海人
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/03 06:40 UTC 版)
石川県能登地域
石川県では外浦沿岸各地で潜水漁がおこなわれてきたが、特に能登半島の輪島市では最も古くから潜水漁が行われてきた[19]。輪島の海女の起源は福岡県宗像市鐘崎を出自とする人々とされる[19](1569年に鐘崎から13人の男女が能登に渡来したと伝わる[20])。
能登地域の潜水漁は特に輪島市舳倉島海士町の人々によって行われている[19][20]。輪島市海士町地区は1集落の海女の数では日本国内で最多である[20]。海士町自治会は地先漁場である舳倉島及び七ツ島の共同所有者となっており、自治会が漁業権や漁場の管理を行っている[19]。海女は磯入鑑札を購入して操業する[19]。
舳倉島で操業する海女には舳倉島に住む定住海女と輪島から通うカヨイアマに分けられる[19]。
形態
石川県の能登地域の海女漁業の形態には、陸から泳いで漁に向かうカチカラまたはオカダチ、介助者を伴うイソブネまたはイソノリ、親類や友人との乗合船で操業するノリアイがみられる[19]。このうちイソブネ(イソノリ)は2008年(平成20年)を最後に従事者がいなくなった[19]。
一回の潜水をヒトカシラといい、一回の潜水時間は45秒程度である[19]。輪島市では一つのタライやチューブでつながった二人が交互に潜水作業を行うアイボウという形態がみられ、交互の休息と海中での採捕作業の安全確保が意図されている[19]。
資源保護のため、休漁日の設定(7月~9月の第2・第4土曜日)、操業時間の制限(1日4時間)、禁漁区の設定、種苗放流、藻場保全活動を行っている[20]。
磯着
能登地方ではウェットスーツは1960年(昭和35年)頃から普及し始め、季節ごとに厚さの異なるものを着用するようになっている[19]。錘(重り)として自転車のチューブに鉛を通したものを腰に付けている[19]。
能登地方では1960年代前半まで「サイジ」という独特のふんどしを穿いていた[21]。
道具
信仰
正月の起舟祭では水中眼鏡やオービガネを神棚に供える風習がある[19]。また、漁期以外の期間、オービガネを神棚に供える家もある[19]。
- ^ a b c d e f g 大喜多甫文. “近世のアマ潜水漁業”. 歴史地理学 (歴史地理学会) (131) .
- ^ 男性の海士、女性の海女の分布を調査した資料によると、日本の西南部(沖縄県、宮崎県、鹿児島県)、東北地方(岩手県、宮城県・福島県)から茨城県にかけてはほとんどが海士ばかり、その両地域の中間に海士・海女が併存し、千葉県・静岡県・三重県・福井県・石川県・福岡県では海女が優勢を示していたという(最上、1977年、154頁)。
- ^ 『白水郎』 - コトバンク
- ^ 山岡俊明「安房の海女・海士」、森浩一編著、1995年、422頁。
- ^ a b 高橋美貴、斎藤善之(編)『海と川に生きる』 吉川弘文館 <身分的周縁と近世社会> 2007年、ISBN 978-4-642-06558-0 pp.19-42.
- ^ 鈴木 清史 (2010年). “オーストラリアの戸惑い : 2つの巨大貿易国のはざまで (日本とアジアの相互の照射” (PDF). 静岡大学人文学部アジア研究センター. 2020年12月17日閲覧。
- ^ 日本列島“海女さん”大集合 ~海女フォーラム~(鳥羽市)
- ^ 海女:「無形世界遺産登録を」三重・鳥羽でフォーラム(毎日新聞 2009年10月4日)… 参加した地域:岩手県久慈市小袖海岸、千葉県南房総市白浜町、石川県輪島市、福井県坂井市三国町、三重県鳥羽市、三重県志摩市、徳島県美波町、福岡県宗像市鐘崎、長崎県壱岐市、熊本県天草市、韓国済州島
- ^ 2014年3月20日中日新聞朝刊3面海女登録韓国「抜け駆け」ユネスコ遺産近く申請
- ^ 輪島 海女の漁
- ^ 済州の海女を紹介する写真、日本で展示へ(朝鮮日報日本語版 2009年10月1日)
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- ^ 田辺悟「舳倉島の海女」、森浩一編著、1995年、426頁。
- ^ かすりはんてんは、他の地域では磯から上がった時の普段着としても用いられることが多かった。
- ^ 水産庁が1978年に実施した調査では、26都道県で9134人の海女が確認されている
- ^ “海女:高齢化進み激減 「10年後消滅」の懸念も”. 毎日新聞. (2010年12月18日)
- ^ 海女センターのご紹介|北限の海女
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