届出義務
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/20 01:35 UTC 版)
医師法21条では、医師が異状死に遭遇した場合には警察に届け出ることを義務付けており、違反には刑事罰(2万円以下の罰金)も規定されている。この規定は日本国憲法第38条で規定された自己負罪拒否特権によって違憲とする説もあったが、消毒液を血液凝固阻止剤と取り違えて点滴して死亡した患者の届け出が遅れた都立広尾病院事件の2004年の最高裁判決で、「犯罪発見や被害拡大防止という公益が高い目的があり、また届出人と死体との関連の犯罪行為を構成する事項の供述までも強制されるわけではなく、捜査機関に対して自己の犯罪が発覚する端緒を与える可能性になり得るなどの一定の不利益を負う可能性は(人の生命を直接左右する診療行為を行う社会的責務を課する)医師免許に付随する合理的根拠のある負担として許容されるべき」として合憲判決が出ている。一方で、同高裁判決では「誤薬の可能性につき(中略)説明を受けた」という事実認定の下、「右腕の異状に明確に気付いていなかったのではないかとの疑いが残る」という点をもって、事故当日の医師法21条違反を否定した。高裁・最高裁判決ではいずれも「医師法21条にいう死体の『検案』とは,医師が死因等を判定するために死体の外表を検査すること」と判示したのみで、同規定に基づいて届け出るべき死の範囲には対立する見解が存在しており、明確な共通見解はいまだ存在していない。 福島県立大野病院産科医逮捕事件で医師が起訴されたことで医師業界の波紋が広がった際に医師法21条が注目されたが、自己負罪拒否特権を巡るその他の判例での合憲などを一切無視し、安直に刑事処罰に対する自白強要と混同して、医師の異状死体の届出義務に反発する声が広がっている。
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