著作者の推定効
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/05 02:22 UTC 版)
プログラムの著作物を例にとって考える。 X社が創作し、著作権を有するプログラムAがY社によって無断複製されたとして、X社がY社を相手取って著作権(複製権)侵害訴訟を提起したときに、請求が認められるためには、原告X社は「プログラムAの著作物の著作権を有すること」と「被告Y社がプログラムAを複製していること」を少なくとも立証しなければならない。そして「プログラムAの著作物の著作権が存在すること」の立証のためにはプログラムAをどのような内容でいつ創作したかということを明らかにする必要があるが、簡単に書き換えられるというプログラムの特性上、その証明は容易ではないし、世間に公表していないプログラムに関してはなおさら困難である。 このとき、もしもX社がAについて創作年月日の登録をしておけば、この証明の問題はかなり容易になる。 まず、プログラムの著作物は後述の通り、登録の際にその著作物の複製物を提出する必要があるため、これにより登録時のAの内容が明らかになる。そして登録をすることによって、「登録されている年月日にAが創作されたのだろう」ということが推定(反証がされない限り、そのように取り扱われる)されるので、X社はこの点について立証する必要がない。 このように、登録をすると推定効が働くため、事実関係の証明が容易になるというメリットがある。 ただし、著作権法は特許法とは異なり、権利の取得について先願主義を採用していないため、X社がY社より先にプログラムAを創作していることについて登録により推定されたとしても、プログラムAを内容とする著作権を独占することはできない。 また、著作権侵害といえるためには、侵害著作物と被侵害著作物とが、類似するだけではなく、侵害著作物が被侵害著作物の内容に依拠することが必要であるため(ワンレイニー・ナイト・イン・トーキョー事件判決)、X社はさらにY社がAに依拠して複製物を作成したことを更に立証しなければならない。仮にY社が開発したプログラムが、プログラムAと同一内容のものであったとしても、Y社がAに依拠して開発したのでなければ、Y社が別個に著作権を取得することになる。
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