近代以前のインドにおける大麻
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/11 15:25 UTC 版)
「インドにおける大麻文化」の記事における「近代以前のインドにおける大麻」の解説
西暦1000年より以前からインドの文献には「バンガ(Bhanga)」についての記述が見られる。しかしこの「バンガ」が現代のバングーやその他大麻製品を指しているのかどうかという点に関してはサンスクリット学者の間でも議論が残っている。 またヴェーダ時代に語られているソーマの原料としてアサ、すなわちカンナビス・サティヴァ(英語版)が候補の一つとして挙げられる。リグ・ヴェーダ(前1700-前1100年)ではソーマは陶酔感をもたらす飲み物として崇められている。 アタルヴァ・ヴェーダ(前1500-前1000年)の第11巻6章15篇では「バンガ」は不安を解消する効果のある神聖な5種類の植物のうちの一つとして語られている。14世紀のヴェーダ研究者サヤナ(英語版)は「バンガ」を野草の一種として翻訳しているが、多くの学者はこれを大麻草であると比定している。 スシュルタ・サンヒター(英語: Sushruta Samhita)(前600年頃)は薬草としてのバンガについて記されている。それに拠ればバンガはカタル、痰、下痢に効果があるとされている。 ゲリット・ジャン・メウレンベルド(Gerrit Jan Meulenbeld)とドミニク・ウジャスチクは、議論の余地なく大麻草について触れられているインドの文献で最も早いものはヴァンガセナ(Vangasena)の著したチキツァ・サラ・サングラハ(Chikitsa-sara-sangraha、11世紀)であるとしている。ヴァンガセナは「バンガ」の持つ食欲増進、消化促進効果について触れており、長生きと幸福の秘訣であるとしている。同時期にナラヤン・サルマ(Narayan Sarma)によって記されたタンヴァンタリヤ・ニガンツ(Dhanvantariya Nighantu)ではバンガの催眠作用について触れられている。 ナーガルジュナ(Nagarjuna)のヨガラトナマラ(Yogaratnamala、12-13世紀)では大麻草(mdtuldni)の煙を使用すれば、敵にまるで精霊にとりつかれたような感覚を与えることができるとしている。シャルンガダラ・サンヒター(Sharngadhara Samhita、13世紀)では大麻草の薬効が述べられており、ケシとともに即効性のある薬の一つとされている。またダヌヴァンタリ・ニガンツ(Dhanvantari Nighantu)、サルンガンダラ・サンヒター(Sarngandhara Samhita)、カヤデヴァ・ニガンツ(Kayyadeva Nighantu)などにも大麻草に関する記述がある。 アーユルヴェーダでは様々な鎮痛剤、催淫剤の材料のとして大麻草が用いられている。しかし使用される大麻草は極少量に限られており、大量の摂取、長期に渡る摂取は依存を招くとしている。またタバコよりも肺や肝臓を痛める可能性があるとする文献も存在するが、喫煙による摂取方法は後のアーユルヴェーダからは見られなくなる。 ヒンドゥー教の神であるシヴァの好きな食べ物が大麻草であるとされる。神話ではシヴァはアサの下で一晩眠り、翌朝目覚ましにそれを口にして以来、好物になったと語られている。また別の言い伝えではシヴァが乳海攪拌にて猛毒ハーラーハラを飲み込んだ際に解毒鎮痛に使われたのがバングーであったとされている。シヴァ・プラーナでは夏季の3ヶ月間は毎日シヴァ・リンガにバングーを捧げるようにすすめている。 多くのアーユルヴェーダの文献では大麻草はヴィジャヤ(vijaya)という語で扱われる。一方でタントラではサンヴィド(samvid)という語が用いられる。
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