文法・表現
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/29 00:25 UTC 版)
断定の助動詞は「や」または「じゃ」である。大正期までは専ら「じゃ」が用いられていた。 否定の助動詞は「ん」「せん」「へん」。「へん」よりも「せん」が多い。否定の過去形は「なんだ」。 推量は「…やろー/じゃろー」である。「雨が降らず」のような「ず」や、「降るら」のような「ら」、「ら」の変化した「だ」もあるが衰退している。また奥飛騨に「…じゃらず/であらず」がある。同じ類の表現(「…だらず」等)が長野県北東部と長野、愛知県境付近に分布しており、古い特徴と考えられる。「行かすか」(行くものか)、「あらすか」(あるものか)のような表現の「す」は推量「ず」の一種と考えられる。否定推量に「まい」が使われるが、「まいか」の形で勧誘にも用いる。飛騨弁では「行かまい」のように未然形接続である。 西日本の方言に多い、副詞を用いることなく進行相と完了相を区別する表現を用いる。例えば英語の "be doing" を示す「やりよる」、 "have done" を示す「やっとる」のように使い分けすることが可能である。 待遇表現では、尊敬の助動詞に以下のものがある。 「…っしゃる/さっしゃる」「…っさる/さっさる」は、飛騨弁で広く使われる。「せらる」の変化したもの。「行かっしゃる」「見さっしゃる」のように動詞の未然形に付く。 「…はる/らはる」は、高山市付近で用いられる。「行かはる」「見らはる」のように未然形に付く。近畿方言の「はる」とは語源が違うと考えられる。 「…っせる/さっせる」は名古屋弁・美濃弁で使われるものだが飛騨中央部でも使われる。「しゃる/さっしゃる」が下一段活用に変化したものとされる。 ほかに「…なはる」「…んさる」「…なれる」「…やる」も使われる。いずれも連用形に付く。「やる」は尊敬というより親愛語で、使うのは高齢層に限られる。 尊敬の補助動詞には、「…ておいでる」「…てござる」「…ておくれる」「…てくだれる」がある。「ござる」は「おいでる」よりも待遇度が低く、使うのは高齢層だけになっている。「くだれる」も同じく、「おくれる」より待遇度が低く高齢層のみになっている。 文末に「(なん)やさ」をつけるのが飛騨弁の特徴とされる。また、男性は「(なん)やうぇ」とつけることも多い。
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