増山江威子
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/02/22 09:13 UTC 版)
ますやま えいこ 増山 江威子 | |
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プロフィール | |
本名 | 政田 知子(まさだ ともこ)[1] |
性別 | 女性 |
出身地 | 日本・東京府(現東京都)[2] |
生年月日 | 1936年4月22日(86歳) |
血液型 | O型[3] |
身長 | 155 cm[4] |
職業 | 女優、声優、ナレーター[5] |
事務所 | 青二プロダクション[6] |
配偶者 | あり |
公式サイト | 増山 江威子|株式会社青二プロダクション |
声優活動 | |
活動期間 | 1960年代 - |
ジャンル | アニメ、吹き替え |
女優活動 | |
活動期間 | 1957年 - |
ジャンル | テレビドラマ、舞台 |
来歴
4人姉妹の末っ子として生まれる。小さい頃はゆっくりした話し方で、教師に「あなた、ちゃんとお話しできないの」と言われショックを受けるなど、次第にその話し方にコンプレックスを持つようになる。12歳の時、それを改善しようと考えていたところ、義理の兄[注 1]の紹介もあり新児童劇団(現在の劇団新児童)に所属。麻生美代子に師事する。そこでコンプレックスを克服し、自然と演技に興味を持つようになる[7][8]。
15歳の頃、児童劇団に所属する年齢でもなくなったため毒蝮三太夫・稲吉靖司らと劇団山王を立ち上げる[4][10]。数年後、浅利慶太に「女優が少ないから」と頼まれ影万里江と共に劇団四季に移籍[4][11]。四季にラジオドラマやアテレコの仕事が入って来るうちに声の仕事に興味を持ち始める。
その後、家庭や子育てを仕事と両立させるため、舞台などよりは比較的短時間でできる声優業に専念するようになり、1960年代から青二プロダクションに所属[12][13]。
2017年、『東京アニメアワードフェスティバル 2017』において「アニメ功労部門」を受賞[14]。
2021年、第十五回声優アワードにて「功労賞」を受賞[15]。
特色
少女役から大人の女性役まで演じる。藤子不二雄作品では、『怪物くん (第1・2作)』の怪子ちゃん役、『パーマン (第2作)』の星野スミレ(パー子)役を演じ、『オバケのQ太郎(第3作)』のU子役では独特なだみ声も披露した。また、ハンナ・バーベラ作品にも複数出演している[13]。吹き替えではリー・レミックを数多く担当している[17]。
エピソード・人物
宝塚歌劇団の大ファンであり、2010年代は宝塚に住んでいた時期があった[18]。
児童劇団時代に麻生の引率で劇団東童の公演を見学、そこで王子様役を演じた俳優に憧れ「あの人と同じ舞台に立ちたい」と思った。その俳優こそが後に40年近く共演し続けた東童時代の納谷悟朗だった[19]。
同年代の仲間からは「トンチさん」と呼ばれることが多い。井上真樹夫によると、本名が「トモコ」であるため、かなり早い時期からそう呼ばれていたという[20]。
アニメソングの歌唱も数多く担当していた。これは『ひょっこりひょうたん島』で出会った宇野誠一郎が増山をよく起用するようになったためで、当初は「私でいいの?」と思ったが、現在では「とてもうれしいことだった」と回想している[7]。
近年の声優志望の人に対しては、読む時にキャラクターを想像することで役作りに生かせるため、様々な本を読むことが大事だと発言している[7]。
仕事に対する姿勢
アニメのアフレコの際は「絵が主役」であり、「絵があるからこそ声もピッタリ合う」との考えを持っている。また、絵がないと演じてきた色々なキャラクターの声が混ざってしまうので、絵もなく突然「○○の声をやって下さい」と言われるのは苦手だと発言している[7]。
アニメのアフレコの際に絵がほとんど入らないことに苦言を呈している。ある作品ではこのことが原因で台詞を入れ忘れたように見えるシーン[注 2]が完成してしまった他、絵と演技が一致しない場面が放送され「何で増山さんは何年もやってるのにこれ(演技)が出来ないのか」と投書が来てしまい、現場に「恥はかきたくない」「何とか収録時には絵が欲しい」と頼んだこともあるという[21]。
以前はテレビ番組のゲスト出演など顔出しの出演も多かったが、近年は「みんなの知ってる私の声はハニーや不二子などの若い声。そんな若いキャラクターのイメージを壊したくない」という理由で顔出しをあまり好んでおらず[7]、『大胆MAP』では顔出しを拒否するような発言もしている[13]。ただし、同番組ではアフレコをしている様子を遠目で録るという条件で承諾し出演した。2019年9月21日放送のNHK BSプレミアム『セカンドの美学』でも同様に顔を映さないことを条件にインタビュー出演した[22]。
キューティーハニー
1973年放送の『キューティーハニー』で、初代ハニーの声を担当。リメイクである『キューティーハニーF』では友情出演として、神崎美津子の声を担当した。
増山によると、それまでは可愛らしい役柄を演じることが多かったため、ハニーはセクシーな役を担当するようになる転機だったという[23]。また、ハニーはアンドロイドであることを意識して演じていたため、脱いでも「いやらしい」と思ったことはなかった[7]。
2005年に再びハニーを演じた際は、「こんないい作品に出会えたということはそれだけで嬉しいものですね」とコメントしている[24]。
峰不二子
1977年の『ルパン三世 (TV第2シリーズ)』より、峰不二子役を沢城みゆきに交代する2011年まで長年にわたり演じた。
元々、2本製作された『ルパン三世 パイロットフィルム』では増山が不二子を演じており『ルパン三世 (TV第1シリーズ)』にも参加予定だったが、実際に放送されると録音監督の田代敦巳から謝罪があり、何故か不二子役が二階堂有希子に代わっていたという[25]。一方、『TV第1シリーズ』の演出を担当したおおすみ正秋はこのことに関して後に「ルパンが不二子に挑みかかる場面があるんですよ。ところがその場面になるとシーンとしちゃって」「『どうしたの?』って聞くと『どうしてもできません』って」と、増山がお色気シーンをできなかったため仕方なく変更したと発言している[26]。その後、第14話「エメラルドの秘密」でキャサリン・マーチン役としてゲスト出演、キャサリンは前述の二階堂演じる不二子と頻繁に会話を交わしており、初代・二代目両不二子声優による共演回となっている。
その後も不二子への思いが強かった増山は、『TV第2シリーズ』放送前のオーディションに参加[注 3]。見事不二子を担当することになったという[7][27]。
『パイロットフィルム』が一般に知られていなかった当初は、「何故不二子が二階堂さんじゃないんだ」という抗議の投書が殺到。しかし日本テレビのスタッフからこれを聞いた増山は、「どうあがいても二階堂さんにはなれないから、私の持ち味でやるしかない」と発奮して演じ続けたという[12]。
増山は「不二子はすべての理想を兼ね備えた女性であり、いつも憧れている」と語っており[28]、不二子のファンは女性が圧倒的に多いと語っている[27]。ルパンについては、裏切っても不二子のことを想う所が「男性の可愛さみたいで、好きですネ」と語っている[29]。自身が演じた中で思い出深いルパン作品には『ルパン三世 カリオストロの城』を挙げている。
長年共演してきたレギュラー声優陣について、プライベートでも頻繁に交流があったと思われがちだが、増山曰く「実際には私語も少なくみんなバラバラで大人の関係。ただし、目的が一緒だとバッとまとまる」という、本当に演じるキャラクターのような関係だったという[7]。
2019年に原作者のモンキー・パンチが亡くなった際は、「役者は作品との出会いが全てです。私の財産となった『峰不二子』に出会えたこと。モンキー・パンチ先生に感謝しています」とコメントしている[30]。
なお、1995年にルパン三世役の山田康雄、2013年に銭形幸一役の納谷、2019年に石川五右ェ門役の井上、2022年に次元大介役の小林清志が亡くなったことで「『TV第2シリーズ』から『PARTIII』まで、ルパンファミリーを演じた声優陣」で、最後の1人となった。
バカボンのママ
『天才バカボン』はこれまでに5回テレビアニメ化されているが、主要キャストが変わる中、バカボンのママだけは4作目『レレレの天才バカボン』まで一貫して増山が演じていた[注 4]。これは原作者である赤塚不二夫の希望であり、4回目のTVアニメ化に際して、赤塚からの唯一の希望が「ママの声だけは(増山から)変えないで欲しい」だったという[13][注 5]。
増山は私生活でも母親だったことから、今でもママを「私そのもの」だと思っているという。また、初めてママの絵を見た際「私、絶対ピッタリだわ」と思ったという[7]。
ある番組の収録で青梅赤塚不二夫会館へ行った際、壁に様々な赤塚のコメントが貼ってある中で実際に「ママは絶対増山さんじゃなきゃダメだ」と書かれているのを見つけた時は、「自分が勝手に言ってる訳ではなく、本当に原作者である先生に認められていた」という気持ちでとてもうれしかったという[7][31]。
初代パパの声優だった雨森雅司について「もうね、普段の雨さんもバカボンのパパみたいなの」と語り、後任のパパ役は役を作らないと演じられない中、雨森は「持っているものそのもの」で演じていたと発言している[32]。
注釈
- ^ 姉の夫。当時児童新聞に関する仕事をしており児童劇団とも交流があった。
- ^ 笑っている絵に笑い声がなかったという。そのため、後にインタビューで「当日でも呼んで下さればよかったのに」と発言している。
- ^ 『TV第2シリーズ』では、不二子の担当声優を変更することを日本テレビから要求されていた。このことは、飯岡順一の著書『私の「ルパン三世」奮闘記 アニメ脚本物語』で語られている。
- ^ ただし、第一作において1回だけ(第70話「パパとママがケンカをしたのだ」)増山に代わり北浜晴子が演じている。
- ^ 原作者死去後に制作された『深夜!天才バカボン』では日髙のり子が担当している。
- ^ 特定の名前は設定が無いものの、崩壊に巻き込まれそうになった始を助けて1000年女王(弥生)の元へ導いたり、弥生の遺体を入れた棺を引いて歴代女王たちと共にラーメタルに向かって帰星する直前にラーメタル人を代表して始に励ましと希望の言葉をかけるなど、戦闘には加わらないが要所要所で重要な役割を担っている。
出典
- ^ 『声優名鑑』成美堂出版、1999年、262頁。ISBN 4-415-00878-X。
- ^ a b c “増山江威子 のプロフィール - allcinema”. 2019年7月31日閲覧。
- ^ “増山 江威子 – seigura.com”. 2019年7月31日閲覧。
- ^ a b c “青二プロダクション 増山 江威子”. 2019年7月31日閲覧。
- ^ a b “増山 江威子”. タレントデータバンク. 2020年6月11日閲覧。
- ^ a b “増山 江威子|株式会社青二プロダクション”. 2020年6月11日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j 2017年6月『NHK ラジオ深夜便 時代を創った声』出演時の発言より
- ^ 増山江威子 2019, p. 4-9.
- ^ 『日本放送年鑑'68』p.732
- ^ 増山江威子 2019, p. 10.
- ^ 増山江威子 2019, p. 13.
- ^ a b 神谷明「増山江威子」 『みんな声優になりたかった 神谷明と25人の声優たち』主婦の友社、1994年1月6日、193-202頁。ISBN 4-07-214333-2。
- ^ a b c d 【声優の履歴書】第53回 『ルパン三世』シリーズの峰不二子(2代目)を演じた・増山江威子 - リアルライブ
- ^ TAAF2017「アニメ功労部門」顕彰者決定
- ^ “第十五回 声優アワード | //声優アワード//Seiyu Awards//”. www.seiyuawards.jp. 2021年3月15日閲覧。
- ^ 『声優の世界-アニメーションから外国映画まで』朝日ソノラマ〈ファンタスティックコレクション別冊〉、1979年10月30日、102頁。
- ^ 増山江威子 2019, p. 39.
- ^ 増山江威子 2019, p. 49-51.
- ^ “唐沢俊一氏のツイート”. 2022年6月26日閲覧。
- ^ 本人のツイートより(2019年3月27日)
- ^ 増山江威子 2019, p. 48.
- ^ “NHK「セカンドの美学」で峰不二子特集、増山江威子&沢城みゆきが魅力を語る”. コミックナタリー (Natasha). (2019年9月18日) 2019年12月7日閲覧。
- ^ ルパン三世DVDコレクション 7 2015年 05/05 号
- ^ 超豪華5大特典付で「Re:キューティーハニー コンプリートDVD」発売
- ^ 増山江威子 2019, p. 33.
- ^ 「ルパン三世連載開始35周年記念スペシャル企画!モンキー・パンチ、大塚康生、おおすみ正秋、納谷悟朗、特別対談」『ルパン三世officialマガジン』、双葉社、2002年8月。
- ^ a b 『ルパン三世 Master File』THE PERFORMERS -その声の魅力- より
- ^ 『ルパン三世 くたばれ!ノストラダムス』映画パンフレットより
- ^ 『ルパン三世 バビロンの黄金伝説』映画パンフレットより
- ^ 「親であり戦友でした」 "ルパン"たちが追悼 - 日本経済新聞
- ^ 増山江威子 2019, p. 36.
- ^ 『僕らを育てた声 増山江威子編』 アンド・ナウの会、2019年[要ページ番号]
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- ^ “アニメ「暗黒家族 ワラビさん」7月配信、山田孝之らが愚かな一家を演じる(動画あり) - コミックナタリー” (2021年7月7日). 2021年7月7日閲覧。
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