EEGからボス・フィルムへ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/01 10:22 UTC 版)
「リチャード・エドランド」の記事における「EEGからボス・フィルムへ」の解説
『2001年宇宙の旅』以来『スター・ウォーズ』や『エイリアン』(1979年)といった宇宙を舞台にした作品で真っ先に依頼を受ける存在となっていたダグラス・トランブルに自分のプロダクションEntertainment Effects Group(EEG)を任せたいと言われエドランドはILMを退社。EEGのスタッフ、機材で1984年に『ゴーストバスターズ』と『2010年』を手がける。2作品は揃って同年度のアカデミー視覚効果賞にノミネートされた。『2010年』にはCGで作られた木星が登場する。それまでにないリアルさで劇的な表情の変化も見せるが、当時はCGのハード、ソフトの性能が低く、ボス・フィルムはその設備を持たず、外注でCGプロダクションに木星をCGで描いたショットをオプチカル合成した。 トランブルは1970年代にパラマウントと契約してFuture General Corporation(FGC)を立ち上げていたが、『スター・ウォーズ』の依頼は断り(代わりにダイクストラを推薦した)スピルバーグの『未知との遭遇』の視覚効果を人員設備とも大幅に増強して製作した。『スタートレック』(1979年))の視覚効果をロバート・エイブルに替わって担当した後パラマウントと契約を解消してEEGとして独立。同社は機材、規模、クオリティの点でILMと並ぶ大手視覚効果製作会社となっていた。『ブレードランナー』(1982年)、『ブレインストーム』(1983年)の後、ヴァーチャル・リアリティに応用可能なショースキャン映像製作のため劇映画の視覚効果はエドランドに委ねる事にしたようだ。 1985年にはホラー映画が2作品。第1作目も手がけた『ポルターガイスト』の続篇と『フライトナイト』に取り組んだ。 画質と経済性、フィルム選択の自由度を勘案してビスタビジョン(35mmフィルム)を採用したILMと異なり、EEGの機材はトランブルの画質最優先の方針により65mm用であった。65mmフィルム用にエドランドは新しいオプティカルプリンター「ZAP」を設計開発し、1986年度のアカデミー科学技術賞を得た。この年、EEGはボス・フィルム(BFC)に改名し、ゲーム製作部門「ボス・ゲーム・コーポレーション」で新ビジネスにも乗り出した。1988年の『ダイ・ハード』は殆ど視覚効果が前面に出ない作品だが、この作品でも超小型65mmカメラを開発して視覚効果製作が行なわれた。1989年には往年の名作『イントレランス』のリバイバル上映にあたり、新たなオープニング映像を制作した。 しかし80年代を通じて古巣であるILMはCGIの劇映画応用とソフトウェア開発を着実に進めており、倒産したRA&Aのスタッフが複数の新会社を立ち上げるなどCGスタジオも競争が激しく、BFCが規模の大きなデジタル視覚効果を任される事も無く次第に「Additional Visual Effects」のクレジットも見られるようになる。 1990年にジャパンマネーで製作された『クライシス2050』でプロデューサーを務めるものの、同作は興業的に失敗。『スピーシーズ 種の起源』でモーション・キャプチャーと「ジル」、『クローンズ』でマイケル・キートンを大量にコピーするなどようやくデジタルVFXが見られるようになったが、『エアフォース・ワン』、『絶体×絶命』に参加した後1998年にBFCは倒産した。 ダイクストラが率いたアポジー社も80年代末に倒産。エドランドにEEGを委ねたトランブルが興したショースキャン・エンターテインメント社もテーマパークのアトラクション映像を作っていたが、映像のリアリティこそ優れていたものの決定的な成功には恵まれず2000年に倒産した。 その後エドランドはエミー賞視覚効果部門ノミネートとなったテレビシリーズ『エンジェルズ・イン・アメリカ』を始め幾つもの作品に視覚効果スーパーバイザーとして招かれ、『悪いことしましョ!』では視覚効果監修のほか第2班監督も務めた。『ステップフォード・ワイフ』ではILM出身のフィル・ティペットのスタジオに招かれ同社の視覚効果を監修した。 2007年には長年にわたる技術開発と水準を向上させた功績が認められジョン・A・ボナーメダルをアカデミー協会から授与された。視覚効果を監修した『ウィレム・デフォー セブン:ビギンズ 〜彩られた猟奇〜(英語版)』と『チャーリー・ウィルソンズ・ウォー』も公開される。
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