転機となったヒロインの娘役
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 18:59 UTC 版)
「小芝風花」の記事における「転機となったヒロインの娘役」の解説
18歳で出演した連続テレビ小説『あさが来た』では、ヒロインオーディションの最終選考にも残っていたが落選。しかし、復活起用によって得たヒロインあさと対立する一人娘の役をリアルに演じ、その評価は小芝の役柄の幅を広げる転機となる。高視聴率を続ける『あさが来た』に途中から加わり、世界観が創られている現場に入るのは不安だったそうだが、古風な顔立ちがかつらや袴と似合って明治の娘っぽいと好評で、その役どころ同様、撮影現場でもかわいがられている。選考にあたった脚本家の大森美香によると、「本当に大阪の豪商の生まれじゃないかと思える」ぐらいに抜群に良かったが、残念ながら年齢が足りなかったとの事。その代わり難役となるヒロインの娘役にぜひにと推したところ、「撮影現場でも小芝さんのシーンには演出陣も気合が入っている」と感じたという。そんな小芝を共演の友近は「今結構な大女優さんの30年前の若い頃の顔のよう」「演技派です」と語る。『あさが来た』の橋田賞受賞式には大森美香に同行し、「お母ちゃんじゃなくてごめんなさい。娘の千代ですいません。波瑠さんじゃなくてごめんなさい」と謙虚にあいさつした上で、ドラマを代表して受賞の喜びを語ったという。 ブルーリボン賞の新人賞受賞から1年。ヒロインの長女というもう一人の“朝の顔”を目指して、少女から大人に成長する一人の女性の姿をフィギュアで培った持ち前の“向上心”で熱演。この役で得た演出陣からの信頼は、実際にその後のオファーへとつながる。まず、プロデューサーの熊野律時が「もう一回、一緒にやりたい」と名前を挙げ、熊野が演出するドラマ『ふたりのキャンバス』に出演。これが自身のテレビドラマ初の主演作となる。祖父役だった近藤正臣との再共演も叶った小芝は「今回の熊野監督は『あさが来た』でもお世話になったので、もしかして粋な計らいがあったのかもしれませんが(笑)。一度お仕事した方がもう一度…って声をかけてくださったのも嬉しかったし。本当に大きな財産になりましたね。」と語る。一方の熊野は、「クランクインする前から確信があった」「こちらの大事にしたいこともすごく理解してくれて、それを感じながら撮れた」と評し、その後、NHK広島開局90年ドラマ『夕凪の街 桜の国2018』でもさらに仕事を共にすることになる。次に、演出の新田真三も、二十歳の小芝が大人の女優としての魅力を開花させることになった『女子的生活』、さらに連ドラ初主演作『トクサツガガガ』では「小芝初主演のお手伝いします。」と表明し演出に参加している。そして、制作統括の佐野元彦の社会派ミステリードラマ『歪んだ波紋』では、誤報の被害に遭う女性を演じ、夫を亡くし悲しみに暮れる姿などシリアスな演技に挑戦。彼女の“振り幅”の魅力も示したという。 『あさが来た』出演当時まだ高校生であった小芝だが、役作りにこだわるあまり自身の体重を増やすことも。千代という1人の女性の14歳から34歳の20年間で子を産み母となる役の変化を演じるにあたり、少しでも貫禄を出そうという思いからだという。また、声のみの演技は初めてだったという小説『永遠の0』のオーディオブックにて久蔵の妻・松乃役に抜てきされた際は、「凄く好きな作品なので、松乃を演じられてうれしい」と語り、むせび泣くシーンもあり「表情は映っていないけど、いつも通り涙を流して演じました」とこん身の力を込めたという。ドラマ『歪んだ波紋』では心を閉ざしていて笑顔が少ない既婚者という役柄で、小芝にとっては新境地。自身も「今までこういうズシンと来る重い役を演じることがあまりなかったので、勉強になります。でも、年齢が近いこともあって、経験したことがない境遇であっても、想像しやすかったので入りやすくて、役に寄り添えていた感じがあります。」などと語る。共演した松山ケンイチは「印象的だったのは風花ちゃんの目の下のクマなんですよね。それが役の表現の一部になっていて、すごく象徴的で好きでした。」と小芝の役作りがドラマにもたらす効果について評している。また「方言が結構好き」と語る小芝だが、広島を舞台としたドラマ『ふたりのキャンバス』出演において、方言の扱いについては自身の経験上「地元の方はちょっとしたニュアンスが違うだけで、そっちが気になってストーリーどころじゃなくなる」から、「方言は絶対しっかりやろうと決めて」いたとも語る。 このように、どんな作品も徹底して事前の準備を欠かさない小芝だが、また一方で「事前に演技を固めて挑むというより、現場に入ってから、見たまま、受け取ったまま演技をすることの方が多いです」とも語る。それは『ふたりのキャンバス』での共演時に近藤正臣が「『現場に入ったら周りを見た方がいいよ。僕はね、美術さんが用意してくれたお茶を飲んだりするんだよ』と教えてくださいました。私たち演じる側が役作りをするように、美術さんはお部屋を造ってくれていたり、現場ではみんなのイメージが融合して化学変化が起きるということなんです。そう聞いてから現場を見回すと、私の役はきちょうめんな女の子かと思ったら、意外と大ざっぱなところがあったり、共演される方のセリフの表現に対してどう返すかを考えるようになり、演技がより楽しくなりました」と述べ、今でも彼のアドバイスを大切に守っているとのこと。そして、「私、すごい欲張りみたいで、常に手元に台本がないと落ち着かないんです。次の役が決まってないと不安になって『役が欲しい!』ってなるんです。お休みが多すぎると活力が無くなってしまう(笑)。逆に忙しいほうが『何かしなくちゃ』って思って活動的になるタイプなんですよ。そのためにも、一度ご一緒した方たちからもう一度『お仕事したい』と思っていただけるような女優でありたい」とも語る。 そんな小芝に芸能ライターの山下真夏氏が注目し始めたのは、志尊淳主演で2018年1月度のギャラクシー賞月間賞にも選ばれたNHKのドラマ『女子的生活』とのこと。「小芝さんは、たぬき顔のキュートな女の子というイメージがまだ強く、『美食探偵』でも、どちらかといえば可愛いらしいキャラ。でも、『女子的生活』で志尊さんと一夜を過ごすシーンがあるんですが、そこで彼女に“魔性の色気”を感じたんです。そもそも小芝さんがNHKのドラマによく出ているのは、演技力が認められているからでしょうし、彼女をただのコメディエンヌ、可愛い女の子で終わらせるのはもったいない。今後は性悪の女など幅広く演じていけば、間違いなく光るし、2番手、3番手から大きく花開くと思いますね」と評している。ライターの木村武雄は、ドラマ『歪んだ波紋』で誤報の被害に遭う森本敦子役を演じた小芝について「そのシーンは、松田演じる新聞記者の沢村が、森本に事件当時の話を聞く場面だった。森本は夫への思いや後悔の念に駆られ感極まるが、その時の表情がなんとも言えなかった。人は泣きそうになるとき口角が下がり震えることが多い。しかし小芝は、上唇の先端が小刻みに震えていた。」「言葉にしたくても様々な感情が入り乱れ口にすることができない役柄の心情を、その唇の動きだけで十分に伝わってきた。」「調べてみれば、ほかの作品でも感情が極まる場面で同様な動きが見えた。上唇で、その役の感情の動きを表現できるのは、彼女の個性とも言えるだろう。」と評している。
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