概念法学による近代個人主義・自由主義の確立とは? わかりやすく解説

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概念法学による近代個人主義・自由主義の確立

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/05 02:16 UTC 版)

法解釈」の記事における「概念法学による近代個人主義・自由主義の確立」の解説

19世紀ドイツ法学が重視したのは論理解釈であったドイツでは、ローマ帝国後継者自認する神聖ローマ帝国によってローマ法大全全面的に継受されていたが、神聖ローマ帝国支配有名無実化した後もローマ法の優秀性は否定し難く16世紀頃からローマ法当時ドイツ社会状況合わせて再構成され(パンデクテン現代的慣用)、各地ゲルマン法系の固有法補充する普通法(ゲマイネス・レヒト(ドイツ語版))として利用されていた(ドイツ普通法学)(→#一般法と特別法)。11世紀後半ボローニャ大学ローマ法講じてヨーロッパ各国影響与えたイルネリウスを祖とする註釈学派流れ受けたのである。 もっとも、前述ローマ法大全中の学説彙纂は、その多く個別具体的な問題への学者回答であったから、ドイツにおいては時と場所超えた法の普遍的性格強調する自然法論影響を受けつつ、幾何学の手法を導入して原則定めてそこから演繹的体系的に思考進めというというパンデクテン法学生み出されのである。 特に19世紀においてはローマ法普遍的性格着目してその無個性中庸賛美されサヴィニーの「概念による計算」の句が示すように、演繹法による形式論論理解釈過度に尊重されて、ほとんど数学者数字抽象的記号操作するのと同じであるかのように、主観的な価値判断厳しく排除する建前を採っていた。とりわけ個別具体的なものの中からその共通項総則として取り出して抽象化・一般化するという手法は(民法総則等)、19世紀ドイツパンデクテン法学特有の産物として、具体的・個別的性格の強い英米法との対比極めて大きな特徴持っている。 もっとも、サヴィニーにおいては法的安定性確保という観点から早期成文法による統一法典制定主張したティボーに対して論理解釈重視しつつも歴史法学立場から慣習法重視することによって、具体妥当性との調和図ろうとするものであった。 このパンデクテン法学サヴィニー後継者達によって歴史法学要素捨象して純化され、ヴィントシャイトによって完成されドイツ民法典制定結実、その論理的抽象的思考方法大陸法をはじめ、世界法学一定の影響与える。例えば、行政法学の父と呼ばれるオットー・マイヤー行政行為理論ドイツ民法典法律行為理論対応したのであるし、自然法学徹底的に攻撃したイギリス分析法学や、後述する純粋法学も、このようなドイツ法学の影響受けている。 一方フランスでは自然法根拠ナポレオン諸法典が「書かれ理性」(仏:la raison écrite;ratio scripta)であるとして絶対視され、文理解釈形式的論理解釈偏重された(註釈学派)。モンテスキューベッカリーア等の啓蒙思想家達の影響背景にある。 このような伝統的法解釈論の下で、裁判官による事件処理法として中核となったのが判決三段論法である。判決三段論法とは、法的三段論法ともいい、(1)法規範を(2)当該事案における具体事実あてはめて(3)判決結論を出す論法のことを言う。つまり、まずはじめに結論ありき思考方法を採るのではなくそのような判断枠組みによって裁判官恣意的判断排除することで、判決客観性担保ようとしたものであり、現代においてもなお一定の意義認めることができる。 こうした独仏成文法万能主義法実証主義)のいずれもが、法的安定性確保しヨーロッパ初期資本主義における市民の自由経済活動保証するという要請応えるという機能果たしていた。特に、高度に抽象化されたパンデクテン方式基礎とするドイツ法においては批判修正を受けながらも論理解釈大い発達した論理法学)。このようなドイツ法学の傾向は、官僚主義要因となった批判されたが、また一面において諸法典に立脚しつつ、国民の自由・利益を確保しようと努力したことで、市民社会における基本的ルール確立するという大きな歴史的遺産を遺したのである。つまり、「悪法もまた法なり」という前述法格言は、モンテスキュー主張したような夜警国家三権分立思想の下においては司法抑制による自由主義思想あらわれに他ならなかったのである詳細は「古典的自由主義」を参照 しかし、極度に形式論傾斜した法律学は、潜在的に激し反発受けていたのである仏蘭西法律学と云ふものは此数十箇年全く此卑い註釈学問となつて居る。 — 富井政章 法律学というやつにはどうも僕は馴染めないのです。何しろ、人の気持それほど邪推することはできませんからな。 — ゲーテファウスト悪魔の聖書ともいうべき忌むべき書物であるローマ法大全 — ハインリヒ・ハイネ 法学に愛を感じないで、ただ機械的に強いられ法律家になるような人間は、もうそれだけ偉大な法律家になる資格欠いてます。 — ロベルト・シューマン さらに、ドイツ民法典生まれた19世紀末は、資本主義経済発展による社会の変容によって、ドイツ民法典がその成立において基盤とした個人主義的・自由主義的な経済観が退潮始めた時期であった個人主義極致であったドイツ民法典20世紀への先駆ではなく19世紀総決算評価される所以である。もっとも、社会主義的観点から、サヴィニーとは逆に立法者の人為的努力によって社会積極的に改善しようとするアントン・メンガー(ドイツ語版)や、個人の自由意思尊重社会における取引安全の調和説くデルンブルヒらの学説影響によって、サヴィニー、ヴィントシャイトの影響により権利変動根拠個人意思求め意思主義傾斜したドイツ民法第一議会草案一定の修正受けていることに留意すべきであるこのようにして急激な社会変動前にして、立法者独自の立場による社会変革への人為的努力否定的であった歴史法学は、ドイツ民法典制定同時にその限界迎えたのである

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