性別を理由とする差別の禁止
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/29 14:41 UTC 版)
「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」の記事における「性別を理由とする差別の禁止」の解説
事業主は、労働者の募集・採用、配置・昇進・降格・教育訓練、福利厚生、職種・雇用形態の変更、退職の勧奨・定年・解雇・労働契約の更新について、性別を理由として、差別的取扱いをしてはならない(第5条、第6条)。指針によれば、たとえば、募集・採用において以下のような措置は法違反となる。 男性または女性についての募集又は採用する人数の限度を設けること(「男性10名、女性5名」など) 男性または女性を表す語を含む職種の名称を用いること(他方の性を排除しないことが明らかである場合を除く)「婦人警察官」→「女性警察官」(募集の際は単に警察官) 「営業マン」→「営業職」 「保母」→「保育士」 「看護婦」→「看護師」 「スチュワーデス」→「客室乗務員」 「男性歓迎」「女性歓迎」「男性向きの職種」「女性向きの職種」等の表示を行うこと 採用選考において、能力及び資質の有無等を判断する場合に、その方法や基準について男女で異なる取扱いをすること。募集又は採用に当たって実施する筆記試験や面接試験の合格基準を男女で異なるものとすること。 男女で異なる採用試験を実施すること。 男女のいずれかについてのみ、採用試験を実施すること。 採用面接に際して、結婚の予定の有無、子供が生まれた場合の継続就労の希望の有無等一定の事項について女性に対してのみ質問すること。「結婚の予定の有無」、「子供が生まれた場合の継続就労の希望の有無」については、男女双方に質問した場合には、法には違反しないものであるが、もとより、応募者の適正・能力を基準とした公正な採用選考を実施するという観点からは、募集・採用に当たってこのような質問をすること自体望ましくない(平成18年10月11日雇児発1011第2号)。 採用活動において、男性(女性)に送付する会社の概要等に関する資料の内容を、女性(男性)に送付する資料の内容より詳細なものとすること 営業、基幹的業務、海外で勤務する職務等の配置に当たって、その対象を男性(女性)労働者のみとすること 昇進試験を実施する場合に、合格基準を男女で異なるものとすること 一定の役職を廃止するに際して、当該役職に就いていた男性(女性)労働者については同格の役職に配置転換するが、女性(男性)労働者については降格させること 教育訓練、工場実習、海外での留学による研修等の対象者を男性(女性)労働者に限ること 教育訓練の期間や課程を男女で異なるものとすること 一定の役職に昇進するための試験の合格基準として、男性の適性を考えた基準と女性の適性を考えた基準の双方を用意すること 結婚していることを理由に職種の変更や定年の定めについて男女で異なる取扱いをしていること特別支給の老齢厚生年金の定額部分の支給開始年齢に差があることを理由として男性の定年年齢より低い年齢を女性の定年年齢として定めることは、法違反とする。定年を特別支給の老齢厚生年金の定額部分の支給開始年齢と定める場合にも、事実上男性と女性の定年年齢を異ならせるものであるので、法違反とする。継続雇用制度の適用対象を特別支給の老齢厚生年金の定額部分の支給開始年齢に差があることを理由として男性のみとすることは、募集・採用に当たって、女性を排除することとなることから、法違反とする。継続雇用制度の適用対象を「特別支給の老齢厚生年金の定額部分を受給できない者」とすることは、募集・採用に当たり、事実上女性に対して男性と異なる条件を付すこととなることから、法違反とする(平成13年4月2日雇児発247号)。 事業主は、以下の措置については、当該業務の遂行上特に必要である場合、事業の運営の状況に照らして当該措置の実施が雇用管理上特に必要である場合その他の合理的な理由がある場合でなければ、これを講じてはならない(間接差別の禁止、第7条、施行規則第2条)。なお、本法で法違反として指導の対象となる間接差別はこの3例に限られ、争いのあるすべての事例が指導の対象となるわけではないが、これら以外の措置が一般法理としての間接差別法理の対象にならないとしたものではなく、司法判断において、民法等の適用に当たり間接差別法理に照らして違法と判断されることはあり得るものである(平成18年10月11日雇児発1011第2号)。 募集又は採用に当たって、労働者の身長、体重又は体力に関する事由を要件とすること 労働者の募集・採用・昇進・職種の変更に当たって、転居を伴う転勤に応じることができることを要件とすること平成26年改正により、これまで「総合職」のみであった本要件が、すべての職種に拡大されることとなった。 昇進に当たって、転勤(異なる事業場への配置転換)の経験があることを要件とすること 第5条、第6条、第7条にあたる差別的取り扱いについては不利に取扱う場合だけでなく有利に取扱う場合も含むが、事業主が、職場における男女の均等な機会及び待遇の確保の支障となっている事情を改善することを目的として女性労働者に関して行う措置(ポジティブ・アクション)を講ずることは認められる(第8条)。 男性労働者については、一般にこのような状況にはないことから、男性労働者に係る特例は設けられていない。 「支障となっている事情」とは、固定的な男女の役割分担意識に根ざすこれまでの企業における制度や慣行が原因となって、雇用の場において男女労働者の間に事実上の格差が生じていることをいうものであること。この格差は最終的には男女労働者数の差となって表れるものであることから、事情の存否については、女性労働者が男性労働者と比較して相当程度少ない状況にあるか否かにより判断する。第8条により特例とされる女性労働者に係る措置は、過去の女性労働者に対する取扱い等により女性労働者に現実に男性労働者との格差が生じている状況を改善するために暫定的、一時的に講ずることが許容されるものであり、指針の「相当程度少ない」状態にある限りにおいて、認められるものである。「相当程度少ない」とは、日本における全労働者に占める女性労働者の割合を考慮して、4割を下回っていることをいうものである(平成18年10月11日雇児発1011第2号)。 事業主は、本法に定める措置等並びに職場における男女の均等な機会及び待遇の確保が図られるようにするために講ずべきその他の措置の適切かつ有効な実施を図るための業務を担当する者(男女雇用機会均等推進者)を選任するように努めなければならない(第13条の2)。事業主は、この業務を遂行するために必要な知識及び経験を有していると認められる者のうちから当該業務を自己の判断に基づき責任をもって行える地位にある者を、1企業につき1人、自主的に男女雇用機会均等推進者として選任するものとする(施行規則第2条の5、令和2年2月10日雇均発0210第2号)。従来、ポジティブ・アクションの推進を図るため、人事労務管理の方針の決定に携わる者を「機会均等推進責任者」として選任するよう行政指導が行われてきたが(平成12年5月31日女発175号)、令和2年6月の改正法施行により法本則に位置づけられた。男女雇用機会均等推進責任者の職務は以下の通りである(令和2年2月10日雇均発0210第2号)。 第8条、第11条第1項、第11条の2第2項、第11条の3第1項、第11条の4第2項、第12条及び第13条第1項に定める措置等の適切かつ有効な実施を図るための業務ポジティブ・アクションの推進方策の検討、事業主に対する助言、具体的な取組の着実な実施の確保(第8条)のほか、職場におけるセクシュアルハラスメント、妊娠、出産等に関するハラスメントの防止のための措置や配慮(第11条第1項、第11条の2第2項、第11条の3第1項、第11条の4第2項)について、関係法令の遵守のために必要な措置等の検討・実施、事業主に対する助言等の業務をいうものであること。 職場における男女の均等な機会及び待遇の確保が図られるようにするために講ずべきその他の措置の適切かつ有効な実施を図るための業務性別を理由とする差別の禁止等並びに男女同一賃金の原則及び労働基準法第64条の2から第67条までの母性保護の規定の遵守のために必要な措置等の検討・実施や事業主に対する助言等のほか、女性労働者が能力発揮しやすい職場環境の整備に関する関心と理解の喚起、その業務に関する都道府県労働局との連絡等の業務をいうものであること。 女性の職業生活における活躍の推進に関する法律の規定による一般事業主行動計画に基づく取組や情報公表の推進のための措置の検討・実施や事業主に対する助言等の業務(附則第2条。女性活躍推進法の有効期限である令和8年3月31日までの間)
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