ポツダム命令であるかの再検討4―「ポツダム命令について」に加えるべきもの3改正関係1
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「ポツダム命令」の記事における「ポツダム命令であるかの再検討4―「ポツダム命令について」に加えるべきもの3改正関係1」の解説
ポツダム命令は、前述の「連合国軍最高司令官の要求に対する対応」にあるように法律事項になるものについて制定され、法律と同等の効力があるのであるので、その後の改廃は法律又はポツダム命令でしかできないと解することもできる。以下の命令(勅令4件、省令19件)はポツダム命令の改廃に関するもので、「ポツダム命令について」の一覧にはないものである。 以下まず、ポツダム命令を単独で改正するものについて検討し、次に制度改正等に伴う一括改正中にポツダム命令を含むものについて記述する。なお検討にあたり、改正内容が実質的に法律事項の改正と考えられかどうか、また閣議決定が確認できるかについても記述する。 昭和二十一年勅令第六十八号(昭和二十年勅令第五百四十二号ポツダム宣言の受諾に伴ひ発する命令に関する件に基く恩給法の特例に関する勅令)の一部を改正する勅令(昭和21年勅令第304号) この勅令の上諭は下記のとおりであり確かに直接「昭和二十年勅令第五百四十二号に基き」とはなっていないが、内容は恩給を支給しない対象から「第一復員又は第二復員部内の軍人以外の公務員に恩給給与の道をひらくために改正」であり、法律事項の改正である。 朕は、昭和二十一年勅令第六十八号(昭和二十年勅令第五百四十二号ポツダム宣言の受諾に伴ひ発する命令に関する件に基く恩給法の特例に関する勅令)の一部を改正する勅令を裁可し、ここにこれを公布せしめる。 昭和二十一年勅令第百九号(昭和二十年勅令第五百四十二号ポツダム宣言の受諾に伴ひ発する命令に関する件に基く就職禁止、退官、退職等に関する件)の一部を改正する勅令(昭和21年勅令第306号) 昭和二十一年勅令第百九号(昭和二十年勅令第五百四十二号ポツダム宣言の受諾に伴ひ発する命令に関する件に基く就職禁止、退官、退職等に関する件)の一部を改正する勅令(昭和21年勅令第307号) 同じ昭和21年6月12日付けで同じ勅令を改正しているが、昭和21年勅令第306号は枢密院の諮詢を経ている。 内容は、第306号は、公職追放される者の範囲を拡大するもの、第307号は、公職追放に関して資料提出をさせる規定(拒むと罰則の適用がされる)の追加でありいずれも法律事項にかかわるものである。 地代家賃統制令の一部を改正する勅令(昭和22年勅令第17号) 規制される地代家賃の変更に関する規定の改正。規制される内容の変更であり法律事項にかかわるものである。 昭和二十年大蔵省・外務省・内務省・司法省令第一号の改正の件(昭和21年大蔵省・司法省令第1号) 昭和二十一年大蔵省・外務省・内務省・司法省令第一号の改正の件(昭和21年大蔵省・外務省・司法省令第2号) 閣議決定あり 資料件名 昭和20年大蔵、外務、内務、司法省令第1号及昭和21年大蔵、外務、司法省令第1号中改正ノ件(閣議了解) 国立公文書館請求番号平14内閣00001100 もともとの昭和二十年大蔵省・外務省・内務省・司法省令第一号は、件名が外地銀行、外国銀行及特別戦時機関ノ閉鎖ニ関スル件であり、後の閉鎖機関令の前身であり、日本が旧植民地や占領地に設立した機関の閉鎖を行うものである。また昭和二十一年大蔵省・外務省・内務省・司法省令第一号は、閉鎖機関保管人委員会等ニ関スル件であり閉鎖機関の管理についてのものである。改正はこれらの二つの命令の対象機関を追加するものである。閉鎖という強制措置の対象の変更は法律事項の改正とみるべきである。 なお昭和二十年大蔵省・外務省・内務省・司法省令第一号の改正の件(昭和21年大蔵省・司法省令第3号)も、対象機関の改正(追加ではなく、日沸銀行を除外するもの)であるが制定文が、昭和二十年勅令第五百四十二号を根拠とする言及があるため「ポツダム命令について」は。ポツダム命令としている。制定形式は重要であるが内容的には相違はない。 昭和二十年大蔵省・外務省・内務省・司法省令第一号の改正の件(昭和21年大蔵省・外務省・司法省令第2号) 昭和二十一年大蔵省・外務省・司法省令第一号の改正の件(昭和21年大蔵省・外務省・司法省令第3号) こちらのほうは閣議決定を確認できない。内容的には閉鎖機関の追加であり、前のものと共通の性格である。 昭和二十年商工省・文部省・農林省・運輸省令第一号の改正の件(昭和21年商工省・文部省・農林省・運輸省令第1号) 閣議決定あり 資料件名 昭和20年商工、文部、農林、運輸省令第1号(兵器、航空機等ノ生産制限ニ関スル件)中改正ノ件(閣議了解)(商工省) 国立公文書館請求番号平14内閣00001100 もともとの昭和二十年商工省・文部省・農林省・運輸省令第一号は、件名が兵器、航空機等ノ生産制限ニ関スル件であり、兵器や航空機の生産を禁止するものである。制定当時は、他の用途への使用は許可制であったが、この改正で原則禁止(占領軍の許可があれば可能)と規制が強化されており、法律事項にわたるとみるべきである。また閣議決定には、占領軍の指令文書の添付もあり明らかにポツダム命令である。 労働に関する團体の主要役職員への就職禁止等に関する件の改正の件(昭和21年厚生省、運輸省、内務省令第1号) 閣議決定あり 資料件名 昭和21年厚生、運輸、内務省令第1号の一部改正 労働組合役員に追放令適用の件) 国立公文書館請求番号平14内閣00018100 労働に関する團体の主要役職員への就職禁止等に関する件は、国策のための報国会等の役員の追放に関するもので、改正はその就職禁止を労働組合へ拡大するもの。禁止の範囲の拡大で法律事項にわたるとみるべきである。 工場事業場、研究機関等ノ事業報告書等ニ関スル件の改正の件(昭和21年閣令、文部省、農林省、商工省、運輸省令第1号) 閣議決定あり 資料件名 昭和二十年閣、文、農、商、運令第一号(昭和二十年勅令第五百四十二号ポツダム宣言の受諾に伴ひ発する命令に関する件に基く工場事業場、研究機関等の事業報告書等に関する件)を改正する 国立公文書館請求番号類03025100 工場事業場、研究機関等ノ事業報告書等ニ関スル件は、兵器、航空機、軍需物資の工場の事業報告並びにこれらの研究報告書の提出を義務付けるものである。改正は研究報告書についてその提出頻度等の改正をするものであり、義務の変更として法律事項にわたるとみるべきである。 正規陸海軍将校又は陸海軍特別志願予備将校であつた者の調査に関する件の改正の件(昭和21年内務省令第34号) 正規陸海軍将校又は陸海軍特別志願予備将校であつた者の調査に関する件は、陸海軍の将校だったものに届出義務を課すもので、改正は将校の死亡の場合に戸籍法の死亡届を出す義務のある者に届出義務を追加するもの。罰則の対象になることから法律事項にわたるとみるべきである。 鉛屑回収規則の改正の件(昭和21年商工省令第51号) 閣議決定あり 資料件名 鉛屑回収規則の一部改正について(商工省) 国立公文書館請求番号平14内閣00012100 レファレンスコードA17111046700 鉛屑回収規則は、鉛及びその屑について指定会社以外との取引を禁止するものであるが、改正は戦災等で埋没したものについて強制譲渡を認めるものであり所有権の制限であり法律事項にわたるとみるべきである。 昭和二十一年大藏、遞信省令第一號の一部改正の件(昭和21年大蔵省・逓信省令第2号) 昭和21年大藏、遞信省令第1号は、占領軍の発行する弗表示の軍票の所持の禁止と例外的に逓信官署(郵便局や電話局)で、受け入れる例外を規定していたもの。改正はこの例外において換算レートの規定を削るものである。罰則付きの規定の改正であり法律事項にわたるとみるべきである。 死産の届出に関する規程(昭和21年厚生省令第42号)は、死産について届出を義務付けたもの。占領時における4回の改正すべてがポツダム命令でないとされているが内容をみるとポツダム命令とみるべきである。 死産の届出に関する規程の改正の件(昭和22年厚生省令第4号) 届出事項を改正(「届出の住所に母が引き続き住んでいた期間」を「届出の住所の市町村に母が引き続き住んでいた期間」)に改正。細かい改正であるが法定の届出事項の改正であり、法律事項にわたるとみるべきである。 阿片法施行規則等中改正(昭和22年厚生省令第14号)による改正は、制度改正等に伴う一括改正の一部である後の記載を参照 死産の届出に関する規程の改正の件(昭和22年厚生省令第42号) 届けの事項を改正。法定の届出事項の改正であり、法律事項にわたるとみるべきである。 死産の届出に関する規程の改正の件(昭和24年厚生省令第44号) 閣議決定あり 資料件名 昭和二十一年厚生省令第四十二号(昭和二十年勅令第五百四十二号ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く死産の届出に関する省令)の一部を改正する厚生省令 国立公文書館請求番号類03389100 届けの事項を改正。法定の届出事項の改正であり、法律事項にわたるとみるべきである。 昭和二十二年閣令、内務省令第五号(昭和二十二年勅令第一号第八條に対する特例に関する命令)の改正の件(昭和22年総理庁令、内務省令第2号) 国立公文書館保存文書(国立公文書館請求番号昭57総00001100)は存在ずるが、総理府公文のファイルで閣議の案件番号もないので閣議を経ていない可能性は否定できない。しかし、昭和22年閣令、内務省令第5号を改正して適用範囲を「昭和二十二年十二月三十一日までに行われる衆議院議員、参議院議員又は地方公共団体の議会の議員若しくは長の選挙に関して」と拡大し、補欠選挙についても適用するもの。元の命令がポツダム命令であるからこれもポツダム命令とすべきである。
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