放下とは? わかりやすく解説

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ほう‐か〔ハウ‐〕【放下】

読み方:ほうか

[名](スル)

投げ捨てること。ほうげ。

の上の物を取っては、またすぐに—しなどしていた」〈鴎外魚玄機

一切捨て去ること。ほうげ。

生命をさえ—し終ろうとしたほどだったが」〈山本有三・波〉

田楽から転化した大道芸品玉(しなだま)・輪鼓(りゅうご)などの曲芸手品演じ小切子(こきりこ)を鳴らしながら小歌などをうたったもの。室町中期発生明治以後、名称は絶えたが、その一部寄席芸・民俗芸能として今日に伝わる。


ほう‐げ〔ハウ‐〕【放下】

読み方:ほうげ

[名](スル)

仏語禅宗で、一切執着捨て去ること。

一切を—し尽して」〈漱石行人

「ほうか12」に同じ。

「ヒトヲ—スル」〈日葡


放下

読み方:ホウカ(houka), ホウゲ(houge)

なげおろすこと


放下

読み方:ホウカ(houka)

中世から近世にかけて行われた民俗芸能一種


ほうげ 【放下】

投げ捨てる〉〈とらわれ捨てる〉の意。一切執着捨て去ること。禅語。→ 放下僧

放下

読み方:ホウカ(houka)

初演 慶安4.1(江戸城二の丸)


放下

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/03 01:21 UTC 版)

放下(ほうか)とは、

1. 日本における大道芸のひとつ。田楽法師の伝統を受け継ぐ雑芸[1]

放下(ほうげ)とは、

2. キリスト教神秘主義で用いられる概念。
3. 仏教、主に禅宗などで用いられる概念。

本項では、1.と2.と3.について説明する。

大道芸「放下(ほうか)」

放下は、室町時代から近世にかけてみられた大道芸のひとつである[2]

「放下」の語はもともと禅宗から出た言葉で、一切を放り投げて無我の境地に入ることを意味したが、「投げおろす」「捨てはなす」の原義から派生して(まり)やなどを放り投げたり、受けとめたりする芸能全般をあらわすようになったと考えられる[2][3]

放下は、奈良時代散楽の一部として中国大陸から伝来した曲芸軽業的諸芸が、中世に入ってもっぱら放下師・放下僧によって演じられるようになったものである[4]

中世

七十一番職人歌合』より「放下」
笹竹を背負い、烏帽子姿であるく放下師

室町時代中期、芸能の中心となったのは、屋外を舞台に、雑芸を生業とする放浪の大道芸人であったが、なかでも人気だったのが放下師であった[3]。放下師はまた、単に「放下」ともいわれた[1]

放下師(放下)がおこなった芸には、中国から渡来したのようなかたちの空中独楽の中央のくびれ部分に紐を巻き付けて回転させたり、空中高く飛ばしたりして、自在に使い分ける輪鼓(りゅうご)や田楽芸の「高足」から転じた連飛(れんぴ)、また、鞠・短刀などを空中に投げ上げて自在にお手玉する品玉(しなだま)、八ツ玉、手鞠、弄丸(ろうがん)などがあり、従来の散楽や田楽から学び習った曲芸や奇術を専業化し、人びとが行き交う大道やの立つ殷賑の地などでこれを演じて人気を博した[1][2][3][4]。また、「こきりこ」(筑子)と称される、長さ30センチメートル・太さ1センチメートルほどの竹の棒2本を打ち合わせたり、拍子をとったりして物語歌をうたい歩き、あるいはに立って歌い、特に子女からの人気を集めた[1][2][4]

放下師が人形も廻したことは伏見宮貞成親王日記看聞御記』に「ヒイナヲ舞ス」とあることからも確かめられている[1]

放下の演者の多くは、田楽を生業とする田楽法師がそうであったように体をしている者も多く、その場合は「放下僧」と呼ばれた[3][注釈 1]。また、烏帽子をかぶり、笹竹に恋歌の書かれた短冊を吊り下げ、それを背負って歩く放下師もおり、その姿は室町時代の歌合七十一番職人歌合』にも描かれている[2]

近世

『人倫訓蒙図彙』(元禄3年(1690年)頃刊行)の挿図より「放下」(右)「住吉踊り」(左)
放下師は路上で皿回しをしている。

放下は、近世にいたって俗人の手にうつったが、従来の曲芸だけではなく、鞠の曲、玉子の曲、おごけの曲、うなぎの曲、枕の曲(枕返し)、籠抜け、皿回しなども演じた[2]。また、放下芸と獅子舞を生業とする伊勢太神楽の集団が成立したのも近世初頭である[注釈 2]。いっぽうで小屋掛けがなされるようになり、寄席演芸のひとつとして、大がかりな曲芸や手品もおこなうようになった[2]。手品は、山芋うなぎにする、より小鳥を出す、絵をにするなどといったもので、元禄年間(1688年-1704年)に活躍した有名な手品師、塩の長次郎も放下師の出身であった[1]。また、『京都御役所向大概覚書』という史料によれば、寛文9年(1669年)、豊後屋団右衛門という人物が歌舞伎などの興行に対抗して「放下物真似」の名代が許されている。

江戸時代前期にあってはまた、当時流行の歌舞伎や人形浄瑠璃(文楽)との提携も進み、その幕間におおいに演じられた[2]江戸歌舞伎の座元(太夫元)となった都伝内も放下師の出身であったという[2]

元禄以降、しだいに劇場からはすがたを消し、大道芸に回帰していった放下は「辻放下」と呼称され、身分的には非人階級に属し、江戸浅草車善七の差配にしたがった[1][注釈 3]

近現代

明治維新以降、近代にはいると「放下」の語は文献資料からはみられなくなる[1]。現在、放下芸は太神楽のなかの一ジャンルとして寄席で演じられるほか、日本各地にのこる「風流踊り」と総称される民俗芸能のなかでも演じられる[2]

キリスト教における「放下(ほうげ)」

放下(ほうげ)は、キリスト教神秘主義、とくにドイツ神秘主義で用いられる概念である。ドイツ語では Gelassenheit と表記され、「キリスト(救世主)へのゆだね」とも訳される。我性を捨ててイエス・キリストにすべてを委ね死にきり、己を無となし、そのことによってキリストの受難と復活に与り、真によく生きることをいう。マイスター・エックハルトにおける中心概念であり、ヤーコプ・ベーメらに継承された[注釈 4]

仏教における「放下(ほうげ)」

の用語で、放り投げる、捨て去ること。ものごとに執着せず、迷いを捨て去ること。遠離(おんり)解脱すること[5]浄土門においても、時宗法語(『一遍上人語録』「門人伝説」)に同様に用いられている。禅浄双修の立場においては、このようなとらわれの心を捨てて、ただひたすらに念仏することを勧める[5][注釈 5]

仏教に限らず、一般においてもすべてを捨て去ったり、放棄することの意に用いる[5]

脚注

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注釈

  1. ^ 作者不詳の能楽『放下僧』では、かたきをねらう兄弟が放下師(放下)と放下僧に扮装し、曲舞鞨鼓小唄などの芸づくしをおこなう場面がある。山路(1988)p.45
  2. ^ 伊勢太神楽は、織田信長に敗れた武士たちのうち伊勢国桑名に落ちのびた一派といわれ、全国を旅する芸能集団となって獅子舞・曲芸を演じた。佐藤(2004)p.116
  3. ^ 車善七は、幕藩体制下において浅草の非人頭が代々世襲した名前である。
  4. ^ ヤーコブ・ベーメの最初の著作が『アウローラ』であり、ここでは「キリストへのゆだね」の思想が叙述されている。
  5. ^ 禅宗の用語であれば、一般には「放下著」(ほうげじゃく)という用法で知られているもの。「放下著」とは、「下に置け」というほどの意味で 、著は命令の意を表す助詞、 捨て去ってしまえ、という意味はないとされている。入矢義高監修、古賀英彦編著『禅語辞典』思文閣出版、1999 年第 5 版「放下」の項(423 頁)では、「放下」(ほうげ)とは、「単に『置く』、『下(お)ろす』ということ。放り投げることではない」とある。つまり捨て去る意味ではないということになる。田島照久「エックハルトにおける離脱の教説」『Heidegger-Forum』 第十五号、2021年5月、p.136参照。

出典

参考文献


放下

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 16:40 UTC 版)

マルティン・ハイデッガー」の記事における「放下」の解説

放下とは、技術への対し方として、ハイデッガー到達した概念である。我々は、技術の進化を、我々の本質存在)を塞き止めないことにおいて、放置することができる。つまり、避けがたい使用放置することができるのである同時に、我々の本質歪めるその限り、否を向けることができる。この二重性が、技術への対し方である。講演「放下」に於いては、放下とともに技術時代での存在(Seyn)の覆蔵という仕方での到来密旨とし、密旨向けて自己開け放っておく態度挙げて、「物への関わりに於ける放下」と「密旨向かって開け」を「その上に於いて私共技術的世界内部にあって而もその世界によって害されることなく立ち、そして存続しうる如き新し根底地盤約束」する「新し土着性への展望」とした。

※この「放下」の解説は、「マルティン・ハイデッガー」の解説の一部です。
「放下」を含む「マルティン・ハイデッガー」の記事については、「マルティン・ハイデッガー」の概要を参照ください。

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