烏(鴉)
『ギリシア神話』(アポロドロス)第3巻第10章 アポロンはコロニスという娘を愛し、彼女と交わったが、コロニスはひそかに別の男とも関係を結んだ。鴉がこのことを告げたので、アポロンは怒り、コロニスを殺した。さらにアポロンは鴉をも呪い、白かった鴉を、黒色の鳥にしてしまった。
『ふくろう染め屋(ふくろう紺屋)』(昔話) いつも真っ白な着物姿のおしゃれな烏が、ふくろうの染め屋に、「私の衣裳を、またとないような色に染めてほしい」と注文する。ふくろうは烏を真っ黒に染め、「これが世界にまたとない色だ」と言う。烏は怒ってふくろうを追い回し、以来、ふくろうは昼間は森の奥に隠れ、夜だけ出てくるようになった(岩手県岩手郡平館村。*どんな色にしても烏が満足しないので、ふくろうは怒り、烏を真っ黒に染めた、という形もある)。
★1b.白い烏(鴉)。
『十訓抄』第1-41 右大臣源顕房は、身近に召し使う盛重の心を試そうと、ある朝、「屋根に烏が2羽とまっているが、1つの烏の頭は白く見える。見間違いだろうか」と問うた。盛重はじっと烏を見た後に、「間違いありません」と答えた。右大臣は盛重を「出世しそうな男だ」と認め、白川院に仕えさせた。
*烏の頭が白くなったら、との仮定→〔あり得ぬこと〕1cの『平家物語』巻5「咸陽宮」。
『洞冥記』巻4 東北の地に地日草、西南の地に春生草という不老の薬草が生えている。太陽の中に住む3本足の鴉が、しばしば天から飛び降りてこの草を食べる。太陽が乗る龍車の御者・羲和(ぎか)が、それを妨げようとするが、鴉は制止を聞かず降下してしまう。この草を食べれば年をとらないことを、知っているからである。
『酉陽雑俎』続集巻4-981 天后(則天武后)の時、3足の烏が献上された。側近の者が、「1足は偽造だ」と言った。天后は笑いながら、「ただ記録に書いておきなさい。どうしてその真偽を見分ける必要がありましょう」と言った。
『ギュルヴィたぶらかし(ギュルヴィの惑わし)』(スノリ)第38章 オーディンは天上の宮殿ヴァルハラ(=ワルハラ)の玉座に坐し、彼の肩には2羽の鴉、フギンとムニンがとまっている。オーディンは早朝に彼らを放って、世界中を飛び回らせる。鴉たちは朝食時に戻って来て、見聞きしたすべてを、オーディンの耳に告げ知らせる。
*自身は動かず、1ヵ所にいながら世界のことを知るというのは、日本神話のクエビコと同様である→〔片足〕1の『古事記』上巻。
*烏の会話を聞く→〔立ち聞き(盗み聞き)〕6aの『聴耳頭巾』(昔話)・〔針〕2aの『聴耳草紙』(佐々木喜善)。
『遠野物語拾遺』146 先年、佐々木(喜善)君の上隣りにある某家で起こったこと。親類の家の方角から、1羽の烏がけたたましく鳴いて飛び来たり、翼をバサリと障子に打ちつけて去った。皆驚いて、「何事もなければ良いが・・・・・・」と話し合っているところへ、親類の家の老婆が谷川の橋から落ちて死んだ、との知らせが来た。
『渦巻ける烏の群』(黒島伝治) 雪のシベリアを一個中隊が行軍し、道に迷って行方不明になる。春が来て、無数の烏が空から舞い降り、雪の中をつつく。「日本兵が死んでいる」との報告があり、捜索隊は烏たちの群がる所々に、むさぼり傷つけられた兵たちの死体を見出す。
『鴉(からす)』(松本清張) 道路公団が、新道路建設のために、浜島庄作所有の土地を買い取ろうとする。しかし浜島は、いくら高額を提示されても売らない。彼は会社の同僚柳田修二を殺して、死体を敷地内に埋めていた。その場所の上に、やがて多くの鴉が群がり、舞うようになる。近所の人が不審に思い、警察に通報する。
『コーラン』5「食卓」30~34 兄カインが弟アベルを殺した時、アッラーに遣わされて1羽の鴉がやって来た。鴉はさかんに地を引っ掻き、アベルの穢れ身(=死体)を匿す方法を教えた。それを見てカインは言った。「ああ何たる情けないことだ。俺はもうこの鴉にもかなわないのか。弟の穢れ身を匿す力すらないのか」。
『和漢三才図会』巻第65・大日本国「出羽」 陸奥と出羽の交(あわい)に、牟夜牟夜(むやむや)の関がある。俗に有也無也(うやむや)の関というのは、訛りである。昔この山に鬼神が住み、不意に出ては人をとらえた。烏が「有也有也」「無也無也」と鳴き分けて鬼神の有無を告げ、人はその声によって往来したという。これはでたらめの説である。
『古事記』中巻 カムヤマトイハレビコは九州から東征の旅に出て、熊野へ到る。高木の大神が「天から八咫烏(やたがらす)を遣わして導くから、その後を行け」と告げる。カムヤマトイハレビコは、八咫烏にしたがって大和方面へ向かい、土地の荒ぶる神を平定し、服従せぬ人たちを追い払う。彼は橿原宮(かしはらのみや)で即位し、神武天皇となる。
『神道集』巻2-6「熊野権現の事」 第7代・孝霊天皇の代。紀伊国牟婁郡の猟師千代包(ちよかね)が猪に手を負わせたが、見失った。八咫烏が現れ、前方を悠々と歩いて行くので、千代包は後を追う。途中で、八咫烏の体色が金色に変ずる。やがて千代包は倒れ臥した猪を見つけ、気がつくと八咫烏は姿を消していた。千代包は八咫烏を捜して天を仰ぎ、光る物を見た→〔飛行〕6a。
★4b.烏の戦争。
『烏の北斗七星』(宮沢賢治) 烏の大尉が、強い山烏との戦闘を命ぜられ、「おれはあした戦死するのだ」と覚悟して、許嫁に別れを告げる。大尉は北斗七星を仰ぎ、「わたくしが勝つことがいいのか、山烏が勝つのがいいのか、わかりません。ただ、あなたのお考えどおりです」と訴える。翌日、大尉は部下を率いて山烏と戦い、これを殺す。大尉は少佐に昇進し、「憎むことのできない敵を殺さずにすむ世界が、早く訪れますように」と祈る。
『聊斎志異』巻11-433「竹青」 魚客(または魚容)という男が呉王廟で眠り、夢で呉王から黒衣を授けられ、それを着るとたちまち烏に化した。烏となった彼は、「竹青」という雌烏と結婚して楽しく暮らすが、人の投げた石つぶてに当たって死んだ。目覚めると、魚客は呉王廟で寝ていた〔*後、魚客は人間の姿をした竹青に再会する。魚客は黒衣を着て烏となり、遠方の竹青の所まで飛ぶ、などのことをする〕。
*父親の言葉によって、息子たちが烏になってしまう→〔呪い〕1の『七羽のからす』(グリム)KHM25。
『山海経(せんがいきょう)』第14「大荒東経」 温源の谷があり、その上に扶桑の木が生えている。1個の太陽がやって来ると、1個の太陽が出て行く。太陽はみな、烏を載せている。
*太陽の中に住む3本足の鴉→〔烏(鴉)〕1cの『洞冥記』巻4。
*太陽に化けた3本足の白烏→〔太陽〕3dの二つの太陽の伝説。
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