近代以前の一般的な巻序
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/02/24 04:14 UTC 版)
「源氏物語の巻序」の記事における「近代以前の一般的な巻序」の解説
「本の巻・並びの巻」も参照 近代以前の源氏物語の注釈書・梗概書・巻名目録などの中で巻を並べるときには、現在のように全ての巻を単純に一直線に並べて番号を振るのではなく、しばしばある巻と別の巻とが「並ぶ」・「併せる」・「奥に込める」といった表現でつなげられており、全体としては「二次元的」あるいは「複線的」と呼びうるような形で配置されていた。また巻名に番号を振るときでも「並びの巻には番号を振らない」といった形をとるために全体の巻数と最も大きい巻序の番号とは一致しない。また、いくつかの巻は現在とは異なった名称(この名称は「異名」という術語を使用されることがあるが、これはあくまで「現在一般的に使用されている名称と比べたときに異なる名称である」ということを意味しているに過ぎない呼び方であって、「匂宮」に対する「匂兵部卿」のように過去には現在の「異名」がより一般的な名称であったと見られるような場合も存在する。)で呼ばれていることがある。 以下に近代以前の一般的な巻序を示す。括弧内は巻名の異名であるが、単純ではない。詳しくは各巻の記事を参照。 本の巻並びの巻備考11 桐壺(壺前裁・輝く日の宮) 壺前裁や輝く日の宮については桐壺とは別の巻とする資料もある。 22 帚木 空蝉、夕顔 33 若紫 末摘花 44 紅葉賀 55 花宴 66 葵 77 賢木(松が浦島) 88 花散里 99 須磨 10 明石(浦伝) 11 澪標 蓬生、関屋 12 絵合 13 松風 14 薄雲 15 朝顔 16 少女(日影) 17 玉鬘 初音、胡蝶、蛍、常夏、篝火、野分、行幸、藤袴、真木柱 18 梅枝 19 藤裏葉 20 若菜上(箱鳥) 若菜下(諸鬘) 古い時代の巻名目録では若菜は上下2巻に分けず全体で1巻と数えられることの方が多い 21 柏木 22 横笛 鈴虫 23 夕霧 24 御法 25 幻 26 雲隠 本文は伝存していないが、しばしば巻名のみ挙げられることがある 27 匂宮(匂兵部卿、薫大将、薫中将) 紅梅、竹河 28 橋姫(優婆塞) 29 椎本 30 総角 31 早蕨 32 宿木(貌鳥) 貌鳥については宿木とは別の巻とする資料もある。 33 東屋(狭筵) 狭筵については東屋とは別の巻とする資料もある。 34 浮舟 35 蜻蛉 36 手習 37 夢浮橋(法の師) 法の師については夢浮橋とは別の巻とする資料もある。 橋姫から夢浮橋までのいわゆる「宇治十帖」については、他の巻と同じような並べ方が記載されている形の文書もある一方で、 椎本以下の9帖を橋姫の並びの巻のように表記する。 宇治十帖で改めて「宇治一」から始まる番号を振る(白造紙など)。 宇治十帖全体を「宇治」と一帖であるかのように表記し、その下に宇治十帖各巻の巻名を書く(正嘉本源氏物語系図など)。 といった事例が見られるほかに、この宇治十帖を「無いものもある」との注釈を加えている文書も存在する。 さらに、夢浮橋以降などに、「輝く日の宮」、「法の師」、「桜人」、「狭筵」、「巣守」、「八橋」、「差櫛」、「花見」、「嵯峨野」、「雲雀子」、「花見」、「山路の露」といった現在の54帖には見られない巻名を記しているものがしばしばある。
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