反捕鯨団体の議論とその対策
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「太地町」の記事における「反捕鯨団体の議論とその対策」の解説
詳細は「ザ・コーヴ」および「シー・シェパード」を参照 2009年8月22日、太地町でのイルカ追い込み漁を批判的に描いたドキュメンタリー映画『ザ・コーヴ』が公開された。太地町側は科学的根拠に基づいておらず、町の歴史や誇りを傷つける不当な行為であると映画を批判した。また、反捕鯨団体「シーシェパード」が活動家を常駐させており、漁業の妨害行為を行っている。和歌山県の仁坂吉伸知事はシーシェパードの挑発に乗らず、冷静に対応する漁民の姿勢を称賛した。シーシェパードは、器物損壊・暴行事件などの違法行為も起こしており、太地町側は反捕鯨団体の活動に備えるため臨時交番を開設し、違法行為を取り締まる姿勢を見せている。また和歌山県警と第5管区海上保安本部は反捕鯨団体の違法行為に対応するため合同で訓練を実施している。 駐日米大使によるイルカ追い込み漁反対声明 @media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}キャロライン・ケネディ駐日米大使が2014年1月18日にイルカ追い込み漁について「アメリカ政府はイルカの追い込み漁に反対します。イルカが殺される追い込み漁の非人道性について深く懸念しています。」とツイッターに書き込みを行い、日本では大きな反発を呼んだ[独自研究?]。 日本語のインターネットでは、「外国人が日本の文化に口出しをするな」、「牛や豚、魚を殺すことは冷酷ではないんですか?」、「私はクジラを食べませんが、他国の文化は尊重すべきです」、「日本の文化への敬意を欠いている」などのケネディへの怒りの反応が多数あった。 在日米大使館のシェイ報道官は、「ケネディ大使は米国内から追い込み漁に反対する何百というツイート(書き込み)を受け取り、自分のツイッターに書き込むことを決めた」と事情を説明した。米政府は2009年には、追い込み漁が「イルカの生息数不足を招く」こと(実際は太地町の漁獲ではそういう科学的な事実は無いが)などを理由にして、漁を「支持しない」立場を取るようになっており、ハーフ米国務省副報道官は1月21日、(ケネディ大使のツイートは個人的意見かという推測があったため)「米政府の長年の見解を表現したものだ」とし、「生物資源の持続可能性と道義性の両面で懸念している」と表明した[独自研究?]。 テンプル大日本校のクリーブランド准教授は、ケネディ大使はイルカ漁を取り上げることで、日本に対する他国からの懸念についてもっと日本が配慮する必要があることを日本に伝えたかったのではないかとの見解を示した。 大使の声明への反論 ケネディ大使のツイート(書き込み)には日本からすぐに、また、官民から多くの反論(反応)があった。菅義偉官房長官は速やかに談話を公表し、「イルカを含む鯨類は重要な資源であり、科学的根拠に基づき、持続的に利用すべきと考えている。また、イルカ漁業は我が国の伝統的な漁業のひとつで、法令に基づき適切に実施されていると考えている。また、イルカは国際捕鯨委員会(IWC)の管理対象外であり、各国が自国の責任で管理を実施することにしている」と米政府に理解を求める見解を出した。 安倍晋三首相はCNNのインタビューに応じ、「古来続いている漁で、彼らの文化、慣習として、生活のためだということを理解してもらいたい」、また、「それぞれの国、地域には、祖先から伝わるさまざまな生き方、慣習、文化がある。当然そうしたものは尊重されるべきだと思うが、同時にさまざまな批判があることも承知している」、そして、「漁の仕方も相当工夫されていると聞いている。漁も漁獲方法も厳格に管理されている」などと述べた。 イルカ追い込み漁が唯一行われている当地、太地町の三軒一高町長は、地元の漁師たちは漁業権を行使しているだけだと述べたうえで、絶滅の危機にある動物を捕獲しているわけではないとし、「われわれは住民を批判から守る必要がある」と述べ、更に、シー・シェパードは資金集めや宣伝のために追い込み漁を利用していると非難の声をあげた。 映像ジャーナリストで和歌山大学特任のサイモン・ワーン助教(オーストラリア出身)は「本当に生命を守るとは、(『ザ・コーヴ』のような)センセーショナルな映像を作って流すことでない。生き物に感謝して生かされていることに感謝すること。太地にはそういう文化が伝わっている」、また、「捕鯨は太地で連綿と受け継がれてきた技術。油を取って捨てるようなことはせず、必要数だけを捕り、全ての部位を使い無駄にしない。太地の捕鯨こそ、環境に配慮した持続可能な漁」と話している。 尚、当のケネディ大使はこういった賛否両論について、論争が行われるのは健全なことであるとコメントしている。 日本政府の閣議決定 2014年2月25日、日本政府は閣議で、アメリカのケネディ駐日大使が反対している日本のイルカ漁に関し、「わが国の伝統的な漁業の一つであり、法令に基づき適切に実施されている」との答弁書を決定した。内容は「政府はイルカを含む鯨類は重要な水産資源で、科学的根拠に基づき持続的に利用すべきだ」と記したうえで、「引き続きイルカ漁業に対する国際的理解を得られるように努力していく」とした。 住民の水銀濃度 「捕鯨問題#汚染と安全性」、「イルカ追い込み漁#人体の健康への懸念」、「鯨肉#鯨肉の汚染問題」、および「水銀中毒#人体への毒性」も参照 食物連鎖によってメチル水銀がクジラ、イルカなどの海洋哺乳動物で濃縮されることが知られている。2010年、太地町からの要請を受けて、環境省の国立水俣病総合研究センターは、毛髪水銀濃度測定によるメチル水銀摂取状況および健康の影響に関する調査を実施した。国内14地域と比べ、毛髪水銀濃度は明らかに高く、世界保健機関 (WHO) の安全基準値を上回る者も43人いた。クジラ類の摂取との関連性が示唆されたが、健康への影響そのものは認められなかった。その後、2012年にも調査を行い、所長の安倍重一が健康に問題ない旨の宣言を行った。センターは引き続き、胎児への影響を含めて調査を続ける方針である。
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