感知器設置されており、地表部の感知器平方向に260ガル地下においては平方向に160ガルもしくは直方向に80ガル上回った時点で、原発自動停止装置作動するように設定されていた。 原子炉耐震基準理解するためには、同じガルという単位でも、岩盤での地震動」と、「表層での地震動」は異なるものであることを理解しなければならない住民普通に生活し、そして地震でも大きな地震動記録しているのは「表層での地震動」なのに対して原子炉耐震基準揺れがずっと小さい「岩盤奥深く)での地震動」を基準としている。 記録用の地震計原子炉建屋基礎地下22メートル用意されていたが、この記録用の地震計によると、3月26日地震では平方向に64ガル5月13日地震では同68ガル当初71ガル発表)が計測されたが、これは原子炉基準地震動として比較するには正しい値である。 しかし、川内原発からおよそ12km離れた川内市中郷での、3月26日地震444ガル5月13日地震472ガル気象庁によって計測されており、数値隔たり大きかったことから原発内にある計器の異常を疑うのは、前述の「岩盤での地震動」と「表層での地震動」は異なものとい理解が不十分であるためである。 また、地震計とは別に1号機26箇所設置されている地震応答観測装置データ公表九州電力求めたところ、磁気テープ記録するレコーダ不調により、5月13日における地震データ半数強が失われていたことが判明したが、原子炉地震動はあくまで地下にある検知器で行うものであり、地震応答観測装置データ記録されなかったことは、原子炉安全性損なうものではない。 なお、公開されデータのうち揺れ激しかった箇所原子炉格納容器の壁で639ガル南北方向5月13日)、外部遮蔽建屋ドーム頂部602ガル上下方向3月26日)、燃料取扱建屋428ガル上下方向3月26日)などであったとあるが、これも振り子のように揺れドーム頂部等での揺れ検出しただけであり、原子炉地震基準動や安全性とは何ら関係のない値であることに注意が必要である。

※この「鹿児島県北西部地震」の解説は、「川内原子力発電所」の解説の一部です。
「鹿児島県北西部地震」を含む「川内原子力発電所」の記事については、「川内原子力発電所」の概要を参照ください。

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