合板 合板の概要

合板

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/24 04:59 UTC 版)

合板の構造

概説

英語の「plywood」(プライウッド)の「ply」(プライ)とは、層がいくつも重なった状態、つまり「積層」「多層」のことを指しており、「plywood」で「積層木材」を意味する。

日本では、かつては合板を「ベニヤ板」(ベニヤいた)又は「ベニア板」(ベニアいた)と呼ぶことが多かった。「veneer」(ベニヤ、ベニア)は薄くスライスした単板(突板)のことで、「ベニヤ板」は「ベニヤ」から成る「板」ということになるが、「ベニヤ板」のことを「ベニヤ」を略すこともあり、両者の区別は厳密ではなかった[1]

合板は、材木を薄くスライスしてできたベニヤ(単板)を1枚ずつ繊維方向に直交させながら接着して積層したものである[2]。一般に、反り(そり)を軽減するためにさまざまな工夫がされている(後述)。近年の合板では、最も一般的には、1~3mm程度のベニヤを多数枚、大抵は奇数枚、繊維方向が90°に、つまり直交するように、互い違いに重ねて接着(より詳細に言うと、大抵は 熱圧接着)されて多層構造になっている。稀に繊維方向が45度ずつ異なる層を重ねたものなどもある。

分類、種類
さまざまな分類法がある。国により分類法も異なる。材料となった樹木の種類による分類、材料となった単板の仕上がりの状態による分類、強度や剛性による分類、用途による分類、放出されるホルムアルデヒドの量による分類などがある。→#分類や規格など
歴史
遡れば古代エジプトから合板は用いられてはいた。ただし古代や中世ではたいした量ではなく、大量に製造され消費されるようになったのは近代以降である。1797年にはイギリスの技師によって合板製造装置の特許が申請された。→#歴史
反り軽減と 単板の枚数や層数
材木は湿度や温度の変化や経年変化などによって大きな反り(そり)が発生するようでは、一般に、とても使いづらいものとなる。よって合板の設計や製造では反りを軽減する工夫がされている。

合板を構成している層の数は、大抵は奇数である。(片面だけ装飾用の薄板や化粧紙など貼ったものは除く)

ひとつの単板を一種の「中心」として想定して、その両となりから、対称的に、繊維の向きを直交させつつ配置してゆく、というのが合板設計における大原則である。対称性を確保することで反り(そり)を軽減したり、寸法安定性を確保する。

では、突板を偶数用いて合板を作りたい場合はどうするかと言うと、たとえばJAS認定を取得している市販の構造用合板の中には、単板の枚数が4枚や6枚など偶数になっているものも一般的に市販されているが、この場合、中心の2枚の単板は、繊維の向きを同じ方向にしてあり、合板の厚み方向から見た繊維の向きの分布は、やはり中心対称である。

同方向に繊維が走っている中心部の単板2枚は、力学的には1層とカウントすべきであるから、このような合板は、単板の枚数は偶数でも、層数に着目するとやはり奇数である。 なお「接着剤の塗布工程での都合を根拠に、単板の枚数を奇数にすれば単板の両面にいっぺんに接着剤を塗布することで生産工程が簡略化できるから、単板の枚数を奇数にしているのだ」といった主旨の説明がなされることもあるが、これは原因と結果を取り違えた不適切な解説であり、正しくない。合板製造工程における接着剤塗布の方法には複数あり、片面に塗布する工程を採用している工場もある。この場合、上記のような合理化は成り立たないし、現実にも、4枚や6枚、8枚など、偶数枚の単板を用いてつくられたJAS認定の構造用合板(中心の2枚は繊維を同じ向きにした)が、市場で普通に販売されている。

なお、繊維の向きを直交だけでなく45度にした層を加えた「斜行型合板」もその性能の高さは古くから研究されており、量産化を目指しつつ試作したものにおいても、従来の合板よりせん断性能に優れた結果が報告されている[3]。異方性のある木材をよりよく使いこなす上で、このような研究は有望な技術をもたらすと期待されているが、斜め向きの単板を安価に量産することにまだ難しい部分があり、さらなる研究が求められている。

歴史

合板は数千年前から作られており、紀元前3500年前の古代エジプトに、単板を互い違いに重ね合わせた合板から作られた製品が産出されている。元々は良質な木材の不足のために、合板は作られた。品質の劣る木の表面に、薄くスライスした木材を接着剤で貼り付けた。構造的な利点は偶然のものだった。合板を発明したこの方法は、歴史の中で繰り返された。例えば、アイルランドのシェリダンなどの家具メーカーの多くが合板を使用した。

1797年にはen:Samuel Bentham サミュエル・ベンサム(イギリス海軍技術者)が、合板製造のための装置についての特許の申請をした。

1837年頃にはサンクトペテルブルクで機械の製造を手がけていた実業家イマニュエル・ノーベル(アルフレッド・ノーベルの父)によって、針葉樹の丸太からロータリーレース(丸太をかつら剥きする機械)によって得られた単板を使った合板の発明がされた[4]。イマニュエルは発明で財を築いたため、アルフレッドに複数の家庭教師をつけ、化学をさらに学ぶためにパリやアメリカへの留学する資金ともなった。

19世紀中盤に最初のロータリーレース機械がアメリカ合衆国に設置されて以降、合板は安価な建築資材として世界中に広まっていった。

日本では、1907年に浅野吉次郎が独自にロータリーレースの機械を開発[5]。拠点であった中京地方を中心として、合板機械の製造や合板の生産が非常に盛んになった。特に、名古屋堀川沿いには、名古屋港からの木材を加工する大小の合板工場が林立していた。1950年代に尿素系の接着剤が普及するまでは、剥離の発生など粗悪なイメージを払拭することができなかった。


  1. ^ n.a. 著、日本建築学会 編『建築学用語辞典』岩波書店、1993年12月6日、665頁。 
  2. ^ 堀岡邦典「ごうはん 合板」『新版 林業百科事典』第2版第5刷 p232 日本林業技術協会 1984年(昭和59年)発行
  3. ^ 河村進, 大畑敬, 村田功二「斜行型合板を用いた耐力壁の面内せん断性能」『材料』第58巻第4号、日本材料学会、2009年、280-285頁、doi:10.2472/jsms.58.280ISSN 0514-5163NAID 1300001044352021年7月1日閲覧 
  4. ^ The Man Who Made It Happen ? Alfred Nobel”. 3833. 2012年5月3日閲覧。
  5. ^ 現代の合板は誰が発明したか ミサワホーム総合研究所 2017年9月3日閲覧
  6. ^ [1]
  7. ^ a b c d e FamilyHandyman, "Understanding Plywood Grades"
  8. ^ 合板の日本農林規格” (PDF). 農林水産省. 2020年2月6日閲覧。
  9. ^ 合板の日本農林規格の一部を改正する件 新旧対照表” (PDF). 農林水産省. 2020年2月6日閲覧。
  10. ^ 木材製品の規格と品質基準”. 日本貿易振興機構. 2020年2月2日閲覧。
  11. ^ (財)日本住宅・木材技術センター、2008年、木材需給と木材工業の現況(平成19年度版): 93-109。
  12. ^ 農林水産省大臣官房統計部、2009、平成20年木材統計
  13. ^ 木材工業ハンドブックから引用。監修者:独立行政法人 森林総合研究所
  14. ^ 関口洋嗣, 田中邦明「南極昭和基地第10居住棟パネル合板の経年変化と接着耐久性」『南極資料』第46巻2A、2002年9月、504-511頁、doi:10.15094/00009244ISSN 0085-7289NAID 120005510183 
  15. ^ インテリア・デザイン 段谷産業株式会社 耐久性合板 実用新案 1997年B27D 登録番号2558301号


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