非常用設備
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/12 20:56 UTC 版)
民間航空機の非常用設備は規定によって細かな点まで定められている。 非常口 乗客用非常脱出口の数は乗客定員数とそれぞれの非常脱出口の大きさで規定されている。乗客定員44名以上では乗務員を含めた最大定員の全員が90秒以内で安全に脱出できることが実際のテストで証明される必要がある。 非常口の内側には開いた時に展張する救命いかだ兼用の緊急脱出スライド(スライド・シュート)が備わっており、飛行中はドアの開放と同時に自動的に展張するように設定されている。離陸時に機内アナウンスされる「乗務員はドアモードをオートマチックに変更してください」がこの操作を意味している。 緊急時に機内の照明が消えた場合には床の通路に埋め込まれた誘導灯が点灯する。 酸素マスク 高空で機体の与圧が失われると機内は減圧する。乗客のための酸素マスクは座席の上部から自動的に降りてくるようになっている。乗員用には携帯できるように小型ボンベ式や化学式の酸素マスクが用意されている。客室用は主に酸素発生装置(または酸素ボンベ)と減圧装置や配管、これらの手動や自動式の制御装置が必要である。旅客機では減圧時には酸素レベルの十分な高度まで緊急降下することになっており、それほど長い時間、酸素マスクが必要になる事態は想定されていない。酸素吸入装置と接続口の総数は座席数より10%以上多くなければならない。 ライフジャケット 保命装具として乗客用のライフジャケットが座席の下に用意されている。 緊急脱出装置/救命いかだ/救命装備品 シューターなどと呼ばれる脱出用の滑り台が客室すべてのドアの内側に格納されていて、緊急時にはドアを開けると同時にガスが注入されて展張して使用可能な状態になるよう設計されている。大型機のシューターはそのまま救命いかだとしても機能するものが多く、小型機ではシューターとは別に救命いかだを備えるものが多い。 温度感知器・煙感知器 機内の要所に温度感知器と煙感知器が取り付けられており、操縦席に警報が伝えられる。 消火器・消火システム 操縦席やギャレーには携帯式の消火器が置かれ、エンジン、APU、脚格納室、貨物室にはそれぞれの専用消火システムが備えられている。エンジン消火システム エンジン火災に備えて、フレオン粉といったエンジン用消火材が2本ほどの与圧容器に詰められ、操縦席からの操作で0.5-2秒ほどが2回程度エンジン内上部から噴射できるようになっている。 コックピット・ボイス・レコーダー/デジタル・フライト・データ・レコーダー コックピット・ボイス・レコーダー (CVR) は操縦室内の音声を30分から2時間ほど常時上書きしている。デジタル・フライト・データ・レコーダー (DFDR) はデジタル信号で飛行データや操作を25から数百時間ほど記録している。共に目立つようにオレンジ色に塗られた頑丈な箱に収められ火炎や衝撃から内部の記録を守っている。事故時でも比較的、残る事の多い、機体後部のギャレーやトイレの天井付近に置かれる。事故時には発見を容易にするために、内蔵電池によって自ら電波を発するようになっている。 非常用発電機 2発機や3発機では非常用に風車を使った発電機を備えるものがある。通常は機内に格納されているが、エンジン停止などで電源供給に支障がある場合には、機体下部に下りてきて機外の風を風車が受けることによって発電を行う。これによって操縦用油圧系統のための駆動力のような最低限の電源を確保する。
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