著作者人格権
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「著作者人格権」も参照 狭義の著作権(著作財産権)は財産権の一種であるが、著作者に認められる権利(著作者の権利)としては、そのほかに著作者の人格的利益を保護するものとして、人格権の一種である著作者人格権がある。両者の関係については考え方および立法例が分かれる。 まず、著作権法により著作者に対して保障する権利を純粋に財産権としての著作権として把握する考え方がある。この考え方を徹底しているのがアメリカ合衆国著作権法であり、著作者の人格的権利はコモン・ロー上の人格権の範疇に含まれる。もっとも、ベルヌ条約が加盟国に対して著作者人格権の保護を要求していることもあり、1990年の法改正により、視覚芸術著作物について限定された形で著作者人格権を保護する旨の規定を設けた(合衆国法典第17編第106A条)。 第2に、著作者に対して、財産的権利と人格的権利の双方を著作権法上保障する考え方がある。大陸法の著作権法は基本的にこのような考え方に立脚している。フランス著作権法がこの考え方に立脚しており、著作者の権利について、人格的な性質と財産的な性質を包含するものとして規定し(111の1条第2項)、いわゆる著作者人格権は処分できないものとする(121の1条第3項)のに対し、著作権は処分できるものとして(122の7条)区別している点にこのような考え方が現れている。 第3に、著作者に対して、財産的権利と人格的権利の双方を著作権法上保障するが、両者は一体となっており分離できないものとして把握する考え方がある。ドイツの1965年9月9日の著作権および著作隣接権に関する法律がこの考え方に立脚しており、著作者の権利の内容を構成するものとして著作者人格権に関する規定を置いているが(11条-14条)、財産権と人格権が一体化しているがゆえに、財産権をも含む著作者の権利について譲渡ができない旨の規定が置かれている(29条)点にこのような考え方が現れている。 日本法の法制は、著作権法上、著作者の権利として財産権たる著作権と人格権たる著作者人格権を保障しつつ、前者は譲渡可能なものとして理解し、後者は譲渡不可能なものとして理解している点でフランス法に近い。
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著作者人格権
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/10 07:42 UTC 版)
「著作権法 (フランス)」の記事における「著作者人格権」の解説
フランス著作権法では、以下の諸権利が著作者人格権として認められている(L121条)。著作物そのものが転売されたり、著作財産権を第三者に譲渡したとしても、著作者人格権は「一身専属性」の原則により、著作者本人を死後も永続的に守り続ける(L121条-1-2、L121条-1-3)。 公表権 公表権は判例で認められてきた保護内容を、1957年の法改正時に明文化している。公表権に関する代表的な判例として、1900年の破毀院(フランスの最高裁判所)による「ウィスラー判決」や、1931年の「カモワン判決」(Camoin v. Carco) が知られている。前者は、アメリカ合衆国出身でイギリスでおもに活躍した画家ジェームズ・マクニール・ウィスラー(ホイッスラーとも綴る)が、完成した作品を契約主に対して引き渡し拒否した事例である。破毀院は、ウィスラーに対して損害賠償は命じたものの、著作権法上の公表権をウィスラーに認め、作品の引き渡し要求は棄却した。また後者は、出来栄えに不満を持った画家シャルル・カモワン(フランス語版、英語版)が切り刻んでゴミ箱に捨てた作品を、ゴミ漁り人がアート収集家に売却して復元されてしまい、11年後の1925年にフランシス・カルコ(フランス語版、英語版)が所有していることが判明した事件である。復元された作品は差し押さえられ、5,000フランを損害賠償として原告カモワンに支払うよう命じられた。 なお、ベルヌ条約は第6条で著作者人格権を全般的に規定しているが、公表権については規定がないことから、各国の著作権法で保護状況にバラつきがある。フランスでは単に無断で公表されない権利だけでなく、公表する手段についても著作者の意思が尊重され、手厚い保護がなされている。たとえば、書籍の出版契約上でハードカバーの装丁が規定されていたにもかかわらず、出版者が著作者に無断でポケット文庫の装丁に変更して出版すると、フランスでは公表権侵害にあたる。 氏名表示権 氏名表示権とは、著作者が実名で公表している場合は、その作品に著作者名と肩書を表示しなければならない権利である。したがって、著作者名を削除する行為だけでなく、著作者以外の第三者の名前を表示する行為(盗作を含む)も、氏名表示権の侵害に当たる。しかし、先述のとおりフランスでは応用美術の作品にも著作権を認めていることから、たとえば自動車のデザインにまで逐次デザイナーの氏名を表示するのは現実的ではない。このようなケースでは氏名の非表示が免責される判例も存在する。 また、変名や無名(匿名)を選択することも氏名表示権の範疇である。いわゆるゴーストライターを起用して著作物を発表する場合は、ゴーストライター本人に著作者人格権が発生するため、一身専属性の原則に基づき、ゴーストライターの起用主に著作者人格権を譲渡することはできない。仮にこのような譲渡契約を結んだとしても、フランスでは契約自体が無効になる。ただし、ゴーストライターは本人の名前を表示しない意思であることから、ゴーストライターの起用主の名前を著作物に表示する行為そのものは、氏名表示権の侵害にはあたらない。 尊重権 フランスの尊重権は、著作物の内容を他者に無断で削除、付加、改変されないよう守り、著作者の個性を尊重する権利であり、他国の著作権法で一般的な「同一性保持権」よりも保護範囲の広い概念である。尊重権に関する判例はフランスで多数存在する。たとえば、サミュエル・ベケット著『ゴドーを待ちながら』(1952年出版)は、ベケットが男性主人公を想定していたにもかかわらず、演劇の演出家が女性に変更しようとしたことから、ベケットの死後に著作権相続人がこの演劇の差し止めを求めて提訴している。これに対し、パリ大審裁は1992年、尊重権侵害を認めている。また、画家ベルナール・ビュッフェは冷蔵庫に絵を描いたが、その作品の購入者がビュッフェの意に反して冷蔵庫を解体して絵だけを切り売りしようとした事件では、破毀院が1965年にビュッフェの意思を尊重する判決を下している。同一性保持(改変禁止)以外でも、自動車大手ルノーが彫刻家デュビュッフェに作品を発注したにもかかわらず、ルノーが完成を拒んだことから、彫刻家の作品を完成させる尊重権が侵害されたと、ベルサイユ控訴院は1981年に判示している。このように、フランスの尊重権は条文上だけでなく、実質的にも広く適用されている。 修正・撤回権 一方の修正・撤回権であるが、こちらについては著作者が権利行使すると出版者などに実損害が発生するため、権利行使の際には損害賠償が伴うことから、尊重権と比較して実際の権利行使はきわめて限定的である。 著作者人格権の制限・例外 なお、一部の著作物ジャンルでは、これら著作者人格権の例外が存在する。映画などの視聴覚著作物の場合、プロデューサーや主たるディレクター、あるいは法定上の共同著作者が最終版を確定した場合、無断で改変や転写は不可とされる(L121条-5)。したがって、製作実務者として参加していても、後述する「共同著作者」として認定されない者は、著作者人格権の修正・撤回権や尊重権を主張できない。また、視聴覚著作物の共同著作者が製作過程で途中離脱しても、完成版からその離脱者の寄与分を取り除いたり、公表を阻止することはできない(L121条-6)。 ソフトウェアに関しても、名誉棄損に該当しない限りにおいて、著作者は同一性保持権および修正・撤回権を行使できない(L121条-7、L122条-6-1)。これは、感情を表現した芸術的な著作物とは異なり、実用的なソフトウェアの場合は、中身を修正・改変しても、著作者であるプログラマーが精神的に傷つく可能性が低いためである。
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著作者人格権
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「著作権法 (ルーマニア)」の記事における「著作者人格権」の解説
作品を公衆に知らしめるか否か、それをいかに、いつ行うかを決める権利 作品の作者であることを認めるよう要求する権利 作品がいかなる名称で公衆に知らしめられるかを決める権利 作品の完全性を遵守するよう要求し、作者の名誉又は声望を損なうようないかなる改変その他の干渉も拒否する権利 作品を撤回する権利 これらの権利は、放棄することも譲渡することもできない。作者の死亡後は、上記1、2及び4の権利は、相続人が無期限で行使する。
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著作者人格権
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/05 04:28 UTC 版)
著作者人格権とは、著作物を創作した著作者に認められる人格的利益を保護するための権利である。著作権(著作財産権)とは異なり、一身専属的な権利であるため、他者に譲渡することはできない。公表権・氏名表示権・同一性保持権の3種の権利が存在する。 詳細は「著作者人格権」および「同一性保持権」を参照
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