アメリカ合衆国における反中
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/12 04:52 UTC 版)
「米中関係」も参照 第二次大戦終結まで 19世紀のアメリカでは、勤勉かつ低賃金で働く中国人労働者が大量に移住してきたため、1870年代の初期に中国人差別法や1882年の中国人排斥法(排華移民法)などが制定され、清朝(中国)からの移民を制限しようとした。この頃清朝はアヘン戦争での敗北などもあって衰退し、イギリスをはじめとした西洋諸国によって半植民地の状態におかれたことから、安定した生活を求め海外に移住する中国人が多くいた。同じ時期に日本人も同様に移住したが、中国人にしろ日本人にしろ困窮しきっていた彼らは低賃金でも文句を言わず良く働いた。そのためイタリア系やアイルランド系(いずれも熱心なカトリック教徒)など、白人社会の中で下層を占めていた人々の雇用を奪うことになったため問題化し、東アジア系移民への人種差別としての「黄禍論」が唱えられるようになった。 そのため、中国人労働者によって自分たちの労働待遇までも悪化させられると考えた白人住民による暴行事件が多発した。この時の反中感情は皮肉にもアメリカに対する同じアジア系である日本の脅威の方が深刻化したことから沈静化し、第二次世界大戦でアメリカと中国が共に日本と戦ったことなどからほぼ一掃された。 冷戦時代 第二次世界大戦後の冷戦体制化ではアメリカは台湾国民政府(中国国民党の党国体制)を承認し、共産主義に対する警戒から大陸の中華人民共和国・中国共産党政府とは手を結ばなかった。しかし、中ソ対立の深刻化とソ連への対抗上、1972年2月に共和党のリチャード・ニクソン大統領が中華人民共和国を訪問し、毛沢東党主席、周恩来総理らと会談したことによって米中関係は劇的に改善した。 ニクソン訪中後、1975年に共和党のジェラルド・R・フォード大統領が訪中し、1979年1月に民主党のジミー・カーター大統領によって米中国交正常化が実現した。この際に、カーター大統領は「一つの中国論」に基づいて中華民国(台湾)と断交したが、1979年4月10日に台湾関係法を制定している。 冷戦後 冷戦後では、アメリカの連邦議会議員の中には中国は軍事・経済などで将来アメリカの覇権を脅かす存在として認識している封じ込め派と、中国の輸出攻勢によって被害を受けている中小企業などの支持を受けた議員(中国の人権問題を重視する人権派も含まれる)が中心となった圧力派が存在する。またアメリカ議会のなかには一定の親台湾派が存在しており、台湾総統のアメリカ訪問を実現しようとする動きもある。 冷戦後の現在の米中関係は、朝鮮戦争やベトナム戦争などでの対立を背景に、軍事面ではかならずしも良好な二国関係と見られていない。近年では1996年の台湾総統選挙の際に台湾海峡をはさんで米中による軍事的緊張が生起したほか、1999年5月7日のユーゴスラビア内戦下のベオグラードにおけるNATO軍機による中国大使館への誤爆、2001年4月には南シナ海上空で発生した米中両国の軍用機(中国人民解放軍の戦闘機『J-8II』とアメリカ軍の電子偵察機『EP-3E』)同士による空中衝突事件(海南島事件)をめぐる問題などが起こっている。 2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件以後は対テロ戦争のため主要国から一定の協力が必要なため、米中関係はある程度緩和されたとの指摘もある。 また第二次世界大戦では友好的であった中国(当時は中華民国)を、現在では38%のアメリカ国民が敵国と見なしている。 2020年の新型コロナウイルス流行では、中国の習近平政権が、武漢で警告を発した李文亮医師を拘束し、春節で中国人の海外渡航を禁止しなかったことが世界的流行を惹き起こし、それを謝らずに支援者を気取っていることから、「放火犯が消防士を気取っている」と喩えて反中感情が起こっている。 ピュー・リサーチ・センターがアメリカ人を対象に、日本、中国、インド、北朝鮮のアジア4か国に対する意識調査を行い、最も高い好感度を100度とし、50度は中立的、0度は最も否定的としたところ、2018年調査では、日本61度、インド51度、中国42度、北朝鮮21度である。2021年調査では、日本59度、インド48度、中国28度、北朝鮮21度であり、中国はわずか3年間の間に42度から28度まで大幅に低下している。また、共和党の方が民主党よりも中国に対して批判的であり、低学歴の方が大卒以上の高学歴よりも中国に対して批判的である。2021年調査では「アメリカ成人の89%は中国をパートナーではなく、競争相手あるいは敵である」と回答している。
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