シリアス無言劇
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/14 03:53 UTC 版)
「志村けんのだいじょうぶだぁ」の記事における「シリアス無言劇」の解説
全編を通してシリアスな流れで進む、サイレントドラマタッチの作品。スタッフと飲んでいた際に志村が「人を笑わせられるなら、人を泣かすぐらい簡単な話」と豪語したことが発端となった企画で、志村にとってはスタッフ・視聴者との「勝負」であった。志村は「コントの中に予告なく悲しいドラマを入れることで視聴者を驚かせたかった」と後に語っている。1本あたりの時間が他のコントに比べ長く、30分弱の作品もあったが、基本的にドラマ途中にCMは挿入されなかった。BGMには、主に宗次郎の『悲しみの果て』が用いられた。番組後半のパートもしくはスペシャルで放送。番組内で異色の存在だったが、番組終了までに十数本放映された。以下に主な作品を挙げる(カッコ内は放映時間)。このドラマはDVD各巻に1作品ずつ収録されている。なお、「シリアス無言劇」というコーナー名は俗称であり、実際には正式名称は無い。作品の展開としては、登場人物の一人が物語の中で死を迎えるパターンが多い。 老人(志村)が、家に遊びに来た娘夫婦(石野・田代)と孫を眺めながら、非行に走っていた娘の少女時代や、(自身がボイコットした)結婚式の時の様子、娘の出産時(志村は、雪の降るお宮の中で無事に娘が出産することを必死に祈っている)を回想する。そしてそのまま居間で倒れ、死を迎える(8分)。 志村が片思いした女性(石野)が失明し、自分の目を犠牲にして助ける。健康になったその女性は、志村に助けられたと知らずに別の男性(田代)と結婚してしまう(9分)。 志村と石野の若夫婦が、子供を身篭り、幸せの絶頂にいたが、出産時に石野が死去。悲しみに暮れながらも、生まれたばかりの娘を必死に育てる志村。十数年後、高校生になり、石野と瓜二つになった娘が、志村の為に朝食を作っている。志村はそんな娘の姿を、亡き妻を思いながら見つめる。唯一のハッピーエンド作品(12分)。なお、これがシリアス無言劇の一作目である。 今年の日本シリーズで3連敗しているオニオンズ(大毎のパロディ)の監督(志村。西本幸雄がモデル)が、選手たちを応援しながらこれまでの野球人生を振り返る。志村は3連敗からの4連勝に向けて奮起するが、水爆打線を某するホイップス(大洋がモデル)に敗れ監督(田代)の胴上げを許す(不明)。 以下の作品は、DVDに収録されたものである。なお、タイトルはDVD収録の際に付けられたものである。 「父ちゃん起きてよ…」 だっふんだ編DISC1に収録。元妻(石野)とその息子が、元夫(志村)の墓参りへ行き、元妻が昔に想いを巡らす。2人の出会いから子供をもうけたが、石野は家を出て他の男(田代)の元へ。残された志村が一人息子を育てようと孤軍奮闘するも、アルコール依存症と過労の果てに吐血死。元妻とは存命中に再会を果たせないままであった(20分)。 「私、本当に寂しかったんです…」 だっふんだ編DISC2に収録。志村と石野の若夫婦は、地方から駆け落ちしてきて貧乏暮らしにも負けず頑張って、日々の生活を送っていた。その甲斐あって、昇給・出世を遂げて生活にも余裕ができ、妻は子供を身篭ったが、それを知らない夫がクラブのホステス(河野景子)と浮気をしていることが発覚。家を飛び出す妻。残された夫は、部屋に残されたお産と育児の本、母子手帳を発見し自分に子供ができたことを知り、急いで妻を追いかけるも、妻は雪の中で目を覚ますことはなかった(28分)。全作品中、最長時間の作品である。 「爺様、海へ…」 ウンジャラゲ編DISC1に収録。老人(志村)が亡き妻(石野)の遺体の前で自分の一生を振り返る。途中ホームコメディ風の笑いはあるものの、総じてシリアスな作り。最後は妻の遺体を背負い海に入り、妻の後を追うかのような場面で終わる(10分)。これとは別に、墓前でタバコを燻らせながら振り返るシーンもある。 「家族…」 ウンジャラゲ編DISC2に収録。ある雪の降る日、ラーメン店の主人である志村は意識のない状態でベッドに横たわっていた。その傍らには妻(石野)、息子(田代)、娘(松本)と主治医(桑野)がいる。家族はこれまでの日々を振り返る。自分のラーメン店を持つため、雪の降る寒い夜空の下で懸命にラーメン屋の屋台を切り盛りしていた若かりし頃のこと、努力が実を結びラーメン店を開店したこと、二人の子供に恵まれたことなど、家族みんなが各々の思い出に残る出来事を思い返していた(娘は父親へのプレゼントを贈った日のことや嫁ぐ日の両親への挨拶、息子は非行に走っていた少年時代や更生して社会人になり、おでんの屋台で父と共に酒を飲んだ日のことを思い返す)。志村は、最期に「ありがとう」とつぶやき、家族に見守られる中、静かにその生涯に幕を下ろした(18分)。 ただし、シリアス無言劇と見せかけて、途中から「変なおじさん」や「好きになった人」になる引っかけ的なコントになることもある(総集編でも放映された)。後番組となる『志村けんはいかがでしょう』でも、BGMコントでこの音楽を桑野信義が吹いてボケるというギャグが使われたり、フジテレビ社員(プロデューサー職)のパピアントグッチャン²こと川口誠が現れ、『ろくでなし』で締めることもあった。 シリアス無言劇と見せかけた「変なおじさん」が登場する引っ掛けのオチで終わった作品の一つとして、次の作品がある。 娘(石野)が両親のもとを離れ、都会で一人暮らしをはじめるが、父親(志村)が突然倒れてしまう。母親(松本)からの電話を受けた娘はすぐに列車で故郷に戻る。父親との日々を思い起こしていた娘は涙ながらに父親の無事を祈り続けたが、願いもむなしく、家に着いたときには父親はすでに亡くなっていた。しかし、娘が父親の顔に被せられた布を取ると、父親だったはずのその人はなぜか変なおじさんになっていた。なおこの作品では、弔問客(田代)に「変なおじさんだね」と言われ、「あっ…、それ先言うかよオメエ、そうじゃねーべ『何だチミは?』って言わないと、『何だチミは?』って『そうです』『何だチミは?』って言ってくんなきゃダメだよ、なぁ、頼むよ頼むよ、なぁなぁなぁ」と反論するも「もう見ればわかるよ!」と返される展開になっている(10分)。 このコーナーは番組内でも異色な存在であったが、視聴者には概ね好評であった。しかし、引っ掛け的な落ちで終わるバージョンには「せっかくの感動が台無しになった」など、批判的な感想もあったという。 なお、1992年10月19日に放送された太地喜和子追悼特集のエンディングも、「シリアス無言劇」風に製作された。
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