磁気乗車券用改札機の実用化
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「自動改札機」の記事における「磁気乗車券用改札機の実用化」の解説
現代の主流である磁気化乗車券を使用した自動改札機は、1969年に近畿日本鉄道が学園前駅で試験導入した日本信号製 が実用化の端緒である。 日本で最初に本格導入されたのは、前述の通り1967年の京阪神急行電鉄北千里駅であった。当初、定期乗車券と普通乗車券とでは改札方式が異なり、定期乗車券はパンチカード方式、普通乗車券は磁気化情報読取(バーコード)方式を採用していたが、その後、定期乗車券も磁気化方式に統一され、1972年には、定期乗車券・普通乗車券共用の自動改札機に更新されている。 1971年に入ると、日本鉄道サイバネティクス協議会により、日本で初めて標準化された旅客駅コード(磁気コード)が制定され、同年12月16日に開業した札幌市交通局地下鉄南北線、1972年12月16日に開業の横浜市交通局地下鉄1号線、1979年3月9日開業の北総開発鉄道 、1981年7月26日開業の福岡市交通局地下鉄1号線では、開業当初から全駅に設置されていた。 関西圏では、前述の近畿日本鉄道、京阪神急行電鉄をはじめ、阪神電気鉄道、京阪電気鉄道、南海電気鉄道などの主要駅で1970年代初頭より本格導入が進められ、一般的な駅務機器となっていた。 大阪市交通局においても、1971年6月1日に四つ橋線玉出駅の南改札口で使用を開始し、1984年3月31日に御堂筋線南改札口への設置をもって、全線全駅への設置を完了させている。 一方、首都圏では、1971年2月20日に東京急行電鉄が東横線の3駅 に15台を設置。翌'72年には都立大学駅にも5台を設置することで実用化試験を開始した。その結果、1974年6月に7駅に39台を設置することで本格採用に踏み切った。その一方、自動改札機については「首都圏特有の交通体系から連絡運輸の比重が高く、国鉄・私鉄界での同時的大量普及が行なわれない限りシステムメリットが生じないため、これ以上の導入は考えていない」と評されていた。 その中、1977年4月7日に新玉川線が開業すると、三軒茶屋駅に当初より設置され、その後の1980年代に入ってからも、入場改札の自動化が中心であったとはいえ順次拡大されてゆき、東急は、当時の首都圏でもっとも積極的に導入を進めた鉄道事業者となっていた。 それと同時に、非磁気化券を投入することによる使用障害も頻発し、当時の東急では、自動改札機設置駅以外で発売する普通乗車券は磁気化されておらず、定期乗車券も券面発着駅のいずれか一方に自動改札機が設置されている場合に限り、ラミネート方式によるエンコード(磁気化) が行われていた。また出場用の改札機も設置されていたが、磁気化定期券専用となっており、磁気化されていても普通乗車券では出場できなかった。 同じころ、首都圏では、日立運輸東京モノレール、帝都高速度交通営団(現・東京地下鉄)、東武鉄道、京成電鉄、小田急電鉄、東京都交通局でも、試験的に1~4駅程度に設置されたが、全駅での本格採用に発展することはなかった。たとえば、帝都高速度交通営団においては、地下の限られた空間に旅客数に応じた必要台数を設置することが困難であった、当時の技術では複雑な経路に対応するための磁気情報の容量が不足していたなどがその理由であった。 当時の首都圏で、システムとして出改札の自動化・無人化を完成させていたのは横浜市営地下鉄のみで、それ以外の私鉄・地下鉄では前述の通り、自動改札機の導入は試験的なものに留まり、本格導入は関西圏の私鉄・地下鉄のほうが早かった。首都圏は、関西圏に比べて相互直通運転が多岐にわたることや、連絡運輸による乗車券、定期券の発売方法が複雑なため、一事業社局だけが導入してもシステムが社会的に機能することは難しく、期待するほどの合理化には寄与しないと考える事情もあった。関西圏の私鉄・地下鉄は路線が独立しており、利用客の大多数が自社線内で完結することから、多くの事業者が合理化の一環として早くから自動改札機を設置、1980年代後半にはすでに大半の駅で使用が可能であった。すでにこの時点において、神戸高速鉄道を挟む4社の連絡乗車券など、複雑な経路による特殊な切符の機械処理も実現していた。 中京圏では、名古屋鉄道が1969年6月1日に津島駅、翌1970年11月20日に新岐阜駅(現・名鉄岐阜駅)にそれぞれ光学読取式の定期乗車券専用機を設置したが、その後、切符は磁気式が主流となったことから1975年以降に撤去されている。1978年の名鉄瀬戸線(地下新線)開業時には、栄町駅、東大手駅に開業当初から磁気式改札機が設置されており、全駅に本格採用されたのは1987年以降であった。名古屋市交通局では、1976年(昭和51年)9月20日から定期乗車券の磁気化に着手、11月1日には普通乗車券も磁気化し、同年11月29日に、大曽根駅、星ヶ丘駅に設置することで、自動改札機の導入を開始した。1979年(昭和54年)3月30日には、名古屋港駅への設置をもって、全駅への設置を完了させている。 福岡都市圏においては、1981年開業の福岡市営地下鉄に続き、1987年(昭和62年)10月1日には、西日本鉄道・天神大牟田線の主要16駅にも設置されるに至った。しかし、その後の展開は早くはなく、1995年度(平成7年度)年度までで22駅への設置に留まっていた。 大都市圏以外では、富山地方鉄道が1971年1月1日から電鉄富山駅に磁気式の定期券専用機を設置していた。当時の地方鉄道としては先進的であると評価されたものの、実用面での経済性に乏しく、修理保守に費用面での問題があるとして、1981年4月に撤去された。また、後述の伊予鉄道も早くから松山市駅に設置しており、こちらは2014年2月15日まで稼働していた。 日本国有鉄道(国鉄)では、1970年4月に国立駅(鑽孔式で特定定期券保持者を対象)、武蔵小金井駅、柏駅 での実用試験を経て、1973年に武蔵野線 や1979年に片町線の一部の駅 と京都駅の地下東口改札で試験的に導入された。しかし、自動改札機の導入が人員整理につながることを危惧した労働組合側の主張により、本格的な導入は国鉄分割民営化以降となった。特に関西地区のJRにおける自動改札の導入は1997年以降と、私鉄・地下鉄に比べ20年も遅れることとなった。
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