台湾関係法とは? わかりやすく解説

たいわんかんけい‐ほう〔タイワンクワンケイハフ〕【台湾関係法】

読み方:たいわんかんけいほう

台湾対す基本政策について規定した米国国内法1979年制定

[補説] 1979年米中国交正常化に伴う米台断交後も、台湾との同盟関係維持するために米議会制定米国は、台湾国家同様に扱い防衛兵器供与できるとしている。これに対して一つの中国」を掲げ中国内政干渉にあたると非難している。


台湾関係法

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/24 23:21 UTC 版)

台湾関係法

アメリカ合衆国の連邦法律
英語名 Taiwan Relations Act
番号 PL 96-8
法典 合衆国法典第22編第3301条 22 U.S.C. § 3301 - 3306
制定日 1979年4月10日
効力 現行法
種類 外事
主な内容 台湾中華民国)との関係を規定
条文リンク Taiwan Relations Act
テンプレートを表示

台湾関係法(たいわんかんけいほう、: Taiwan Relations Act:TRA)は、台湾中華民国)の安全保障のための規定を含むアメリカ合衆国の法律である。

同法はジミー・カーター政権による台湾との米華相互防衛条約の終了に伴って1979年に制定されたものであり、台湾を防衛するための軍事行動の選択肢を合衆国大統領に認める。米軍の介入は義務ではなくオプションであるため、同法はアメリカによる台湾の防衛を保障するものではない。台湾関係法に基づく台湾有事への軍事介入を確約しないアメリカの伝統的な外交安全保障戦略は、「戦略的あいまいさ」(Strategic Ambiguity)と呼ばれる[1]

経緯

1979年1月1日に民主党ジミー・カーター大統領中華人民共和国との国交を樹立し、中華民国との国交は断絶された。ホワイトハウスのこの方針は、ソビエト連邦と中華人民共和国の離間を決定的なものとし、また、アメリカ企業が将来中国大陸の巨大な市場を獲得するための重要な布石ともなった。

しかし、同時に米華相互防衛条約の無効化に伴うアメリカ合衆国台湾防衛司令部英語版の廃止と在台米軍の撤退によって東アジアで急激な軍事バランスの変化が起きることが懸念され、自由主義陣営の一員である台湾が中華人民共和国に占領される事態は避けるため、また中華民国政府(民主党とほぼ唯一のパイプであった許国雄僑務委員会顧問)や在米国台湾人(台湾独立派を含む)からの活発な働きかけもあって、台湾関係法が1979年4月に制定され、1月1日にさかのぼって施行された。

アメリカは、国内法規である台湾関係法に基づき、通常の軍事同盟のように台湾に駐留こそしてないものの、武器売却や日本沖縄県在日米軍基地などにより、中華人民共和国を牽制している。

内容

台湾の定義

同法は1979年1月1日以降、「中華民国」という呼称を認めず、「台湾当局」という用語を使用している。

また、1954年に締結された米華相互防衛条約の内容を踏襲し、「台湾」という用語は、台湾島および澎湖諸島を指すと定義されている。なお、金門島馬祖島中華民国の統治下にあるが、これらは「台湾」に含まれないとしている[2]

外交関係

  • アメリカ合衆国が中国と外交関係を樹立するのは、台湾の未来が平和的に解決することを期待することを基礎としている[3]
    • 台湾に関して、アメリカ合衆国の国内法へ影響を与えずこれまで通りとする[4]
    • 1979年以前の台湾とアメリカ合衆国との間のすべての条約、外交上の協定を維持する[5]
    • 台湾を諸外国の国家または政府と同様に扱う。ただし、アメリカにおける台湾外交官への外交特権は、認められない場合がある。
    • 米国在台湾協会に対して免税措置を与える。

防衛関係

  • 平和構築関係維持の為に台湾に、あくまで台湾防衛用のみに限り米国製兵器の提供を行う。
  • アメリカ合衆国は台湾居民の安全、社会や経済の制度を脅かすいかなる武力行使または他の強制的な方式にも対抗しうる防衛力を維持し、適切な行動を取らなければならない。

その他

  • アメリカ議会は台湾関係法について、その施行および監督を行う義務がある。

議論

これは冷戦後の90年代後半には国力が落ちていたロシアとは異なり、経済発展を遂げて国力を上げた中華人民共和国が、アメリカに次ぐ軍事大国となりつつあることで、両国の衝突は可能な限り回避するべきというニュアンスが必要となったためである。

対中関係を重視する馬英九総統の政権下で、中国と台湾の関係が改善してからは、研究者や学者からは、台湾への武器供与を控える、あるいはさらに踏み込んで、台湾から手を引くという「台湾放棄論」とも言える意見が出ているが、現実的な対応としては地政学上の第一列島線に含まれる台湾島を放棄した場合、中国が西太平洋を支配する事を許しかねない為、有事の際のアメリカ軍の対応は、台湾海峡危機に準じた対応になる事は、北京政府も暗黙の了解として認識を共有しているのが現状である[6]

他国での動き

日本では自民党の議員連盟である「日本・台湾経済文化交流を促進する若手議員の会」を中心に、「日本版・台湾関係法」の制定を目指す動きがある[7]

出典

  1. ^ Hickey, V. D. (2021年10月25日). “Biden, Taiwan, and Strategic Ambiguity”. thediplomat.com. The Diplomat. 2022年2月6日閲覧。
  2. ^ 陳鴻瑜 (20 July 2008). 台灣法律地位之演變(1973-2005) (PDF) (Report). 台北県: 淡江大學東南亞研究所. p. 9. 對於台灣的定義是規定在第十五條第二款:「台灣一詞:包括台灣島及澎湖群島,這些島上的居民,依據此等島所實施的法律而成立的公司或其他法人,以及1979年1月1日前美國所承認為中華民國的台灣統治當局與任何繼位統治當局(包括其政治與執政機構。)」從而可知,台灣關係法所規範的台灣只包括台灣和澎湖群島,並不包括金門、馬祖等外島。
  3. ^ Taiwan Relations Act -Sec. 3301. Congressional findings and declaration of policy. (b) Policy. (3)
  4. ^ Taiwan Relations Act - Sec. 3303. Application to Taiwan of laws and international agreements (b)
  5. ^ Taiwan Relations Act - Sec. 3303. Application to Taiwan of laws and international agreements (c)
  6. ^ 阿部純一 (2014年3月27日). “アメリカで叫ばれ始めた「台湾放棄論」 中国に統一されるのは避けられない流れ?”. 日本ビジネスプレス. http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/40270 2014年3月30日閲覧。 
  7. ^ “自民有志、台湾関係法策定で関係強化”. 産経新聞. (2014年2月17日). https://web.archive.org/web/20140217214513/http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140217/plc14021721220014-n1.htm 2014年4月15日閲覧。 

関連項目


台湾関係法

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/09 18:46 UTC 版)

中華民国」の記事における「台湾関係法」の解説

「台湾関係法」も参照 またアメリカ合衆国正式な国交が無いが、中華民国軍事的脅威さらされ場合は、台湾関係法に基づき中華民国助けることとなっており、事実上同盟関係にある。実際に1996年3月23日行われた総統選挙前後に、「独立派」と目される李登輝総統再選阻止しようとした、中華人民共和国中国人民解放軍が、台湾島近海に「実験」と称して弾道ミサイル発射し第三次台湾海峡危機になったことに対しアメリカ軍は「インディペンデンス」「ニミッツ」を基幹とした空母打撃群派遣し中国牽制した。

※この「台湾関係法」の解説は、「中華民国」の解説の一部です。
「台湾関係法」を含む「中華民国」の記事については、「中華民国」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「台湾関係法」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ



固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「台湾関係法」の関連用語

台湾関係法のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



台湾関係法のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの台湾関係法 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの中華民国 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS