ゲルク派とは? わかりやすく解説

ゲルク派

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/29 16:29 UTC 版)

ゲルク派(ゲルクは、: དགེ་ལུགས་པ་、dge lugs pa[1])、またはゲルー派(ゲルーは)[2]チベット仏教4大宗派の1つで、ツォンカパの開いた宗派である。黄帽派(こうぼうは)、黄教(こうきょう)とも呼ばれる[3][4]ガンデン寺を総本山とする。ダライ・ラマパンチェン・ラマもこの宗派に所属している。

概要

17世紀以降、歴代のダライ・ラマがチベットの政教双方の最高指導者となったのにともない、ゲルク派もまたチベット仏教の最大宗派となった。20世紀中葉以降、中華人民共和国のチベット支配によってチベット仏教全般が抑圧されたが、中でもゲルク派は徹底的な弾圧を受けた。しかし、21世紀現在でもゲルク派がチベット仏教の最大宗派であることに変わりはない。

ツォンカパは中観帰謬論証派の立場から顕教を重視し、密教は顕教を完全に修めた者だけに許可されるという「倫理性」を重んじた。ツォンカパの宗教的な情熱、徹底した論理性などが当時の僧侶の心を動かし、ツォンカパ在世当時から多くの信奉者が集まった。

その後、ゲルク派では顕教重視の観点から仏教学全般についての教科書(yig cha)が多数編纂され、教育カリキュラムが整備され、一定の方法で多数の僧侶を育てる体勢が整った。地方から中央の寺院に留学生を取り、教育した後に地方に帰して、そこでさらに同じ教育体制を築くという方法で勢力を拡大していった。

運営

ゲルク派の管長(教主)は、総本山ガンデン寺の座主であるガンデン・ティパ。ガンディン・ティパはゲルク派の高僧の中から互選され、ダライ・ラマの承認を受けた上で任命される。ガンディン・ティパは原則として数年ごとの任期制であるが、ダライ・ラマ14世の師のひとりであるリン・リンポチェに限り、終身座主を務めた。2009年から2016年にかけてのガンデン・ティパは、ラダック出身の第102代リゾン・リンポチェ。2016年には第103代ガンデン・ティパの座にジェツン・ロブサン・テンジン(Jetsun Lobsang Tenzin)がついた。

寺院

ゲルク派の主要寺院として、次のものがあげられる。ガンデン寺、セラ寺、デプン寺をゲルク派三大寺院、タシルンポ寺を加えて同四大寺院、さらにタール寺(クンブン寺、クンブム寺)とラブラン寺を加えて同六大寺院と呼ぶ。

  1. ガンデン寺 - ゲルク派の総本山。ガンデン・ティパの座所。
  2. セラ寺
  3. デプン寺 - 17世紀までダライ・ラマの座所。
  4. タシルンポ寺 - パンチェン・ラマの座所。
  5. タール寺(クンブン寺、クンブム寺)
  6. ラプラン寺

ゲルク派内の原理主義

なお、17世紀半ばからゲルク派内部の保守強硬派によって行われてきた護法尊シュクデンの崇拝がダライ・ラマ14世によって批判されたが、これについてシュクデン崇拝者たちはダライ・ラマによって「自分たちのシュクデン信仰を禁止された」、あるいは「破門された」と主張し、宗派内での深刻な問題となっている[5]。シュクデンを信仰をするグループは「シュクデン派」と呼ばれている。シュクデン派の中には、もともとのゲルク派と袂を分かったグループや、ゲルク派からは離脱しないながらシュクデン信仰を止めないグループが含まれている。

脚注

注釈

出典

  1. ^ 川崎信定「ダライ・ラマ」 - 日本大百科全書(ニッポニカ)、小学館、2019年。
  2. ^ "黄帽派". 百科事典マイペディア. コトバンクより2023年4月6日閲覧
  3. ^ 栂尾 1951, p. 3.
  4. ^ "黄帽派". 日本大百科全書(ニッポニカ). コトバンクより2023年4月5日閲覧
  5. ^ The Dalai Lama And The Cult Of Dolgyal Shugden | HuffPost、2021年4月4日閲覧。

参考文献

関連項目

外部リンク


ゲルク派

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/08/17 04:15 UTC 版)

化身ラマ」の記事における「ゲルク派」の解説

ダライ・ラマ観音菩薩化身とされるパンチェン・ラマ阿弥陀如来化身とされる

※この「ゲルク派」の解説は、「化身ラマ」の解説の一部です。
「ゲルク派」を含む「化身ラマ」の記事については、「化身ラマ」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「ゲルク派」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ



固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ゲルク派」の関連用語

ゲルク派のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ゲルク派のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのゲルク派 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの化身ラマ (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS