ない‐しょう〔‐シヤウ〕【内相】
読み方:ないしょう
内務大臣の略称。
内務大臣
内相
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/16 03:49 UTC 版)
望月が逓信大臣時代に田中内閣では、日本共産党(いわゆる第二次共産党)一斉取り締まりを行い(三・一五事件)、それでも共産党がコミンテルンの手先として国家転覆を図っていると判明したため、更に1928年(昭和3年)昭和天皇御大典を前に急ぐ必要があったため、緊急勅令をもって治安維持法改正を進めた。当時法相だった原嘉道の証言によると、治安維持法に死刑を導入するという重大な法律改正を緊急勅令で行うことは憲政の破壊であるという囂々たる反対論が政党間にあったが、望月が「これをやるとお互いにやられるかも知れぬぞ」と言うと、原は「この為にやられるならよいじゃないか、日本の国体を破壊する者を適当に取り締まるという事は我々の任務である。この国体破壊者の取締を厳にするという事に骨を折った為にやられるというならお互いの本望じゃないか」と答えると、望月は「いや君がそこまで覚悟していれば結構だ、それで安心した」と述べたという。ただ法案改正担当省庁の一つ内務省の鈴木喜三郎内相が専横的な事務官更迭と第1回普通選挙における選挙干渉が非難され辞任しており、田中内閣は専任内相を急いで置く必要があった。後任の内相は犬養毅が第一候補に挙がったが犬養自身はやる気がなく、その他色々候補が自薦他薦で挙がったが、田中義一首相は“人情の人”望月を選んだ。田中は望月に要請すると、望月は内相には犬養をと答え辞退したが、田中が重ねて頼み込んだため折れて内相になると決めた。 ウィキソースに治安維持法中改正ノ件の緊急勅令の法文があります。 1928年(昭和3年)5月23日付で田中内閣での内務大臣に就任した。当時の新聞報道によると政党政治家叩き上げの人物で内相になったのは望月が初であるという。なお望月の内相就任には党内外ともにも異論が挙がらなかったが、望月の後任となった久原房之助逓相を発端として政争にまでなっている(水野文相優諚問題)。 一番にやらなければならなかった治安維持法改正について、当初内務省官僚ほぼすべてが反対意見を表明していた。御大典は4ヶ月後に迫っていた。そこで望月は反対する内務省官僚全員を大臣室に集めると、意気軒昂に全員を睨みつつ、閣議で決まったことだからやれ文句があるなら儂と対峙しろ、と啖呵を切った。これで官僚たちは意気消沈し反対できなくなった。野党側の違憲論に対して、政府は「憲法第八条に基づく当然の挙措にして断じて違憲にあらず。又憲法の精神に背反することなし」と応酬して、野党の反対も押し切り、改正案が成立すると、望月は御大典における警備最高責任者として各警察・保安・特高に指導激励して回った。御大典で万一のことがあったら自決して詫びるため白無垢を作らせている。御大典は滞りなく無事終わり、これにより国民の信頼を更に得た。 これ以降も天皇地方行幸には必ず白無垢と白鞘の短刀を持ち歩いていた。望月はそのことを一切口にせず秘密にしていたが、ある旅館で女中に見つかってそこから世間に漏れてしまい、感動話として広まった。 田中内閣のもう一つの重要法案が地方制度改正のための整備案であった。特に1931年(昭和6年)をめどに国税の地租を地方税に委譲、国税の営業収益税を府県営業税に統合し廃止するいわゆる両税委譲案が目玉であった。第56回帝国議会にて地租條例廃止法律案ほか合計17案を提出、内相の望月は三土忠造蔵相とともに議会で説明している。この法案も衆議院では与党の議席数で押し切り通ったが、貴族院では地租の部分が国民思想に悪影響であるとして結局は握りつぶされた。この流れで地方制度改正の話の中で婦人参政権問題が党内では挙がったが、望月は時期尚早として大反対している。 内相の時も、持ち前の人使いのうまさで官僚にまかせつつ要所を抑える方針は続いた。前任者の鈴木が専横的に人事介入したのに対し、望月は地方長官の更迭は一切行わなかった。内相という立場から利権に絡んだ誘いもあったが、金や地位に執着しない望月にとっては関係ない話で、一切聞く耳を持たなかった。望月の次に内相になる安達謙蔵の証言によると、安達が内務省に入ると望月の指導が行き届き皆和気あいあいとして正しく仕事をしていたという。“人情大臣”と呼ばれるようになったのはこの内相時代のことになる。 田中内閣は、水野文相優諚問題、幣原外交の破棄、張作霖爆殺事件での対応、など数々の問題で批判され内閣を維持できなくなったことから、1929年(昭和4年)7月2日に総辞職している。望月は、これを最後に裏方に専念し大臣にならないと決めた。
※この「内相」の解説は、「望月圭介」の解説の一部です。
「内相」を含む「望月圭介」の記事については、「望月圭介」の概要を参照ください。
内相
「内相」の例文・使い方・用例・文例
- >> 「内相」を含む用語の索引
- 内相のページへのリンク