全国協議会の「新方針」(1974年)
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「日本のうたごえ全国協議会」の記事における「全国協議会の「新方針」(1974年)」の解説
1974年2月25日、日本のうたごえ全国協議会第7回総会において、同協議会の「新方針」が採択された。 採択された新方針の決議の要点は以下の通り。 現状の問題点うたごえ運動は1960年以後、「一千万人みんなうたう会運動」と称する普及・組織活動を打ち出した。 この方針のもとで、創作・演奏・郷土の歌と踊り・器楽などの教育活動に取り組み、蓄積された経験・理論・メソッドが全国的に普及した。その結果として、センター合唱団(中心合唱団)やうたごえ活動家の技術水準も向上し、1970年から72年にかけて、歌劇「沖縄」が制作・上演されるという成果を生み出すにいたった。その技術水準の高まりを通じて、各合唱団が、定期演奏会や日本のうたごえ祭典のコンクール形式による発表会に向けて、演奏技量を競い合う傾向が強まった。 一方、センター合唱団や活動家が自分自身の練習や演奏会、組織運営上の問題に大きな労力を割き、それを自己目的化したことにより、その「音楽活動」に対して「普及活動」の比重が、相対的に少なくなった。あるいは、普及を重視する方針を出しながらも、それが十分に進まない事態を生み出した。 今後の方針 上述の問題点を踏まえて、運動の基本的な性格をより鮮明にし、平和で健康なうたごえを全国民に広げていく活動が必要である。そのために次の活動を進め、運動の現状における弱点や欠陥を改める。 1.普及する曲目の選択の幅を思い切って広げ、平和で健康な音楽を国民の中に広げる国民の生活と闘いを狭くとらえていた。ストライキやデモなど、直接的な政治課題・闘争課題に応える部分を強調し、それに役立たないものは「労働者的」でない、といった狭い考え方があった。 「敵」が明らかにされていない歌は軽薄であり、うたごえ運動の歌として役立たない、絶対平和主義的な歌は平和の力にはならないから、歌うべきではないのではないか、という議論も生じた。性急に、「この歌は労働者的でない」、「マスコミ的だ」、「日和見主義的だ」などのレッテルを貼ることもあった。創作や演奏においても、一つの表現方法に固定せず、クラシック・ポピュラー・フォーク・民謡・歌謡曲など、多様な表現方法を追求し、大衆の要求に正しくこたえていく必要がある。 2.普及する対象を飛躍的に広げる 3.サークル員を増やし、サークルを数多く組織し、サークル協議会を拡大し、運動の規模を倍加する職場や地域におけるサークル数とその人員の減少が、数年来の合唱発表会の参加数から明らかである。主な原因として、一方では、1960年代に強まった、サークルに対する官側・企業側の圧迫などが挙げられる。他方では、うたごえ運動の内部で、サークルを重視して拡大する活動が弱まったのも事実である。サークルに専門的技術や労働者意識を求めることや、楽しみを期待するサークル員の要求に沿わない活動内容など、多数の人々の好みや要求の変化に即応しない運営方法が、運動の弱体化を招く原因なった。これを、運動の主体的な問題として認識すること。 4.専門音楽家および他の民主的音楽団体や、労働組合などとの協力・協同の活動を強化する(1)かつて古い活動家の間で、「専門家は官側・企業側の攻撃に妥協的であるから、国民の真の音楽要求には応えられない」、「主人公は国民大衆なのであって、専門家はこれに従属すべきだ」とする誤った考えが存在した。日本の音楽の真の発展は、うたごえ運動をはじめとする大衆的・民主的音楽運動と、楽壇における専門家の民主的な諸活動との結合なしには勝ち取れない。「労働者が主人公である」と誇示することでセクト的・排他的になり、専門家との協力を狭めることは、運動にとっての不利益である。うたごえ運動は、労働者階級が歴史の創造の担い手であると考え、その役割を重視するがゆえにこそ、労働者自身に不利を招くセクト性や排他性を克服せねばならない。 (2)うたごえ運動と労働組合とは、当初から友好的関係を広げ、職場のうたごえの普及に協力・協同してきた。一部の労組との不正常な関係は、1964年春闘のゼネストをめぐる意見の食い違いから、一部の労組員が組合から除名される事態から始まった。直接のきっかけは、同年に仙台で開かれた「第9回全電通のうたごえ祭典」の開催をめぐる出来事であった。全電通労組幹部は、除名した組合員を祭典から締め出そうとして、一方的に祭典中止を通告した。当時の「日本のうたごえ実行委員会」の対処にも考え方の狭さがあらわれ、必要以上に対立を深めてしまった。うたごえのサークル活動と、労組との関係をより大きな連帯の観点でとらえ、話し合いを深めて慎重に対処すべきであった。うたごえ運動のセクト的な考え方から生じた誤りであった。これを正して、平和で健康なうたごえを職場に広げていくために、労働組合との協力を粘り強く進めるよう、一層の努力をしていく。 5.他の文化サークルとの相互協力を強める 6.世代を超えて活動家の団結を強める 7.日本のうたごえ祭典を、多彩で新鮮なものとする 8.みんなうたう会を盛んに催し、「うたごえサークル」として定着させるこの組織化に成功するための留意点は、 (1)レパートリーはあくまでも大衆の要求を重視して選曲し、歌謡曲などについても、これを歌わない、といった、かたくなな態度をとらないこと。 (2)合唱技術の向上を、性急に押し付けたり、要求したりしないこと。 (3)何よりもまず、楽しく歌わせて、またそのように指導すること。 9.理論的な勉強を強め、理論活動を活発に進める今日の日本音楽文化における最大の課題は、米日反動勢力の日本音楽文化の破壊と退廃・反動化に抗するすべての人々と共同で、日本音楽文化の民主的発展を勝ち取ることにある。労働者の新しい音楽文化をつくることはたしかに重要だが、うたごえ運動を、労働者の音楽文化建設の運動に限定して捉える狭い考えは除去すべきである。1950年頃の民主的文化運動の一部には、「真の民主的な文化は労働者階級によってのみ創出されるのであり、ブルジョア的、小ブルジョア的な知識人の間からは生まれてこない。階級的な文化活動は職場に集中すべきである」との理論があった。それは一見、労働者が日本文化建設の主人公であり、労働者の役割を重視する理論のようでありながら、じつは他の広範な階層と労働者を対置し、専門文化人と労働者をも対立させ、労働者階級そのものを孤立させてしまう理論であった。今日、日本音楽文化の民主的発展や政治の革新は、広範な革新統一の力でなければ不可能である。それを一刻も早く実現することが国民大多数の要求である現在では、上述の理論はきわめて有害である。
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