愛撫_(小説)とは? わかりやすく解説

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愛撫 (小説)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/25 05:49 UTC 版)

愛撫』(あいぶ)は、梶井基次郎短編小説掌編小説)。飼いと遊び戯れる中で浮んでくる空想を題材にした随筆的な作品[1]。猫の耳を切符切りのようにパチンとする空想や、爪を全部切ったらどうなるかなど、いたずら心で書いた小品ながらも、そこに流れる温かみや気品を高評価された軽妙な短編である[2][3][1][4][5]。『ある崖上の感情』『櫻の樹の下には』の擱筆以来、約2年の沈黙の後に発表され、新たな活路が見られた作品でもある[6][3][7]


注釈

  1. ^ Christine Kodama(クリスチーヌ・小玉)は、『視線の循環――梶井基次郎の世界』(邦題)という梶井基次郎論と共にいくつかの梶井作品を仏訳し1987年パリで出版した[9][11]
  2. ^ 基次郎は、その旨を近藤直人に直接伝えている。
    「愛撫」のなかに出て来る「謹厳なる客」とふのは 云つてゐましたやうにあなたがモデルです、しかしそれはあなたを書いたのではなく あなたをお借りしたので 謹厳といふのも さうでなくては滑稽味が出ないからで 決してあなたのことを謹厳なる客と云つた訳ではありません、失礼に当りますので一寸お断りしておきます — 梶井基次郎「近藤直人宛ての書簡」(昭和5年9月29日付)[13]
  3. ^ 猫の話は、その後の『交尾』や遺作の『のんきな患者』にも描かれている[4]
  4. ^ 小山田嘉一は東京市麹町区富士見町4丁目(現・千代田区富士見)に実家があり、高師付属中学出身。第三高等学校では文丙(フランス語必修)で、飯島正浅野晃を通じて基次郎と知り合った。作曲趣味の小山田は音楽好きの基次郎と意気投合していた[25]。小山田は帝国大学では北川冬彦と同じ法学部フランス法に進み、卒業後は住友銀行東京支店に就職した[26][27]
  5. ^ 岩藤雪夫の「屍の海」(中央公論 1930年6月号掲載)と小林多喜二の「工場細胞」(改造 1930年5・6月号掲載)を指している[33]

出典

  1. ^ a b c 「途絶」(アルバム梶井 1985, pp. 84–96)
  2. ^ a b 小林秀雄「文藝時評 梶井基次郎嘉村礒多」(中央公論 1932年2月号)。別巻 2000, pp. 278–281に部分所収
  3. ^ a b c d e f 川端康成「梶井基次郎氏の『愛撫』」(作品 1930年7月号)。別巻 2000, pp. 258–259に所収
  4. ^ a b c d e f g h i j k l 「第十二章 小さき町にて――王子町四十四番地」(大谷 2002, pp. 259–282)
  5. ^ a b c d e f g h i j 「第四部 第五章 移転」(柏倉 2010, pp. 392–403)
  6. ^ a b c 鈴木貞美「梶井基次郎年譜」(別巻 2000, pp. 454–503)
  7. ^ 淀野隆三「『檸檬』誌上出版記念」(作品 1931年7月号)。別巻 2000, pp. 266–268に所収
  8. ^ 藤本寿彦「書誌」(別巻 2000, pp. 516–552)
  9. ^ a b ウィリアム・J・タイラー編「外国語翻訳及び研究」(別巻 2000, pp. 640–642)
  10. ^ Dodd 2014
  11. ^ 「第三部 第二章 『冬の日』の評価」(柏倉 2010, pp. 245–254)
  12. ^ a b c d e f 「近藤直人宛て」(昭和5年6月24日付)。新3巻 2000, pp. 366–367に所収
  13. ^ a b 「近藤直人宛て」(昭和5年9月29日付)。新3巻 2000, pp. 381–382に所収
  14. ^ a b c d e f g h 「北川冬彦宛て」(昭和4年9月11日付)。新3巻 2000, pp. 304–309に所収
  15. ^ 「第四部 第二章 帰阪」(柏倉 2010, pp. 367–376)
  16. ^ 淀野隆三宛て」(昭和5年2月6日付)。新3巻 2000, pp. 354–356に所収
  17. ^ a b 北川冬彦宛て」(昭和5年5月16日付)。新3巻 2000, pp. 329–331に所収
  18. ^ 「淀野隆三宛て」(昭和5年5月30日付)。新3巻 2000, pp. 356–358に所収
  19. ^ 中谷孝雄宛て」(昭和5年5月31日付)。新3巻 2000, pp. 358–360に所収
  20. ^ a b 遺稿「猫」(1929年2月)。ちくま全集 1986, pp. 499–501に所収
  21. ^ a b c d 「梶井勇宛て」(昭和4年2月15日付)。新3巻 2000, pp. 288–290に所収
  22. ^ 中谷孝雄・北川冬彦・飯島正浅野晃「座談会 梶井基次郎――若き日の燃焼」(浪曼 1974年2月号)。別巻 2000, pp. 217–228に所収
  23. ^ 「第八章 冬至の落日――飯倉片町にて」(大谷 2002, pp. 162–195)
  24. ^ 「第二部 第八章 大正末」(柏倉 2010, pp. 215–236)
  25. ^ 「第五章 青春の光と影――三高前期」(大谷 2002, pp. 74–104)
  26. ^ 「第七章 天に青空、地は泥濘――本郷と目黒にて」(大谷 2002, pp. 137–161)
  27. ^ 「第二部 第一章 大学生活」(柏倉 2010, pp. 111–122)
  28. ^ 「第九章 白日の闇――湯ヶ島その一」(大谷 2002, pp. 196–215)
  29. ^ 「第三部 第四章 湯ヶ島」(柏倉 2010, pp. 265–279)
  30. ^ 「第三部 第七章 湯ヶ島最後の日々」(柏倉 2010, pp. 300–312)
  31. ^ 「第十章 冬蠅の恋――湯ヶ島その二」(大谷 2002, pp. 216–242)
  32. ^ a b 「中谷孝雄宛て」(昭和5年1月25日付)。新3巻 2000, pp. 325–327に所収
  33. ^ a b c d e 「中谷孝雄宛て」(昭和5年6月14日付)。新3巻 2000, pp. 360–365に所収
  34. ^ 「日記 草稿――第十二帖」(昭和3年・昭和4年)。旧2巻 1966, pp. 424–444に所収
  35. ^ ボードレール「猫」(初版47番)。柏倉 2010, p. 394。粟津則雄の訳詩はボードレール 1993, pp. 28–30に所収
  36. ^ 小川洋子「私の陶酔短篇箱」(小川 2014, pp. 356–361)
  37. ^ 菓子箱 2008



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