土
『コタンカラカムイの人創り』(アイヌの昔話) 国造りの神コタンカラカムイが、天と地を創造した。夜の神様が、土をこね、そこに柳の枝を通し、はこべを植え込んで、人間を造った。土は人間の肌になり、柳は背骨になり、はこべは髪になった。こうして出来上がった人体には、「眠たい」とか「食べたい」とか、12のいろいろな欲の玉が入れられた。これらは皆、男だった。次いで昼の神様が女を造った。夜の神様が造った男の肌は浅黒い。昼の神様が造った女の肌は白い。
『人の始まり』(昔話) 火の神さんが、「人間を作るための泥をくれ」と土の神さんに頼むが、断られたので、泥を50年間借りることにした(*→〔皮膚〕1)。それで人間は、50年たつと皆もとの泥になり、魂は火の神さんの所へ戻って行かねばならない(鹿児島県吉野町)。
『風俗通義』 天地の初めの時、女カが黄土をまるめて人間を造ったが、1体ずつ造るのは重労働であり、時間もかかった。そこで女カは、縄を泥中に浸してから引き上げ、したたる泥をそのまま人間にした。最初に黄土から造られた人間は、富貴な人となった。後に泥から造られた人間は、貧賤凡庸な人となった。
*アダムやパンドラも、土から造られた→〔息〕2aの『創世記』第2章・〔人間〕1aの『仕事と日』(ヘシオドス)。
*土で造った像に生命が宿る→〔像〕10の『大魔神』(安田公義)。
『ギリシア神話』(アポロドロス)第2巻第5章 ポセイドンの子とも大地の子ともいわれるアンタイオスは、身体が地面に触れると強さを増す。ヘラクレスは、アンタイオスを両腕でかかえて高く差し上げ、粉砕して殺した〔*→〔土地〕6の『ギリシア神話』第1巻第6章と類想〕。
『封神演義』第55回 陽ゼンが、西岐城に侵入した土行孫を捕らえ、彼の身体が地面に触れないように脇に抱える。しかし脚の爪先が地についたために、土行孫は地行術を用いて瞬時に地面にもぐり、逃げ去る。
『ケルトの神話』(井村君江)「常若の国へ行ったオシーン」 騎士オシーンは、海の彼方の常若(とこわか)の国ティル・ナ・ノグで3年を過ごした後に、白馬で海を駆けて故郷へ帰って来る。故郷ではその間に、3百年が経過していた。オシーンは白馬から落ちて、両足を地面につけてしまう(*→〔馬〕6b)。白馬は駆け去り、それまで若さを保っていたオシーンは、たちまち白髪でしわだらけの老人と化した。
*→〔女護が島〕3aの『ケルトの神話』(井村君江)「ダーナ神族と妖精と常若の国」。
『朝顔の露の宮』(御伽草子) 遂げられぬ恋を嘆いて死んだ朝顔の上と露の宮は、同じ塚に埋められる。2人の冥途の契りは深く、塚の内より若君が誕生し、後に蝶に変ずる。
『子育て幽霊』(昔話) 女が子を身ごもったまま死に、寺に埋葬される。女の霊が飴屋に飴を買いに来るのを店の人が怪しみ、墓を掘ると赤子がいて飴をしゃぶっている。住職が赤子を育て、その子は日審という名僧になり、龍泉寺の開山となった(福井県武生市白崎町)。
『椿説弓張月』残篇巻之4第66回 真鶴は寧王女を助けるために死に、塚に葬られる。落雷で塚が崩れ、土中から男女の双子が生まれる。
『墓場の鬼太郎』(水木しげる) 鬼太郎は、幽霊族の母親の死骸を埋めた墓から誕生した→〔夜〕2a。
『ラーマーヤナ』第1巻「少年の巻」 ジャナカ王が大地を耕していて、1人の女児を鋤で掘り出す。ジャナカ王はこの子をシータ(=畝の溝)と名づけ、自分の娘として育てる。成長した彼女は、王子ラーマの妻となる。
『黄金伝説』119「洗者聖ヨハネ刎首」 ヘロディアスの娘(=サロメ)は、大地が裂けてその中に生きたまま呑みこまれた〔*足もとの氷が割れて落ち、溺れ死んだともいう〕。
『今昔物語集』巻1-10 提婆達多は、仏弟子を奪う・仏身を傷つける・比丘尼を殺す、という3つの逆罪を犯した。そのため大地が破裂して、提婆達多は地獄に堕ちた。
『使徒行伝』第1章 イスカリオテのユダは(*→〔裏切り〕1の『マタイによる福音書』第26~27章)、不正を働いて得た報酬で土地を買った。彼は、その地面にまっさかさまに落ちて、身体が真ん中から裂け、はらわたが皆出てしまった。その土地は「アケルダマ」、つまり「血の土地」と呼ばれるようになった。
『ドン・ジュアン』(モリエール) ドン・ジュアンは大勢の娘を誘惑し、もてあそんでは棄てる日々を送っていた。ある日、かつて彼が殺した騎士の石像がやって来て(*→〔像〕8a)、「罪を悔い改めて神の慈悲にすがれ。天の恵みを拒絶すれば、雷が頭上に落ちるであろう」と宣告する。閃光とともに雷がドン・ジュアンの上に落ち、大地が裂けて彼を呑み込む。
『曽我物語』巻7「千草の花見し事」 しやうめつ波羅門が剣を抜き母を殺そうとした時、大地が裂け割れて彼は奈落へ落ちる。母が息子の髻をつかむと、頭は抜けて母の手に残り、身は無間地獄に沈んだ→〔九百九十九〕1。
『日本霊異記』中-3 吉志火麻呂が母を山中に連れ出して殺そうとした時、大地が裂けて吉志火麻呂は中へ陥った。
★6.地の底へ沈む。
『ギリシア神話』(アポロドロス)摘要第5章 ギリシア軍がトロイアに攻め入り、市内に火を放って、戦利品を分配した。カッサンドラ、アンドロマケ、ヘカベなどの美女も、ギリシアの武将が分け合った。とりわけ美貌だったラオディケは、すべての者の目前で大地が開き、その中に隠された。
『ラーマーヤナ』第7巻「補遺の巻」 シータ妃が「我が身が貞潔ならば、大地女神よ、私を迎え入れよ」と祈ると大地が割れ、玉座に座した女神ダラニーがシータを抱き寄せ、地底深くへ沈んで行った。
『法華経』「見宝塔品」第11 仏(釈迦如来)が霊鷲山上で『法華経』の教えを説いていた時、地中から、高さ500由旬・縦広(たてよこ)250由旬の、七宝の塔がせり上がって来て、空中にとどまった。塔内には、東方無量千万億阿僧祇世界・宝浄国の多宝如来が座していた。仏は空中に昇って、多宝如来の隣に坐した。
『法華経』「従地湧出品」第15 仏(釈迦如来)が、「私の滅後には、無数の菩薩たちが『法華経』の教えを説くであろう」と言った時、娑婆世界の三千大千の国土が、ことごとく揺れ裂けた。大地の割れ目から、無量千万億の菩薩が湧出し、空高く昇って、宝塔の中に坐す多宝如来と釈迦牟尼仏を礼拝した→〔時間〕1。
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