芯(しん)式
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 21:19 UTC 版)
通常、燃焼筒の下部にはガラス繊維など不燃性繊維でできた燃焼芯が露出しており、芯の下端は灯油に浸っている。毛細管現象によって上昇する灯油を、芯の先端で燃焼させる。炎は燃焼筒の中で立ち上がり、燃焼筒上部の金網を赤熱させる。この金網と燃焼筒全体から赤外線が放射される。 一般的な芯式ストーブは、円筒状に織られた芯が燃焼筒(または燃焼室)下部にある金属製の外筒と内筒の間に挿入され、ストーブの筐体に設けられた調整用ダイヤルで円筒内の芯を昇降させて炎を調節する。この構造から「芯上下式」と呼ばれる。かつて芯が上下せず一定の高さに固定され、ポット式ストーブと同様に送油量を調節することで、炎を調節する構造のものも存在した。芯式はファンヒーターに比して、構造が簡単で故障が少なく騒音もなく、動作に商用電源が不要で利用場所を選ばず、災害など停電時も有用である。 対流式は機器の外装自体が燃焼筒となっているものがほとんどで、耐熱ガラスの覗き窓から芯で灯油を燃焼する炎の様子が確認でき、俗に金冠燃焼とも呼ばれる。炎の色により「白光炎式」(ホワイトフレーム、もしくはゴールドフレームとも)と「青炎式」(ブルーフレーム)があり、製品名に「アラジンブルーフレームヒーター」と用いるものもある。 反射式同様の燃焼筒を採用した対流式ストーブもかつては三洋電機などから発売されており、現在(2019年)でもフジカが販売している。またトヨトミは2009年に一度撤退したが、2015年から復刻商品として再発売した。近年の反射式は燃焼筒を耐熱ガラス張りとし、赤外線の輻射効率を高めると共に視覚効果を醸している。 灯油タンクは(石油ファンヒーター・FF式石油暖房機同様)「カートリッジタンク式」に統一され、本体内蔵タンク式は対流型と石油コンロのみとなった(万一カートリッジタンクが破損しても、各機種に適合した予備カートリッジタンクを各メーカーよりサービスパーツとして取り寄せ購入可。灯油こぼれによる火災や水・ゴミなど不純物混入による器具故障を防ぐため、給油口の蓋や口金は破損・紛失させないよう十二分注意が必要)。カートリッジタンクには手を汚さずに給油可能な「よごれま栓」と、万一タンクを倒しても油漏れを防ぐ閉止弁「こぼれま栓」が採用され安全性向上が図られている。さらに消防法の規定により「給油時自動消火装置」と「耐震自動消火装置」も搭載され、燃焼中にタンクを抜く・及び外部から強い衝撃が加わると瞬時に芯を下げて強制消火し(灯油漏れなどによる)火災を未然に防げるようになっている(芯調節つまみは「緊急消火」位置になり、「臭いセーブ消火位置」までつまみを手動で動かす通常消火に比べ消火時の臭いが強くなる。タンク未装着時はストッパーで芯上下機構をロックし点火できなくする安全装置も兼務。なお本体内蔵タンク式機種は給油時自動消火装置非搭載で「耐震自動消火装置のみ搭載」のため、給油は必ず完全手動消火後に本体が十分冷えてから行う。ただし耐震&給油時自動消火装置はあくまで緊急用なので、通常時はストーブを強く押す・タンクを抜く・緊急消火ボタンを押す形による強制消火ではなく、芯調節つまみを「臭いセーブ消火位置」まで回して手動消火する=この場合、完全消火までに最長約5分を要する。消火ボタンを押して消火後・乾電池式モーターによる消火時臭い除去機能搭載機種は既に国内メーカー全社が生産を終了したため、現行モデルは乾電池を点火時のみに使用)。また灯油が少なくなると空になる約2時間前から給油を色で予告する「給油サイン」もカートリッジタンク採用の芯式石油ストーブ全機種に搭載(タンクは手動消火後に本体が十分冷えてから抜く。灯油が多い時は青または本体キャビネットと同じ色を示し、残量が半分以下になるとサインが赤色に変わる方式の機種と、前面に窓を設けてタンクの灯油満量サインが直接見えるようにした機種の二通りある。本体内蔵タンク採用機種は油量計にて直接給油を予告)。カートリッジタンクには灯油を溢れさせないための「満量サイン」が上部側面に付いており、黒く変色することで油面の位置がわかる。 芯調節つまみは「回転式」と「上下式」に二分されており、回転式の現行モデルはつまみサイズが従来より大きくなり回しやすくなっている(上下式つまみを採用した機種は減少傾向にあり、コロナの現行モデルは回転式に統一。つまみはストッパー付きで半周または1周の範囲でしか回せない)。なおシーズン初めの使用や芯を交換・空焼きクリーニング後は、「給油後30分以上放置し芯に灯油を十分染み込ませてから点火する」よう取扱説明書で指示されている。また再点火は消火後5分以上経過し、本体および芯が十分冷えてから行う(消火直後に再点火すると芯へ爆発的に着火して臭いや煤が出る場合があり、従来型フィラメント式点火ヒーター採用機種では点火ヒーターが断線することがある)。 部品交換時は必ず「各メーカー純正部品」を用いるよう指示されており、メーカー純正以外の部品を用いたり(取扱説明書に記載された箇所以外を)素人改造すると不完全燃焼や一酸化炭素中毒の危険がある(摩耗した芯の交換は専門店への依頼を推奨=かつては芯交換方法がストーブ本体説明書に詳しく書かれていたが、現行モデルは各機種に適合したメーカー純正別売り替え芯に付属の説明書にのみ芯交換方法を記載。耐震自動消火装置の感震部を分解したり潤滑油で拭くと、装置誤作動や動作不良による火災のおそれあり)。本体の清掃及び部品交換は必ず消火して本体が十分冷えてから行うと共に、やけどや感電防止のため乾電池は必ず外しておく。また清掃・マッチを用いた手動点火などのため燃焼筒を外して再度置く場合、燃焼筒が芯を踏んでいる(正しく据わらず溝からずれ脱線している)状態で点火すると煤が出て異常燃焼(不完全燃焼)し火災や一酸化炭素中毒に至る危険がある。 2009年以降製造機種は「設計上(一般家庭用として、取扱説明書及び本体注意書きに従った正常な状態で使用した場合)の標準使用期間」が本体及び取扱説明書に表記され、石油ストーブの平均寿命は「8年」とされている(設計上の標準使用期間を超えて長期使用すると、部品の劣化・破損が進んで油漏れによる火災事故、および不完全燃焼による一酸化炭素中毒事故に至るおそれあり。なお補修用性能部品は当該機種の生産終了後6年間保有しており、この期間を過ぎて故障した場合は修理不能となるため製品自体の買い替えとなる。保証期間は購入日から起算して1年間だが、消耗品交換・および水や灯油以外の油などが混じった不純灯油や昨シーズンより持ち越した変質灯油使用に起因する修理は保証期間内でも有料。業務・店舗用など長時間稼働させる環境で芯式石油ストーブを使用した場合・8年に満たないうちに部品劣化が急速に進み短期間で故障するおそれがあるので、業務用暖房は大型ブルーヒーターや電気暖房を推奨)。
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