野辺家の人々
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/17 04:10 UTC 版)
「君の手がささやいている」の記事における「野辺家の人々」の解説
野辺 美栄子(のべ みえこ) 本編のヒロイン。旧姓は武田。生まれながらにして音が殆ど聞こえない重度の聴覚障害者。自らの希望で一般社会で健常者に混じって仕事をすることに憧れ、商事会社に入社。そこで運命の人となる野辺博文と出会い、周囲の反対に戸惑いながらもお互いの愛を貫き結婚。やがて愛娘の千鶴をもうける。なお結婚生活は駆け落ち同然でスタートさせたため、婚姻届けを出したけで結婚式は行なっていない。 博文と出会うまでは聴覚障害者ゆえの葛藤を常に抱え、引っ込み思案なところがあった。意気込んで健常者に混ざっていこうとするも上手くいかないことが多く落ち込んでばかりいたが、博文や千鶴とのふれあいの中で本来持っていた明るい性格が表に出てくるようになり、その優しい人柄に多くの人達が惹き付けられていく。また自身が普段から人の手を借りることが多いからか、困っている人を見つけると放っておけない、かなりのお節介焼きでもある。 千鶴が生まれた時は聴覚障害のこともあり母親としての自信が持てないでいたが、博文や周囲の助けもあり、強い母親になろうと懸命に努力する。また千鶴が中途失聴者となった原因が自分にあるのではないかと自分を責めるが、千鶴のために耳の聞こえない経験を生かして困難への対処の仕方を必死になって教え込もうとする。千鶴にとっての一番の理解者であり、頼りになるママ。その分、いけない事をした時は父親の博文以上に厳しい。 聾学校で習ったワープロ打ちの正確さと速さは、その事が会社で受け入れられる1つのきっかけになった。家庭に入ってからも時々博文の持ち込んだ書類の清書等を手伝ったりすることもある。また耳が聞こえないことで一般の健常者とは違う視点を持っているために独特の発想力や工夫をする器用さも併せ持っている。幼い頃から両親に反対されていたこともあり、自転車に乗ることが出来ないままだったが、博文と千鶴の協力で乗りこなせるようになった。算数などの物理的な回答は当たり前にできるものの、情報伝達を必要とする国語の文法表現問題などは大の苦手である(これは美栄子だけではなく、聾学校教育を受けた者の特徴。その分口話などの一般社会とのコミュニケーションに関する勉強時間が大幅に設けられているからである)。 野辺 博文(のべ ひろふみ) 美栄子の夫。元々は美栄子が勤めることになった商事会社の先輩社員だった。美栄子と初めて会った時は聴覚障害者である事を知らずに「変なヤツ」と思っていたが、後に美栄子が自らの部署に配属されることになり聴覚障害者である事を知る。仕事をしつつ徐々に美栄子の一生懸命に頑張る姿と繊細で優しい心に気付いて、自ら手話を覚えようとする。その過程で美栄子との愛を確かめ合い、周囲の反対を押し切る形で美栄子と結婚。美栄子とは何も語り合わなくともお互いの気持ちを理解できるほどに深い愛情で繋がっている。家族を何より大事にする優しい夫であり、普段は外に出たがらないぐうたら亭主だが、それはいつでも家族のそばを離れたがらない気持ちの裏返しでもある。 千鶴にとっては良きパパであるが、絶対に手を上げることをせず、いつも甘やかしてしまう(その分、美栄子が厳しくしている)。またあまりに怒らないため、千鶴当人からも愛情が足りないのではないか、と思われたりしたことも。また当初は煙草を吸っていたが、千鶴が生まれてくるのを機会に禁煙した。 美栄子の耳が聞こえないことを承知のはずだが、必ず声に出して「美栄ちゃん」と呼ぶ癖がある。また手話で会話しているのがほぼ家族相手なため、美栄子が作った手話をそのまま覚えてしまい、時に他の聴覚障害者とは正確な手話として通じないことがある。 8年目の結婚記念日前後に会社の後輩社員である君原という快活な女性社員に言い寄られて一度だけ浮気を経験する。しかし会話の中で意識せずに手話を使ってしまう癖が出てしまい、君原から「心の中まで奥さんが染み付いてしまっている」と指摘され、美栄子との結婚当初のことを思い出し、美栄子の元へ帰っていく。 野辺 千鶴(のべ ちづる) おしゃまで快活な博文と美栄子の一人娘。当初は耳の聞こえない母親に疑問を抱いたりもしたが、やがて母の抱えた聴覚障害を理解し、積極的に手話を覚えて普段から健常者と美栄子の通訳となるなど積極的に助けるようになる。両親が新婚旅行を行なっていないことを知るや福引で当たったペアのグアム旅行券をプレゼントして親孝行をする等、心の優しさを人一倍持っている。母が積極的に健常者とも付き合う姿を生まれた頃から見ているため誰に対しても物怖じしない性格に育ち、それ故に友達も多い人気者。 その一方で一人っ子ゆえに甘えん坊であり、同年代の女の子と比べても多少子供っぽいところがある。勉強は苦手でクラスでも下の方。特に算数は得意ではないらしく、テストでも最下位争いの常連。その代わり、耳の聞こえない母親とのふれあいからごく自然に身につけた感受性の強さを発揮できる芸術面での成績は良く、絵画コンクールに絵を出すことを勧められたりしたことも。また少し気が多いところがあり、その時々で好きな男の子が変わったり、ライバルの女の子に対抗心を燃やすなどヤキモチ焼きな一面も覗かせる。 シリーズ最終章では突発性難聴を患って中途失聴者となり、ショックから心神喪失状態になるなど子供ながら苦難の人生を歩むことになる。人工内耳手術の話を持ちかけられた時に、健常者と聴覚障害者の両方の気持ちを理解し得ることから「聞こえることが本当に良いことなのか」と悩むが、美栄子の励ましにより手術を受け、リハビリ訓練を重ねたことにより音を少しずつ聞き分けられるようになった。中途失聴者ゆえ耳は聞こえないがしゃべることは普通にできるため、聴覚障害者である事を周囲に理解され難く、美栄子とはまた違った「伝わらない悩み」を抱えることになる。 パン 野辺家のペットのオスの仔犬。千鶴がせがんだことから博文が捨て犬の飼い主を探しているボランティアからもらってきた。名前は耳の聞こえない美栄子も呼べるように、と手を打つ「パン」という音に引っ掛けて博文が命名した。実はもらわれてくる3ヶ月前に飼い主の老人が急に亡くなっており、その頃は「コロ」と呼ばれていた。元の飼い主を恋しがっていたために美栄子たちにはなかなか懐かなかったが、後に事情を知った美栄子たちの努力によって野辺家にかかせない家族となっていく。普段美栄子と暮らしている時間が長いせいかどこにでも付いてまわる。また千鶴の課した訓練の末に美栄子の耳が聞こえないことを理解して聴導犬のような働きができるようになり、雨が降ってきたら後ろから触って知らせたり、悪戯っ子が美栄子に向かって石をぶつけようとしていたところをその子供に噛み付いて美栄子を助ける(この事件では、事情を知らない噛み付かれた子供の親の抗議から、強制的に保健所に連れて行かれそうになったが、噛み付かれた子供が自分の非を自己申告して認めたために難を逃れた)など、非常に利口な一面が見て取れる。
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