簿記
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/10 05:18 UTC 版)
会計 | |
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主要概念 | |
簿記 - 時価会計 現金主義 - 発生主義 環境会計 売上原価 - 借方 / 貸方 複式簿記 - 単式簿記 後入先出法 - 先入先出法 GAAP / US-GAAP 概念フレームワーク 国際財務報告基準 総勘定元帳 - 取得原価主義 費用収益対応の原則 収益認識 - 試算表 | |
会計の分野 | |
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財務諸表 | |
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監査 | |
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会計資格 | |
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歴史
貨幣経済の誕生・発展の中で貨幣の量の勘定・記録が必要となり、発明された[1]。
ローマ時代の古代彫刻の中に商業帳簿が彫られていることが確認されており、その歴史は古代へさかのぼると推察されている。ローマの他、ギリシャ・バビロニア・アッシリア・エジプトなどでも古代の時点で簿記が存在していたことが推定されている。しかし、その頃の簿記は、まだ単式簿記であった。
その後、14世紀から15世紀にかけてのルネサンス期にヴェネツィア商人によって複式簿記が発明されたと考えられている[3]。
イタリア人数学者ルカ・パチョーリ (Luca Pacioli) が1494年に出版した『算術、幾何、比及び比例要覧』(通称『スムマ』、原題: Summa de arithmetica, geometria, proportioni e proportionalità)の中で複式簿記が紹介されており、この本は組織的に行われた複式簿記の存在を記述する最古の文献として知られている。なお、この本で複式簿記が紹介されたことが、ヨーロッパ中に複式簿記が広まるきっかけとなった。
当時のイタリアでは、前期的商業資本の台頭に伴い、商品生産・商品取引が発展しつつあった。そのような経済状況の中で、それまで普及していた債権・債務の記帳法(擬人法)は継承しながら、商品勘定(口別商品勘定)などの物的勘定、資本勘定及び名目勘定(損益勘定)を導入して、組織的簿記が完成された。
現在では、単に「簿記」という場合、「複式簿記」を指すのが一般的である[1]。複式簿記においては、たとえば財貨で物品を購入した場合、物品を得たという事実と財貨を失ったという、取引における2側面を遺漏なく記録しようとする[3]。神聖ローマ帝国(現在のドイツ)の文豪ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテは、「簿記こそ、人間の精神が生んだ最も美しいものの1つである。」と述べている[3]。
日本では、1873年(明治6年)6月に福沢諭吉が日本初の簿記書である『帳合の法』初編を出版したのに続き、10月には加藤斌の『商家必用』、12月に大蔵省の『銀行簿記精法』と、西洋式簿記書が相次いで刊行され、洋式簿記の導入が始まっている[4]。1879年(明治12年)には福澤諭吉が創設した簿記講習所において簿記教育が始まった。当時はまだ「簿記」の訳語はあてられていなかったが、その経緯の詳細は別節「和訳の由来」で説明する。
令和の現在、日本では、福沢諭吉の簿記講習所に由来する簿記教育の伝統を専門高校である商業高等学校(商業に関する科目設置校)において文部科学省高等学校学習指導要領(平成 30 年告示)に基づき、高大連携を含む大学商学部水準の簿記教育(放送大学選科履修生・科目履修生含む)を教授している。日商簿記検定1級を取得し、税理士試験や公認会計士試験受験する等の簿記教育の広がりを見せている。日本各地の名門商業高等学校の卒業後の進路として、簿記教育の素養を生かし税務大学校普通科を経て税務職員として活躍している。
簿記の分類
単式簿記と複式簿記
簿記の表記方法(記帳法)には、単式簿記と複式簿記の2種類がある。詳しくは各項目を参照されたい。
正確かつ公正に記述できる方法が確立している複式簿記は、企業会計や公益法人会計・独立行政法人会計などに広く用いられている。簿記といえば、多くの場合は複式簿記を前提とする。以下、特に注釈がない場合、複式簿記を指すものとして論じる。職業としては税理士がいる。税理士試験(国税審議会が行う国家試験)では会計学に関連する出題科目は、簿記論と財務諸表論である。
経済活動による分類
経済主体(企業・政府など)の経済活動に応じた簿記の方法論がある。代表的なものに商業簿記と工業簿記がある。
商業簿記
完成している商品を仕入れて販売する会社の財務状態を管理するための記帳方式。最も基本的な簿記である。ただし、どの会社にも共通する決算に関する会計処理や、固定資産の償却処理なども「商業簿記」として取り扱うことがある。
工業簿記
材料を仕入れ、製造し、製品を販売する会社の財務状態を記録・計算・報告するための記帳方式。その製品を作るために必要な経費を材料費や製造作業員の賃金、製造機器のランニングコストなどから算出するには複雑な計算手続きを必要とするため原価計算の理論を主に用いる。簡便法としての商的工業簿記も存在する。
その他の応用簿記
基本的な簿記である商業簿記に対して、それ以外の簿記のことを応用簿記と称する。
- 農業簿記:工業簿記のように原価計算を伴う。個人事業主の多い日本の農業では、家計との区別をつける意味合いも持つ。
- 林業簿記: 農業簿記と同様に、第一次産業である林業における簿記。
- 漁業簿記: 漁場料や餌代といった経費を特徴とする漁業における簿記。
- 建設業簿記: 大規模な資金と労働力、そして長期間掛かる建設業のための簿記である。特徴は「建設業会計」参照
- 銀行簿記: 貨幣を商品とする企業と考えることができる。特徴は「銀行簿記」参照
- 官用簿記: 収入は税金であり、財務状況(収支)をみるために主に使われる。単式簿記が主流。
- 組合簿記: 非営利団体であり、収支均衡に着眼点がある。
- 農協簿記: 農業協同組合で使われる。農協で使う様々な業種をカバーする。
- 家計簿記: いわゆる家計簿。貯金以外の現金の収支を記した単式簿記が多い。
- 社会福祉会計簿記:社会福祉法人で使用する、特殊な処理などがある「社会福祉法人会計基準」をもとにした簿記。
注釈
- ^ 家計簿や小遣い帳も単式簿記といわれる簿記の一種であるといえる。浜田(2005)p.21
出典
- ^ a b c d 浜田(2005)pp.20-21
- ^ “コトバンク- 簿記”. 2019年1月23日閲覧。
- ^ a b c 浜田(2005)pp.22-23
- ^ “洋式簿記事始め130周年紀念”. 複式簿記がやってきた!. 一橋大学 (2003年). 2012年1月12日閲覧。
- ^ 西川 (1964), pp.37-38
- ^ 福澤諭吉. “福澤全集緒言”. 2012年1月12日閲覧。
- ^ 西川 (1964), pp.39-40
- ^ 西川 (1964), p.41
- ^ 西川 (1964), pp.41-42
- ^ “馬耳蘇氏記簿法”. 複式簿記がやってきた!. 一橋大学 (2003年). 2012年1月12日閲覧。
- ^ a b “銀行簿記精法”. 複式簿記がやってきた!. 一橋大学 (2003年). 2012年1月12日閲覧。
- ^ a b 岩田康成、米田正巳、石塚一彌、井手健二 (2009年3月). “複式簿記の日本への導入とその影響” (PDF). Fuji business review (1), 74-79, 2009-03. 東京富士大学. 2012年1月12日閲覧。
- ^ 西川 (1964), p.42
- ^ a b 西川 (1964), p.43
- ^ 西川 (1964), p.44
簿記と同じ種類の言葉
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