ジャパンマネー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/05 08:40 UTC 版)
1965年、韓国は日本と日韓基本条約を結んだことにより、無償金3億ドル・有償金2億ドル・民間借款3億ドル以上(当時1ドル=約360円。現在価格では合計4兆5千億円相当。当時の韓国の国家予算は3億5千万ドル程度)の日本からの資金供与及び貸付けを得ることとなった。国際協力銀行によると1960年半ばから90年代までにトータル6000億円の円借款が行われ、韓国はこうした資金を元手に「漢江の奇跡」の象徴とも言われる京釜高速道路をはじめとした各種インフラの開発や浦項総合製鉄をはじめとした企業の強化をおこなった。インフラ整備後は、日本の民間企業によって大規模な投資がおこなわれた。韓国では、日本による多額の経済・技術援助が韓国の発展に寄与したことを一般には知らされていないため、多くの韓国人は自国が独力で経済成長を達成したと考えていると指摘されている。2005年には韓国内で日韓基本条約で得た請求権資金を個人補償にほとんどまわさず国内投資に使って発展の基礎を作った事が公開され、それにより経済発展を促した朴正煕政権の判断を「貧困脱出・国家再建のための不可避な選択」という評価と「クーデターで執権した軍事政権が徹底できなかった過去の整理」、植民地支配の完全清算を捨てた「屈辱外交」とする声が錯綜している。 韓国の高度経済成長に果たした円借款の役割について、国際協力銀行(現国際協力機構)から外部評価を依頼された韓国の産業政策研究院(The Institute for Industrial Policy Studies , IPS)の2004年の評価報告書では、1960年代半ばから90年までの約30年間を対象として、円借款事業が韓国の経済・社会に与えたインパクトを、技術レベル向上、交通渋滞緩和および環境改善等の効果、産業技術の発展、生活水準の向上、環境保全等が確認される、と評価した。この中で、高速道路建設事業(1968年)は輸出志向工業の本格化における物流および貿易の阻害要因を取り除くことを目的として実施され、移動費用の削減、時間短縮、貨物損傷の減少、交通事故の減少等が、間接的効果として、農村および漁村の発展、地域間格差の縮小等が確認され、第三次5カ年計画(1972~76年)の重化学工業化政策における浦項総合製鉄所拡充事業(1974年)は、対外開放政策の代表的事例となり、忠州多目的ダム(1978年)は、洪水防御や農産物の増産、電力需要への対応、観光開発に貢献したと評価した。 延世大学経済学部金正湜教授は2000年に韓国対外経済政策研究院から出版された「対日請求権資金の活用事例研究」において、第二次世界大戦終結後、日本が請求権資金を支払った韓国、ミャンマー、フィリピン、インドネシア、ベトナムの五カ国を比較し、韓国が最も効率的にこれを使用したという分析を報告した。対日請求権資金はどの国においても概ねインフラ整備や国民生活向上に投資されたが、投資の効率性は韓国が最も高く、「韓国は、徹底した事前計画で最も効率的に資金を活用した国家として評価を受けている」とし、「原資材導入に多くの投資をしたことは注目される」と分析・評価した。さらに今後の日朝国交正常化による対日請求権資金(などを含む4兆円国際協力基金)の北朝鮮の社会間接資本整備への効率的活用に関し、望ましい資金活用方法の提示など、韓国の対日請求権資金活用経験を伝授してあげなければならないと述べた。また、東南アジアなどにおいて見られた投資部門の決定に対する政治的軍事的影響を排除し、北朝鮮に相応しい比較優位産業を選定し集中投資して輸出を増大させるなど、経済効率を重視した投資部門決定が今後の北朝鮮経済成長に大きく寄与するので、韓国としてもこれを軍事目的に使わないという前提の下に北朝鮮の対日交渉に積極的に協力しなければならない、と結論付けた。 2021年6月7日、日本企業16社を相手取り損害賠償を求めた元徴用工らの徴用工訴訟問題でソウル中央地方裁判所(朝鮮語版)は原告の訴えを却下する判決を言い渡した。判決は、日本が1965年の日韓請求権協定に基づいて提供した計5億ドルの支援が「『漢江の奇跡』と評される輝かしい経済成長に寄与した」とした。日韓請求権協定は、日韓の請求権問題は「完全かつ最終的に解決される」としているが、元徴用工らは日本の経済協力が少ないことなどを根拠に、日韓請求権協定で元徴用工の請求権は解決されなかったと主張しており、判決が日本の漢江の奇跡への寄与に言及したのは、こうした主張を否定する根拠の一つとしたためである。
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