設立・刊行物
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1940年11月11日、1918年の同月同日に締結された(第一次世界大戦における)ドイツと連合国の休戦協定を記念してシャンゼリゼ大通りから凱旋門にかけて高校生、大学生、教員らが大規模なデモを行い、ゲシュタポに逮捕された(1940年11月11日のデモ(フランス語版))。最初のレジスタンス運動の一つとされるこのデモの弾圧で、運動はさらに広がり、『パンタグリュエル(フランス語版)』などの非合法の新聞が刊行され始めた。こうした動きに勇気づけられたヴェルコールは、同じように「手から手へと渡り」、「戸口から戸口へと配られる」ような出版物として文学作品を刊行することを考えた。作品は、友人で作家のピエール・ド・レスキュールの協力を得て、文学界、財界、法曹界、大学人などに配布することになった。深夜叢書の活動には詩人を中心に多くの作家、知識人が参加した。とりわけ、1943年7月14日の革命記念日に刊行した『詩人たちの名誉』は、ポール・エリュアール、ピエール・セゲルス(フランス語版)、ジャン・レスキュール(フランス語版)らが編集し、ルイ・アラゴンら22人の詩人の作品が収められた。みな、偽名である。このアンソロジーは民衆の共感を呼び、たちまち数版を重ね、さらに翌44年5月には第2号「欧州編」が刊行された。また、単著以外に、『禁止されたコラム』、『深夜のコラム』などの定期刊行物も配布した。 地下出版された主な作品年作家筆名作品邦訳 (括弧は未訳)1942 ジャン・ブリュレル ヴェルコール Le Silence de la mer 『海の沈黙(フランス語版)・星への歩み』河野与一、加藤周一共訳、岩波現代叢書、1951年。注記:ナチス・ドイツの暴行の犠牲となって死去した象徴主義の詩人・劇作家サン=ポル=ルーに捧げられている。 1943 ジャン・ブリュレル ヴェルコール La Marche à l’étoile 同上 1943 レオン・モチャーン(フランス語版) ティムレ La Pensée patiente (根気強い思想) 1943 フランソワ・モーリアック フォレ Le Cahier noir (黒い手帖) 1943 エルザ・トリオレ ローラン・ダニエル Les Amantsd’Avignon 『アヴィニヨンの恋人』川俣晃自訳、岩波書店、1953年。 1943 ジャック・ドビュ=ブリデル(フランス語版) アルゴンヌ Angleterre (英国) 1943 ポール・エリュアール、ピエール・セゲルス、ジャン・レスキュール編 L'Honneur des poètes (詩人たちの名誉) 1944 同上 L'Honneur des poètes II Europe (詩人たちの名誉 第2号 欧州編) 1944 ピエール・ボスト ヴィバレ La Haute fourche (オート・フルシュ) 1944 ジャン・カスー ジャン・ノワール 33 sonnets composés au secret 「密室のなかでつくられたソネット」(抜粋) ジャン・ポーラン、ドミニク・オーリー編『祖国は日夜つくられる』第I巻 (渡辺淳、小場瀬卓三、安東次男共訳、月曜書房、1951年) 所収;大島博光著『レジスタンスと詩人たち』(白石書店、1981年) 所収。 1944 ジョン・スタインベック Nuits noires (The Moon Is Down) 『月は沈みぬ』龍口直太郎訳、新潮文庫、1953年; 須山静夫訳、角川文庫、1969年; 白神栄子、高村博正訳『スタインベック全集 第8巻』所収。 1944 ルイ・アラゴン 怒りのフランソワ Le Musée Grévin 『グレバン蝋人形館』大島博光訳『アラゴン詩集』(飯塚書店、1968年) 所収。 1944 クロード・アヴリーヌ ミネルヴォワ Le Temps mort (失われた時) 1944 クロード・モルガン モルターニュ La Marque de l’homme 『人間のしるし』石川湧訳、岩波書店、1952年。 1944 ジャン・ゲーノ セヴェンヌ Dans la prison 「牢獄にて」(抜粋)ジャン・ポーラン、ドミニク・オーリー編『祖国は日夜つくられる』第I巻 (渡辺淳、小場瀬卓三、安東次男共訳、月曜書房、1951年) 所収。 1945 ジョルジュ・アダム(フランス語版) エノー A l’appel de la liberté (自由の叫び) 1945 エディット・トマ(フランス語版) オーソワ Contes d’Auxois (オーソワ物語) このシリーズは戦後、深夜叢書が合法化された後にも引き続き刊行された。1947年にはレジスタンス文学のアンソロジー『祖国は日夜つくられる』を出版。邦訳も1951年に月曜書房から刊行された。ジャン・ポーランとドミニク・オーリーが編纂したこのアンソロジーには、これまでに深夜叢書から作品を発表した作家のほか、ジョルジュ・ベルナノス、ジャン・ジロドゥ、マックス・ジャコブ、ピエール・ジャン・ジューブ、ピエール・エマニュエル(フランス語版)、ジュリアン・バンダ、フランシス・ポンジュ、アンドレ・マルロー、ジャック・マリタン、ロジェ・カイヨワ、アンドレ・ジッド、サン=テグジュペリ、エマニュエル・ダスティエ、シモーヌ・ド・ボーヴォワール、アルベール・カミュ、ジャン・ケロール(フランス語版)、ジャン=ポール・サルトルなど多くの作家、詩人、知識人が参加している。 戦後刊行された主な作品年作家作品邦訳 (括弧は未訳)1947 ジャン・ポーラン、ドミニク・オーリー編 La patrie se fait tous les jours 『祖国は日夜つくられる』第I巻・第II巻 (渡辺淳、小場瀬卓三、安東次男共訳、月曜書房、1951年) 1947 ジャン・ムーラン Premier combat (最初の闘い) - 序文:シャルル・ド・ゴール 1955 インゲ・ショル(フランス語版) La Rose blanche 『白バラは散らず ― ドイツの良心ショル兄妹』内垣啓一訳、未來社、1964年。 1957 ミシュリーヌ・モーレル(フランス語版) Un camp très ordinaire (あまりにもありきたりの収容所) 1958 エリ・ヴィーゼル La Nuit 『夜』村上光彦訳、みすず書房、1967年。 1965 ダヴィッド・ルーセ(フランス語版) L’Univers concentrationnaire (強制収容所の世界) - 再版 1967 ヴェルコール La Bataille du silence 『沈黙のたたかい ― レジスタンスの記録』森乾訳、藤森書店、1978年; 新評論、1992年。 1970 シャルロット・デルボ(フランス語版) Auschwitz et après (アウシュヴィッツとその後)
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