船内設備と装飾
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建造に際し、日本郵船では競合する北ドイツ・ロイド(英語版)の「シャルンホルスト」(18,300トン)などを徹底的に研究。大阪商船出身の海事史家である野間恒は、新田丸級貨客船は「「シャルンホルスト」に似通っている」と述べている。内装面では、やはり優秀船舶建造助成施設の適用により建造された大阪商船のあるぜんちな丸級貨客船と同様に「日本調のモダン・スタイル」の装飾を導入したが、これは日中戦争勃発後という時節柄も多少は影響していたものの、日本郵船の貨客船におけるこれまでの装飾傾向とは明らかに一線を画していた。日本郵船の貨客船、例えば「浅間丸」(16,947トン)や「氷川丸」(11,622トン)、「照国丸」といった貨客船での装飾は、一言でいえば「欧風」であった。三菱長崎造船所では、あるぜんちな丸級貨客船での経験をもとに、中村順平や村野藤吾などといった当代一の設計家に公室の設計を依頼した。しかし、設計と建造の段階で第二次世界大戦に突入した影響は大きく、真鍮やゴムの使用制限がかかったため真鍮の部分はベークライトやアルマイトで、ゴムの部分はリノリウムでそれぞれ代用された。 各甲板の構成は、大まかには以下のとおりであった。 最上甲板:遊泳プール、運動室、サンデッキ 短艇甲板:一等客室(22室)、カード・ルーム、カフェ(バー付設)、ダンシングルーム(バー付設)、ベランダ風プロムナード 遊歩甲板:一等公室(社交室、読書室、喫煙室、大食堂、特別食堂、子ども室)、オブサーベーション・デッキ 船橋甲板:舷門、エントランス・ホール、案内所、特別室、一等客室、理髪室、美容室、医務室、事務長室、司厨長室、二等旅客設備 上甲板:一等客室(22室)、三等客室、三等食堂 特に注目されるべきは一等と二等の公室および一等客室である。68室ある一等客室は5層にわたって配され、そのすべてが外側に位置していたため、一等船客は常に外気に触れ、風景を眺めることができた。また、航路の一部が熱帯地域に掛かるということで、8万トン級の「クイーン・メリー」 (RMS Queen Mary) や「ノルマンディー」 (SS Normandie) ですら装備していない設備をと、一等と二等の公室および一等客室への冷暖房装置の導入を行った。外航客船への冷暖房装置設置は世界最初のものである。また、68室のうち59室には浴室も付けられていた。船内にはエレベーターが通じ、下層甲板にある二等および三等旅客設備もプロムナードが配されるなど決してグレードは低くなく、2万トンを切るクラスの貨客船としては最上のものと評された。装飾パネルには代用のアルマイト腐蝕板が活用され、例えば「新田丸」には新田神社やオナガドリをあしらったパネルで、「八幡丸」には世界各地の名産品を世界地図のように配置した浮彫のパネルで装飾されていた。 これら設備の導入に際しては、三菱長崎造船所内に船室の実物大模型を立てて諸設備一切を実際の船室同様に取り付け、専門家の目通しを受けた上で最終決定がなされた。旅客設備以外でも、プロペラや航海用具、貨物設備などもすべて日本産でまとめられ、「我国造船科学の粋を集めた」。それに加え、「世界で優良斬新だと目された」機器なども片っ端から装備された。もっとも、新田丸級貨客船のグレードは、間を置かずして陳腐化するはずであった。サンフランシスコ航路用として建造が予定されていた橿原丸級貨客船の二等旅客設備のグレードが、新田丸級貨客船の一等旅客設備のグレードと同等に設定されたからである。しかし、橿原丸級貨客船は商船としては竣工せず空母(飛鷹型航空母艦)となり、新田丸級貨客船の「格落ち」は免れた。 新田丸級貨客船の旅客定員は一等から三等合わせて283名と少なかったが、欧州航路は寄港地が多く、中華民国やインドシナ半島などイギリス、フランスの植民地との間を往来する旅客が多かったこともあって就航船の定員は元から少なめで、「日本船に乗る客の大部分は、日本からの客とすれば、定員を少なくしたのは頷ける」というのが野間の説明である。
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船内設備と装飾
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「あるぜんちな丸級貨客船」の記事における「船内設備と装飾」の解説
各甲板の構成は、大まかには以下のとおりであった。 船橋甲板:操舵室、海図室、船長室、(煙突)甲板士官室、無線電信員室 端艇甲板:一等船室(1人室9室)、酒場、カード室、浴室、トイレ、ダンシングホール、プール 遊歩甲板:一等船客公室、社交室、読書室、ファンシーショップ 遮浪甲板:一等船室各種、案内所、診療室、理容室、美容室、暗室 上甲板:三等読書室、調肉室、洋式料理場、製麺室、機関士居室、船医居室 第二甲板:料理人室、給仕人室、三等客室、雑居室兼貨物スペース 第三甲板:給仕人室、倉庫 あるぜんちな丸級貨客船の主目的は移民の輸送であるが、外国人観光客をも主要船客として取り込むべく船客サービスの研究に余念のなかった大阪商船は、同時期の諸外国の豪華船にスタッフを乗り組ませて実習と研究を重ねた。またキャビンボーイには美少年を選りすぐって採用し、船上行事の充実にも努めた。船上行事の中には「プールに魚を入れての魚釣り大会」というのもあった。 船内装飾は、おりからの日中戦争により諸物資の調達が困難になる中で、「「できるだけ日本の工芸技術水準の高いことを、船一隻造ることによって、世界から認めてもらいたい」との気迫」と、「わが国の力を認識しない外国人に示そう」という努力のもとに、羊毛の民間使用の禁止などの障害を乗り越えて設計が進められた。時節柄必要な資材は概ね日本産でまかなわれ、苦労して確保した資材を松田軍平や中村順平、村野藤吾といった当代一の設計家が和辻のノーキャンバー構造に合わせた日本趣味的な装飾に仕立て上げ、「国策豪華船」の名に恥じないレベルの装飾となった。 華やかな装飾とは対照的な非常用設備なども、中短波無線電話や日本産の救命ボート、新式火災報知機、強力なデリックが備え付けられていた。
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