HDR
「HDR」とは・「HDR」の意味
「HDR」とは幅広い輝度を表現できる映像表現技術のことで、スマホやテレビ、ゲームなど様々な映像分野で取り入れられている。「High Dynamic Range(ハイダイナミックレンジ)」の頭文字をとった略語で、表現できる輝度の範囲は10⁵となる。通常の映像では「SDR」と呼ばれる「Standard Dynamic Range(スタンダードダイナミックレンジ)」が用いられており、表現できる輝度の範囲は10³となる。人間の目で近くできる輝度は10¹²とされており、「HDR」はより人間の視覚に近い陰影を表現できる。「HDR」と「SDR」では視覚的にどのような違いがあるかというと、明暗の差が激しい場所での撮影をすると一目瞭然である。暗い部屋の中から明るい屋外の撮影をした場合、「SDR」では屋外の景色が白飛びしてしまったり、室内の景色が黒つぶれしてしまったりするが、「HDR」で撮影すると、白飛びや黒つぶれのない肉眼で見た景色に近い画像に仕上がる。そのため、「HDR」は逆光や水辺などでの撮影に向いている。ただし、色鮮やかな被写体だと発色が抑えられのっぺりした印象になってしまったり、人の顔などはリアルに写りすぎシミやしわが目立ってしまったりするため、「HDR」撮影には向かないことがある。
「HDR」は輝度の幅が広くリアリティのある画像・映像が表示できることから、スマホやテレビのディスプレイにおいて採用されている。また、ゲーミングモニターにおいても「HDR」対応のものが発売されている。ゲーミングモニターにおいては、「HDR400」や「HDR800」など、輝度が数字で表示されている。数字が大きいほど輝度が高く画像も鮮明になる。ただし、輝度が高くなるほどゲーミングモニターの価格も高くなる傾向があるうえ、GPUの負荷も増える。画質が上がるもののリフレッシュレートが下がるため、競技ゲームではプレイに支障が出ることもある。そのため、必ずしも輝度の高いゲーミングモニターが良いというわけではない。
高画質の画像や映像を表示することにかけては、「HDR」と「4K」が比較されることが多い。どちらも高画質を表示できるが、「4K」と「HDR」では得意とする分野が異なる。画質の精度を上げる要素には、解像度(画素数、映像のきめ細やかさ)、ビット深度(色・グラデーションのきめ細やかさ)、フレームレート(動きの滑らかさ)、色域(色彩の鮮やかさ)、輝度(映像の明るさ、ダイナミックレンジ)の5つがあり、4Kは解像度に優れており、フルハイビジョンの4倍の解像度を誇る。「HDR」は輝度に優れており、4Kと合わせることでさらに精度の高い画像・映像を表現できる。
「HDR」は、画像と映像では作成方法が異なる。画像の場合は暗い画像と明るい画像を複数枚記録し、それらを合成して肉眼に近いリアリティのある画像を作成するが、動画の場合は輝度レンジを拡張することでリアリティのある動画を作成する。iPhoneにおいては、「HDR」の画像撮影は2010年に発売のiPhone4から搭載している。「HDR」の動画撮影においては、2020年に発売されたiPhone12以降から搭載されるようになった。リアルな映像を撮影できるものの、「HDR」の動画はファイルサイズが大きくなるため「HDR」での撮影をメインとする場合は保存容量が大きい機種を選ぶ必要がある。「HDR」の画像や映像によるコンテンツを制作するには、高性能のカメラで撮影するだけでなく、輝度を適切に評価できるモニター環境が必要になる。
「HDR」の熟語・言い回し
HDR写真とは
「HDR写真」とは、「HDR」機能をオンにして撮影された写真のことを指す。スマホのカメラに搭載されている機能で、陰影の深い肉眼に近い写真を撮ることができる。「HDR写真」のメカニズムは、暗い写真と明るい写真を複数枚記録し、合成して明暗のはっきりした合成写真を作るというものである。合成の精度はスマホのスペックによって違ってくるため、スペックが高いスマホの方がより肉眼に近い画像を作成することができる。「HDR写真」で気をつけなければいけないのは、手振れである。輝度の少ない場所で撮影するとぶれやすくなるため、しっかりと構えて撮影する必要がある。
また、スマホで「HDR写真」を撮った場合、同じ写真が2枚保存されることがある。これは、厳密には同じ写真ではなく、「HDR写真」と「SDR写真」が保存されている状態である。「SDR写真」で撮ったつもりが「HDR写真」のみが保存されていたというミスを防ぐため、「HDR写真」と「SDR写真」の両方を保存するようデフォルトとして設定されているからだ。「HDR写真」のみを保存したい場合は、設定を変更することで「HDR写真」のみを保存できる。
HDR規格とは
「HDR規格」は、「PQ方式」と「HLG方式」の大きく2つに分けられる。「PQ方式」は「Perceptual Quantizer(知覚量子化)」のアルファベットの頭文字をとった略語で、映画やWeb配信に適している。また、「PQ方式」には「HDR10」や「Dolby Vision」、「HDR10+」という3つの規格がある。「HLG方式」は「Hybrid Log-Gamma」のアルファベットの頭文字をとった略語で、テレビ放送に適した「HDR規格」である。
「PQ方式」と「HLG方式」の違いは、「PQ方式」が人間の視覚特性に基づく新たなガンマカーブが特徴であるのに対し、「HLG方式」はSDRテレビと互換性のあるガンマカーブであることがあげられる。また、「PQ方式」は輝度を絶対値で扱うため表示デバイスによらず一定であるのに対し、「PQ方式」は相対値で扱うため表示デバイスによって変動する。そして、「PQ方式」の開発元がDolbyであるのに対し、「HLG方式」の開発元はNHKとBBCである。
・「HDR10」
「HDR10」はUHD Blu-rayで採用されている規格で、カメラで撮影された「HDR」映像と区別するために加えられた規格である。「SDR」よりも最高輝度が10倍~100倍まで拡張している。
・「Dolby Vision」
「Dolby Vision」は、「HDR10」と同様に最高輝度が「SDR」の10倍~100倍であるうえに、「HDR10」よりも細やかに階調を表現できるため、映画撮影などで用いられる規格である。
・「HDR10+」
「HDR10+」は「HDR10」拡張規格で、暗さと明るさが動的に移り変わる「ダイナミックメタデータ」を取り扱うことができる。そのため、目まぐるしく変わるシーンにおいても輝度を動的に変動させられる。
・「HLG」
「HLG」はNHKとイギリスのBBCが共同開発した規格で、最高輝度は「HDR10」と同等である。放送電波に乗せやすいようデータ量を軽くして開発されており、HLGに対応したテレビであればHDR映像が表示される。「HLG」にさえ対応していれば、HDR非対応のテレビであっても性能に応じた映像が表示できるが、「HLG」に非対応であると「HDR10」対応のテレビであってもHDR映像は表示できない。
HDR設定とは
「HDR設定」とは、「HDR」の設定をONもしくはOFFにすることである。「HDR」は肉眼に近い画像や映像を表示できる機能であるが、必ずしもONの方が良いというわけではない。HDR非対応のゲームや動画、Webサイトにおいて「HDR」を有効にした場合、色味が変わってしまう。画面が暗くなり見にくくなったり、プレイしにくくなったりする。また、動画配信やスクリーンショット撮影においても、「HDR」をオフにしておかないとHDR画像・映像に対応していない機種では「HDR」が無効化されてしまったり、無理やり変換されて色味が変わったりしてしまう。
スマホやパソコンなどの「HDR設定」をする場合は、機種によっても設定方法が異なる。スマホの場合は、設定からカメラアプリに入り、「HDR」をタップしてONもしくはOFFを決定する。パソコンの場合は、設定画面からシステムに入り、ディスプレイを選択して、「HDR」を有効にする、もしくは無効にするを選ぶ。
エッチ‐ディー‐アール【HDR】
読み方:えっちでぃーあーる
エッチ‐ディー‐アール【HDR】
hdr
HDR
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/11/10 03:16 UTC 版)
HDR
- 人間開発報告書 (Human Development Report)
- ハイダイナミックレンジ (High Dynamic Range) - 分野により技術は異なるが、テレビのHDRは輝度の幅を拡大する技術である[1]。特に2016年は対応テレビが次々と発売され、HDR元年といわれた[2]。
- ハードディスク・レコーダー (Hard Disk Recorder)
- High Data Rate - クアルコム社開発のCDMA2000時代の高速データ通信規格。
- 香港預託証券 (Hong Kong Depositary Receipts)
- 相同組換え修復 (Homology directed repair)
脚注
- ^ 感動の高画質時代到来!テレビの新技術「HDR」とは?(鴻池賢三 2018.12更新、All Aboutデジタル)
- ^ HDRテレビは本当に高画質? 現状は機種間で大差(日経トレンディ編集部 2016.7、NIKKEI STYLE)
HDR (Humanitarian Daily Ration)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/12/20 13:41 UTC 版)
「MRE」の記事における「HDR (Humanitarian Daily Ration)」の解説
人道支援用レーション。紛争地帯等で現地住民に配布される。食のタブーに配慮し、肉やアルコールは使用していない。
※この「HDR (Humanitarian Daily Ration)」の解説は、「MRE」の解説の一部です。
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