2014年ロシアのクリミア侵攻
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「ウクライナとロシアの関係」の記事における「2014年ロシアのクリミア侵攻」の解説
詳細は「2014年クリミア危機」、「ロシアによるクリミアの併合」、「2014年クリミア住民投票」、および「2014年クリミア危機のタイムライン」を参照 クリミア半島(クリミア自治共和国)では、暫定政権への移行に反対する親露派のデモが拡大し、各地でロシアへの帰属を求めるなど緊張が続いた。2月27日、クリミア自治共和国議会は、武装したロシア系住民が周囲を取り囲む中、ウクライナ大統領選挙が予定されている5月25日同日にウクライナへの帰属を問う住民投票を実施することを決定した。2月28日、シンフェロポリの空港がロシア系武装集団によって一時占拠される事件が起こる。インタファクス通信はロシア軍がセヴァストーポリの空港に配備されたと報じた。同日、政権崩壊後、所在が明らかになっていなかったヤヌコーヴィチは、ロシアのロストフ・ナ・ドヌーで会見し、大統領を辞任しないことを表明した。3月1日、ウクライナのアルセニー・ヤツェニュク首相は、クリミア半島におけるロシア軍の出動は駐留協定違反だと批判した。 3月1日、ロシアのプーチン大統領は、クリミア半島での軍事作戦ロシア連邦議会上院に提案し、上院は全会一致で軍事介入を承認した。3月1日、3月2日の両日、国連安全保障理事会では緊急会合が開かれ、ロシア軍の展開をめぐり、ウクライナのセルゲイエフ国連大使とロシアのヴィタリー・チュルキン国連大使の間で侵略か否かで応酬があった。 3月2日、ウクライナのトゥルチノフ大統領代行は、ウクライナ軍に対し総動員令を発し、予備役の招集開始を命じた。デニツァ外相はアメリカ合衆国、欧州連合(EU)、北大西洋条約機構(NATO)に対し、あらゆる防衛手段を検討するよう要請した。ヤツェニュク首相は、ロシアに対し軍を撤退させ、政治的対話に応じるよう求めた。一方、1日にウクライナ海軍総司令官に任命されたばかりのデニス・ベレゾフスキー提督が離反し、クリミア自治共和国に忠誠を誓ったと報じられた。 3月3日、インタファクス通信は、ロシア軍がウクライナ軍に対して3月4日午前5時(日本時間同日正午)までに降伏しなければ攻撃を開始するとの最後通告を出したと報じた。セヴァストーポリのロシア黒海艦隊司令部はこの報道を否定した。3日国連安保理事会緊急会合で、ウクライナのセルゲイエフ国連大使は、ロシア軍が2月24日以降、空路や海路で「兵員約1万6千人を投入した」と批判した。 3月4日、ロシアのプーチン大統領はロシアによるクリミアの実効支配が進んだことを受けて、記者会見で武力行使の可能性は消えたとしウクライナへの本格的な軍事介入とクリミア自治共和国のロシア連邦への編入を否定した。 3月6日、クリミア自治共和国最高会議は、クリミアをロシア連邦に編入するか否かを問う住民投票を当初予定していた3月30日から前倒しして、3月16日に実施することを決定した。最高会議はロシアのプーチン大統領に対してクリミアをロシアへの編入要求を全会一致で決議した。クリミア自治共和国のテミルガリエフ第一副首相は、7割以上の市民がロシアへの編入に賛成するとの見通しを述べた。ウクライナのヤツェニュク首相はクリミア自治共和国最高会議の決定は違法であり、住民投票に法的根拠が無いことを表明した。ロシアのプーチン大統領は安全保障会議でクリミア最高会議の要請を協議した。 3月7日、ウクライナのトゥルチノフ大統領代行は、クリミア自治共和国最高会議が決定したクリミアをロシア連邦に編入することを問う住民投票を無効とする大統領令を発布した。クリミア自治共和国最高会議議員団がモスクワを訪問し、コンスタンチノフ最高会議議長はロシア連邦議会上院のワレンチナ・マトヴィエンコ議長と会談し、住民投票時に国際監視団の招請を要請した。 マトヴィエンコ上院議長とセルゲイ・ナルイシキン下院議長は、16日予定の住民投票について全面的な支持を表明した。 3月7日夜、セヴァストーポリ近郊に駐屯するウクライナの防空部隊に対しロシア軍が投降を呼びかけたが、ウクライナ側は拒否した。 3月9日、ウクライナの首都・キエフでタラス・シェフチェンコ生誕200周年記念式典が行われた。各界要人らの演説では、南部クリミア半島でのロシアの実効支配への批判が目立ち、1万人超の参加者は時折、「プーチン(大統領の部隊は)出て行け」などと叫んで気勢を上げた。 3月10日、クリミア自治共和国バフチサライ近郊にあるウクライナ軍基地をロシア軍とみられる部隊が襲撃し、発砲したとインタファクス通信が伝えた。ウクライナ軍将兵に怪我人はないとも伝えている。クリミア自治共和国のセルゲイ・アクショーノフ(英語版)首相は、3月16日の住民投票で独立が承認されれば、数か月以内にロシアとの統合を実現したいとの意向を示した。ウクライナのヤツェニュク首相は記者会見で、「クリミアで起きていることはロシアの責任で、ウクライナの一部であるクリミアでの住民投票を直ちにやめさせるべきだ」とロシアを非難した。 3月11日、クリミア自治共和国最高会議はクリミア自治共和国とセヴァストーポリ市のウクライナからの独立宣言を採択したと発表した。宣言では3月16日に実施する住民投票後、クリミア共和国としてウクライナから独立した後、ロシア連邦に編入されることが明記された。ヴィクトル・ヤヌコーヴィチ前大統領は、ロストフ・ナ・ドヌーで声明を出し、自分が正統なウクライナ大統領でありウクライナ軍最高司令官であるとし、新政権を批判した。 3月12日、クリミア自治共和国のアクショーノフ首相は、住民投票でクリミアがウクライナに帰属されるべきでないとの投票結果が示された場合は2ヵ月以内にロシアへ編入が可能との見解を発表した。ロシア連邦議会下院のレオニード・エドゥアルドヴィチ・スルツキー(英語版)代議員は、住民投票に備え、ロシア軍がクリミア半島に部隊を送ったことを強く示唆した。主要7カ国(G7)はロシアに対し、クリミアを併合すれば国際法に違反すると強調し、ロシアが軍を撤退させ対話を開始しなければ制裁を強化すると警告した。ウクライナのヤツェニュク首相は訪問先のアメリカでバラク・オバマ大統領と会談。オバマ大統領はロシアへの編入を問うクリミアの住民投票を認めない方針を改めて強調した。 3月13日、ウクライナのイーホル・ハルチェンコ駐日大使は記者会見で「プーチン大統領はウクライナから出て行け!」と非難した。ウクライナ保健省は、ドネツクで暫定政権支持派のデモに参加した22歳の男性が、親露派のデモ参加者に刺され死亡したことを発表した。ロシアによるクリミア半島の侵攻にともなう初めての死者である。さらに地元当局は衝突で16人が負傷し、うち13人は重傷と発表した。ウクライナのヤツェニュク首相は国連安全保障理事会緊急会合に出席し、ロシアのクリミア侵攻を批判した。同会合に出席したロシアのヴィタリー・チュルキン国連大使は、ロシア政府が戦争を求めていないことを述べつつ、ヤヌコーヴィチ大統領解任を憲法違反である批判し、クリミアの住民投票を擁護した。 3月14日、ハリコフで衝突があり、2人が死亡、5人が負傷したとロイター通信が伝えた。ウクライナのアバコフ内相は15日未明までに約30名を拘束し武器を押収した。 3月15日、国連安保理は公開会合を開き、ウクライナのロシアへ編入を求める住民投票を無効とする決議を審議し、ロシアが拒否権を発動し、決議は否決された。モスクワで、およそ5万人がロシアによるウクライナへの介入に抗議して市中心部を行進した。 3月18日、ロシアのプーチン大統領はロシア連邦議会上下両院議員や地方首長らを前にクレムリンで演説し、クリミア自治共和国のロシア連邦への併合を宣言した。ウクライナ政府は、クリミアのロシア編入を決して認めないと表明した。3月19日、ロシア連邦議会下院はクリミア編入条約を賛成多数、反対1で批准、3月21日、上院も編入条約を満場一致で批准した。 4月12日、親露派武装勢力がスラビャンスクの行政庁舎を占拠した。 4月13日、ウクライナのアヴァコフ内相は、スラビャンスクで治安当局者1人が死亡したと発表した。また、ロシア通信は、親露派の活動家1人が死亡したと伝えた。トゥルチノフ大統領代行は、ウクライナ国民に向けた演説で、スラビャンスクの行政庁舎を占拠している武装勢力が現地時間午前9時までに武装解除を行わければ「大規模な対テロ作戦を実施する」と発表した。 4月14日、トゥルチノフ大統領代行は、ウクライナ東部で施設を占拠している親露派武装勢力が現地時間午前9時(日本時間同日午後3時)の退去期限を守らなかったことを受け、同勢力が武装解除に応じなければ対テロ作戦の一環として軍も投入した強制排除に踏み切る方針を示した。
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