かけ算の順序問題の経緯とは? わかりやすく解説

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かけ算の順序問題の経緯

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/03 09:17 UTC 版)

かけ算の順序問題」の記事における「かけ算の順序問題の経緯」の解説

文部省1951年, 小学校学習指導要領算数科編(試案)昭和26年(1951)改訂版において 「一冊5円ノートを,6冊買ったら,いくら支払えばよいでしょう。」という問題を解くときには,「5円×6」として,その結果求めるのが普通である。ところが,この問題を,「ノートを6冊買いました。どれも1冊5円でした。ぜんぶでいくら支払ったらよいでしょう。」とすると,「6×5=30(円)」として結果求めるこどもがでてくるであろう。 こどもが,このような誤った解決をするのは,かけ算の意味ひととおり理解しているにしても,その理解形式的になっていることを示しているといえる問題が,どんな形式出されようとも また,いくつかの条件がどんな順序書いてあろうとも,かけ算を式で示すとすれば,(グループ大きさ)×(グループ個数)=(量全体大きさ)であることが,こどもにじゅうぶん理解されておらなければならない。この一般化ふじゅうぶんなために,6×5=30(円)というような式を書くのである。 と記述したが、正式な学習指導要領および学習指導要領解説にはこのような記述なされることはなかった。 1951年4月16日数学者遠山啓らを中心に数学教育協議会結成された。数学教育協議会は、かけ算を4 × 6 = 4 + 4 + 4 + 4 + 4 + 4 のように累加として導入するのはよくない主張した累加では4 × 1/3のような分数かけ算出てきたときに困る、かけ算は 1あたり量 × いくつ分 と考えるべきであると主張した[要出典]。 1972年1月26日朝日新聞によると、大阪府小学校で「6人に4個ずつミカンを配る」という問題出題されたが、「6 × 4 = 24 こたえ24こ」という答案の答にマルつけられ、式にバツつけられて「4 × 6」が正しいと指導されたという。これに異議をとなえ文部省質問状を送る親も現れかけ算順序の「正解」をめぐって論争起こった1972年遠山啓は、『科学朝日1972年5月号で、4 × 6だけを正解とすることについては否定的な見解示した。その理由は「6人に1個ずつミカンを配ることを4回繰り返すと、6個ずつのまとまり4つあると考えられるから」というものである1977年数学者森毅は、『科学朝日』に『数の現象学』を連載し5月号に「次元異にする3種乗法」として出版した中で、「大学入試などでは、『1人に1個ずつ配ると6人に対しては6個必要になる1人当たり4個にするためには、それを4回繰り返さなければならない』というように書かなければ大減点される。6人を6個/回に、4個/人を4回に転換するところを書かないと、それぞれ1割程度減点、わざわざ間接的にマワリミチしたことで1割ぐらい減点。」「日本は『4の6倍』式に4 × 6と書くが、ヨーロッパでは『6倍の4』式に6 × 4と書く、日本のほうが合理的」と主張した1984年数学者矢野健太郎は、『おかしなおかしな数学者たち』を出版した。この本で遠山啓についての項で、名古屋ラジオ局から、名古屋小学校で「ミカン4つずつ6人の人に配りたいと思う。ミカン全部でいくつあればよいか」という問題6 × 4 = 24答えた子どもがいて教師はこれを0点にしたということ聞かされ意見求められたのに対してどちらでも良い答えたことを記している。矢野理由付け1時間ほどかけて考えたが、一週間後に遠山啓話したところ、遠山啓そう言うように考える子がときどきあることおよび、カード配りとよんでいてもともと知っていたというエピソード述べている。 1993年数学者伊藤武広、上紘一、原田実は、小学生算数教え教師整数環Zの代数的構造などの数学的素養が必要であるとする論文出版した。そのきっかけは、筆者らのうち一人長男2年生の時、「3枚の皿にりんごが2個ずつのっている時全部でりんごが何個あるか」という問題に対して「3 × 2 = 6」と解答したところ担任教師が「答えの6は正しいけれども,式は3 × 2ではなく 2 × 3なければならない」と指導したことである。その後問答で、教師は「リンゴが2個ずつのっている皿が3枚あるから2個+2個+2個即ち2個 × 3 = 6個である。2+2+2は2の3倍即ち2 × 3であって3の2倍即ち3 × 2ではないこれを同数累加という。」「2(リンゴの数)が被乗数,3(皿の枚数)が乗数それぞれちがう意味を持っている(立場が違う)から2 × 3と 3 × 2は同じではない 」などの主張したことが報告されている。 1994年心理学者守一雄伊藤武広ら(1993)の論文について、なぜ環と加群知識必要な素養なのか示されていない批判する論文出版したこのなかで守一雄教師の対応は十分だった評価している。 2001年7月24日教育課程部会第2回)にて上野健爾京都大学理学研究科教授)は 特に今の教員免許状取得する課程において、特に小学校中学校において、専門課程勉強少な過ぎると思うんです。 きのうも、私の友人広島地方新聞投書送ってきたんですけれども、小学校で、長方形面積計算をしなさいというテスト出ていて、式が△になって答えが○になっていた。なぜ式が△になったというと学校では、長方形面積は縦×横だと教えたのに、その子は横×縦に書いていたからだというんですね。でも、長方形、横、縦というのは、ひっくり返せばどうでもなることですから、そんなことどうでもいいことですし、掛け算順番変えていいわけですからね。 皆さんお笑いになるけれども、現実起こっていることなんです私の息子場合も、中学校幾何問題で、わからないから聞かれたことがありまして、息子ノートを見ると、私が言ったことと違う書き方がしてあるんですね。どうして、さっき言ったのと違うのと聞いたら、教科書ではこう書いてある。それは、「ゆえに」か、「よって」か、「したがって」かの言葉違いなんです。だから、どう書いて正しいのにその教科書どおり書いておかない5点引かれるというんですね。 ばかげているんですけれども、これは先生本当にわかっておらないから、自信がなくて、つい教科書書いてあるものにしか○をあげられなくなってしまっているのだと思いますそういうこと改善するためにぜひ、何らかの対策打ってほしいと思います。 と述べた2007年数学者岩永恭雄は伊藤武広ら(1993)と守一雄(1994)の論文再検討する論文発表した岩永教師誤り断じるとともに、その原因考察し教科書および指導書記述不適切であることを指摘した2008年小学校学習指導要領解説算数編p147では (長方形面積)=(縦)×(横)(もしくは(横)×(縦)) と但し書き書かれている2008年京都大学田中耕治は、作問法によるパフォーマンス評価出題例として「4×8=32となるようなお話つくってください」を挙げ採点基準一つに、「乗数被乗数の意味区別されているか(とくに正比例型では「4」は「一あたり量」,「8」は「いくつ分」と区別されているか)」を示した。ここで正比例型は「一あたり量×いくつ分=全体量」で表される2011年1月15日 朝日新聞 夕刊花まる先生公開授業」では、「3 × 2だと3本耳のウサギが2羽いることになる。」「2 × 8だと2本足のタコが8ひきいることになる。」という授業肯定的にとりあげた。 2011年5月26日算数教育史家高橋誠は『かけ算には順序があるのか』を著し、「指導書は「式」と「計算」を区別して扱っており、「計算」では交換法則成り立つが「式」には順序に意味があるので勝手に順序変えることはできないとしている」と指摘したまた、このような指導に対しては以下のような批判なされていると指摘したかけ算には交換法則成り立つから、「いくら分 × 1あたり量」という順序書いてもよい。 仮に「1あたり量 × いくら分」の順序で書くとしても、どちらの数を「1あたり量」としてもよいそもそもかけ算は「1あたり量」と「いくら分」の積だけではない。 — 高橋誠、『かけ算には順序があるのか』 高橋は、小学校算数教育浸透しつつある、かけ算の式には順序存在するという指導法警鐘鳴らしている。本来「正しい」式の順序とはかけ算教え上で単なる道具だったはずなのに、教師たちは「数学的に算数的にも」根拠があると信じ始めているようにみえるからである。 2012年12月25日小林道正『数とは何か』が発行された。小林道正本書で (1あたり量)×(いくつ分)=(全体量)、(いくつ分)×(1あたり量)=(全体量) いずれでも良いことを明示的に述べる (p.44) とともに特定の順序で書かなくてはならない思っているひとが多いことについて困ったことであると評価した (p. 46)。 2014年青山学院大学教授坪田耕三は、九九三の段学習において、「(一つ分)×(いくつ分)=(全体)の式の意味確認していきたい。」としたのち、「チューリップがたくさありました。子どもが7人います。そこで,このチューリップ3本つくばったら,ちょうどなくなりましたチューリップは何本あったのでしょう。」という文章題では、式の約束にそって「3×7」と書くことを確認するよう主張した2014年志村五郎は、『数学をいかに教えるか』のなかで掛け算順序の章に4ページをさき、「結局どちらでもよいのにどちらが正しいかを考えさせるのは余計なあるいは無駄なことを考えさせているわけである」と指摘し、そんなことはやめるべきであると論じた

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