旅客機の構造とは? わかりやすく解説

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旅客機の構造

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/20 04:17 UTC 版)

旅客機の構造(りょかくきのこうぞう)では、旅客機の仕組みや構造について説明する。


注釈

  1. ^ 経済的で安全な範囲での飛行とは、ある程度以上の飛行回数を越えれば、主に繰り返し疲労による強度部材の強度低下が機体各部に多数、発生してしまい、それでも安全に飛行するためには点検保守の手間や時間、費用がかさむので新たに機体を購入する方が良いという限界の前を指す。
  2. ^ 旅客機には日本の「耐空性審査要領」で「制限荷重倍率」が+2.5から-1.0までが設定され、これに安全倍率の1.5を乗じた強度が機体全体に求められている。世界的にも同様である。
  3. ^ 構造部材の強度を示す尺度の1つに破壊靱性(はかいじんせい、Fracture toughness)と呼び、Kc(Critical stress intensity factor) で表す。例えば航空機用の強度部材として多用されるアルミニウム合金に、"2024-T3"と"7075-T6"があり、それぞれのKcは約450 kg/mmと約250 kg/mmであり2024-T3の方が7075-T6よりも大きな荷重を受けないとクラックの進行が急速に進むことがないといえる。これが2024-T3が外板に採用される理由の1つである。
  4. ^ 長年飛行している機体では、客室ドア部の機体外面の隅にパッチを当てた跡を見ることができる。
  5. ^ 旅客機に限らず航空機は、軽量な構造部材で十分な強度が得られるように設計されているが金属疲労のような小さな機体構造の部分的破壊が全体に波及することで空中でバラバラになる重大事故が起きないように、小さな破壊箇所が拡大することなく周囲の部材で負荷を分散して負担するように考慮されている。こういった、1つのトラブルだけでは致命的な問題とならないようにする設計は「フェイルセーフ」設計と呼ばれ、構造設計だけに限らず、航空機全体で採用されている設計思想である。フェイルセーフによる構造設計では、負荷を分散して受け持つリダンダント構造、常時2つ以上の部材が負荷を受け持つ二重構造設計、1つの部材の破壊された時に負荷を受け持つバックアップ設計、主構造が破壊されても周囲の補強材が負荷を分担するロード・ドロップ設計、などがある。
  6. ^ 同じ航空機でも現代の戦闘機では、外板が機体を支えるモノコック構造(Monocoque structure、はりがら構造)やセミモノコック構造(Semi-monocoque structure、半はりがら構造)は採らず、機体内部の強靭な金属フレームによって機体を支えるロンジロン構造 (Longeron structure) が採用されている。軍用輸送機の多くが旅客機同様にセミモノコック構造を採用している。
  7. ^ トラス構造は「フレーム構造」とも呼ばれ、モノコック構造(Truss structure)は「応力外皮構造」や「張殻構造」とも呼ばれる。
  8. ^ 旧ソビエト製の航空機では点溶接を採用したものもあったが、今でも世界的には一般的ではない。
  9. ^ DC-10とB-727の後部圧力隔壁は、前部圧力隔壁と同様に平面状になっている。
  10. ^ 与圧が失われる事態で、機内の空気が与圧室の後部などへ吹き出す場合でも、主要な機能が失われずに安全に着陸できるように設計されている。与圧喪失時と同様に、ジェット・エンジンのローターが破損してそれが飛散する「ローター・バースト」時にも安全に着陸できるように、ローター・ディスクから前後3度の角度内とファン・ブレードの前後15度の角度内には重要な装置を置かないようにしており、そこを通るコントロール・ケーブル類の破損も考慮している。
  11. ^ 翼の形状は、時代と共に層流翼型からピーキー翼型、スーパークリティカル翼型へと進んだ。
  12. ^ ジェット機の速度領域では、フィレットによる渦の発生抑止の効果は無いとする考えもある。
  13. ^ 「フィレット」はエンジンナセルやスパッツと同様に「フェアリング」と呼ばれることもある。
  14. ^ 航続距離の長い機体では、翼端部にウイングレットやウイングフィン、ウイングチップと呼ばれる小翼が付くことが多くなっている。これらの小翼によって翼端に生じる渦(翼端渦)を減らし誘導抵抗を減らしている。主翼が長く、先へ行くほど細く(縦横比が大きく)されるのも誘導抵抗を減らすためである。誘導抵抗はさまざまな姿勢での飛行中の全抵抗の内の40 %前後になるため、縦横比を大きくすることが経済的にも重要である。
  15. ^ 翼は上下にたわむことを前提として設計され、円筒形の胴体部は気圧の変化に応じて膨張と収縮を繰り返すことを前提に設計されている。柔軟な翼と変形の少ない胴体という互いに異なる動きをする2種類の金属製の構造材を結合することは、航空機設計において長年のあいだ大きな課題である。コンピュータによる構造計算が行えるようになってから初めて、現在のような厚みのある中央翼構造で強度が保たれたが、それ以前は力学的な変形の影響が互いに及ぼし合わないないように、翼は胴体部分にいくつかの大きなヒンジで結合されていた。
  16. ^ エンジン位置は、その他にも燃料系統の配管位置による安全性やエンジン停止時の推力バランス変化の影響、ジェット後流の翼面への影響などが考慮される。
  17. ^ エンジンの信頼性が向上したため3つのエンジンを持った旅客機は姿を消して、2発機と4発機の2形式だけになっており、21世紀初頭現在では経済性の面で優れる2発機が増える傾向がある。
  18. ^ 主翼の翼面荷重に応じて翼の揚抗比が変化し、最適な迎角を取れる高度も変わってゆく。実際の運航では燃料消費によって軽くなった機体と主翼の翼面荷重の減少に応じて、最小の燃料消費となるように巡航高度を少しずつ上げながら飛んでいる。
  19. ^ 大型旅客機では、変動する重心の許容範囲は、客室の長さの4 % 程度になっている。
  20. ^ 主翼には前縁や後縁に多数の動翼があるので、主翼の構造部材は中央を貫くことになり、その箱状構造の内部を燃料タンクとして利用している。主翼内に燃料タンクを持つと、エンジンに近いために危険な燃料配管が短く作れ、飛行中は揚力を生み出す主翼がそのまま燃料タンクの荷重を受けるため都合が良いが、燃料給油後に地上で駐機している間はエンジンと燃料タンクの荷重による翼への疲労が増す。内部の燃料が機体の動静に応じて揺れ動くと飛行が不安定となるため、大きなタンク内には仕切りが付けられている。タンク内の底部にはサンプと呼ばれる水抜きが備わり、燃料に混じって入り込む水を適時排出する。サンプ部分には特に水に対する防錆処理が施される。各タンクは2 %以上の余積を持ち、また万が一タンクに許容量以上に加圧給油が行われてもタンクや機体が破壊されずに燃料が排出される構造になっている。
  21. ^ エアバス社のA380では中央翼内はセンター・タンクになっていない。A380の燃料タンクすべてを満たすことはできず、上限は約31万リットルである。
  22. ^ 中央翼内にセンター・タンクを持つ機体では、主脚はセンター・タンクのすぐ後部に格納するレイアウトが採用されている。
  23. ^ 米国などでは脚は陸上用のタイヤ、水上用のフロート、雪上用のスキッドのいずれであってもすべてを"Landing Gear"(着陸装置)と呼ぶことが多いが、日本では降着装置と呼ぶこともあり、航空法では降着装置と着陸装置の両方が用語が使われている。
  24. ^ エアバスA380は主脚だけで4本の柱に合計20輪のタイヤを持っている。
  25. ^ 主脚に6本もタイヤを持つとボギーが長くなり、前輪で大きな操向角を取ると主脚タイヤに不均一な横方向の力が掛かり、横滑りを強要されるようになる。ボーイング社のB-747の胴体側主脚2本は前脚操向装置と連動した主脚操向装置と呼ばれるタイヤの向きを変える油圧式の装置が備わっている。B-777では、それぞれの主脚6本のタイヤの内、後ろの2輪に油圧式の主脚操向装置装置が備わり、前脚の操向角度が10度以上になるとこの2輪のタイヤだけ向きを変えるようになっている。
  26. ^ ストレッチ・アクリル板はアクリル板を加熱した状態で、縦横それぞれ1.7倍程度に引き伸ばしたものであり、樹脂の分子配列を整列させることで割れにくくしている。
  27. ^ ボーイング社のB-737、B-767、B-777では操縦席側面の窓が横にスライドして開く。窓が開かない機体では別に天井などに非常脱出口が備わっている。
  28. ^ 機軸に対して前方15度以上の角度を持った窓のすべてについては、巡航速度で4ポンド (1.8 kg)の鳥が衝突しても突き破れない強度が要求される。
  29. ^ 高空を飛行中に客室のドアが開いたり失われると空気と共に固定されていないものが機外に放出され、同時に与圧が短時間で失われされるために乗員や乗客が失神や障害を受ける可能性が高い。
  30. ^ 非常時には搭乗者全員が90秒以内に機外へ安全に脱出できるよう義務付けられている。外部から開くことができるドアには、ドアの周囲を外面の色と反対の色で塗装することが義務付けられている。
  31. ^ 非常脱出用のドアに関しては、大きさと取り付け位置、一定時間内で脱出可能な人数などが厳格に規定されており、これが機種ごとでの営業運航可能な最大乗客数の上限となることが多い。ギャレー用の荷物の搬入出のためにサービスドアという名称のドアも設けられることがあるが、客室フロアのものは乗員乗客用のドアと同様に機体の左右対称に備えられたまったく同じ構造であり、緊急時には非常用の脱出口となる。
  32. ^ 1970年代の第3世代ジェット旅客機からは、客室のドアは非常脱出口としての機能が求められるようになり、左右対称に多くのドアが備えられるようになっている。
  33. ^ エアバス A380では全2階建てになったことで胴体の断面形状が縦長になり、そのまま先頭部の1階と2階の中間の高さに操縦室を設けることで良好な視界を確保できた。
  34. ^ 過去には航空機関士席が操縦室の右後方にあったが、21世紀現在では左側の機長と右側の副操縦士の2名で操縦するのが一般的になっている。
  35. ^ 操縦士達は飛行中は最低でも1人が操縦席で操縦を担当するように求められており、2人の操縦士のいずれかがトイレなどで席を離れる場合には、操縦席に残る者はそのたびに酸素マスクを装着するよう義務付けられている。操縦席で交代で食べる食事も食中毒の危険性を最小限にするため、異なるメニューを摂ることが義務となっている。
  36. ^ 乗務員用休憩室の機内位置については、長距離路線用の大型旅客機を製造している航空機メーカーによって思想が異なる。エアバス社では床下貨物室への出入り口と共にUL3コンテナを左右2個つなげた休息専用のコンパートメント・モジュールや乗客用設備を開発して必要に応じて1個以上を搭載するとしているのに対して、幅広い胴体のB-777を持つボーイング社では、貨物料金収入を減らさずに済む屋根裏の空間を利用した乗務員休憩室を設けている。例えばA340-500と-600では大きめのコンパートメント・モジュールを積み込めるようになっており、実際にルフトハンザ航空のA340-600では客室床下の貨物室には乗務員用休憩モジュールとその手前には乗客用洗面所モジュールが搭載されている。ただしエアバス社でもA380では客室と同じフロアに乗務員用休憩室が設けられている。
  37. ^ 乗客用の座席は、耐空性審査の規定によって、乗客1人が体重77 kgとして想定した場合に、機体が10度の横滑り状態で前方方向に対する16 Gまでの加重と、30度の横滑り状態で同じく14 Gまでの加重に瞬間的に耐えることが求められる。
  38. ^ 機内エンタテイメント・サービス・システムも提供番組数が増えると配線数が膨大となるため、客室への配線などをまとめるための共通規格がある。"ARINC 429"が古い規格であり、"ARINC 629"が新しい規格である。
  39. ^ 日本の旅客機では、NTTによる「機内公衆電話」として下り900 MHz / 上り940 MHzのSSB方式1チャンネルの無線電話機が搭載されており、日本国内6ヶ所の地上局を経由して通話が可能になっている。
  40. ^ 化粧室を男性用と女性用に分ける場合もある。
  41. ^ LD-3コンテナは米国航空輸送協会 (ATA) の規定であり、世界的な標準となった。
  42. ^ 従来は、火災検知器と消火装置と言うC級と、通気を制限して火災を閉じ込めるだけのD級という2つが耐空性基準の耐火性規定に存在していたが、1998年からはD級が廃止されてC級だけになった。
  43. ^ 旅客機用タイヤは例えば4発ジェット機では着陸時には最大400 km/hの速度に耐える必要があり、これは静的荷重で22トン、動的荷重では32トンになる。
  44. ^ ジャンボジェット機のタイヤでも直径1.3 m、幅50 cmに過ぎない。
  45. ^ トレッドの溝は、一般に4 - 6本の直線的な溝が付けられている。
  46. ^ 21世紀現在の航空機用タイヤのすべてはナイロンを内蔵している。このナイロンを使用したタイヤは、格納庫などに数日駐機することで機体の静荷重を底面となっていた特定個所で受け続け、ナイロン・フラット・スポットと呼ばれる変形を起こす。この変形は滑走中に振動を起こすので乗員乗客に不安や不快を招く。寒中で内圧が低下した状態ではより激しくなり、25 - 50 %もの変形となる。飛行前であっても機体をわずかに移動させ、スポット面を上になるようにすれば1時間ほどで修正される。長期の駐機では2日ごとに少し移動させるなどの配慮が求められる。
  47. ^ 少数派ではあるが、ボーイング社のB-727のように前輪にもブレーキを備えるものがある。ブレーキ・ペダルの踏み込みによって最初に主脚のブレーキが働き、ペダルをさらに踏み込むことで押し下げの後半から前輪ブレーキが働き始める。
  48. ^ 今日では自動車でも一般的になっているアンチスキッド装置 (ABS) も、元々は航空機の着陸時に安全に短い距離で機体を停止させるために開発された技術である。
  49. ^ 小型機では衝突防止灯が赤色になる。
  50. ^ 与圧は、従来は最大高度2,400 m相当で機内気圧が維持されていたが、A380やB-787では高度1,500 mに相当する、より地上に近い圧力を維持するようになっている。
  51. ^ 機内を常に1気圧に保つと、膨張収縮を前提としたセミモノコック構造の金属疲労を大きくして機体寿命を縮めるため、人に影響のない程度まで減圧を許容している。
  52. ^ 昔のレシプロエンジン機では、空調用の圧縮機を搭載していた。
  53. ^ B-787では電動圧縮機を備え、翼の防除氷は電熱式になっている。
  54. ^ ジェットエンジンは、ファンの回転軸より歯車によってエンジンコア外に回転力を取り出し、発電機や燃料ポンプオイルポンプといった補機類が一体となったAGB(Accessary Gear Box、補機駆動用ギアボックス)を駆動している。エンジンの回転数は一定ではないため、定速駆動装置 (Constant Speed Drive, CSD) によって回転数が一定になるよう調整された後、交流式発電機に回転が伝えられる。
  55. ^ 例えばB-747型機の4つの発電機はそれぞれが60 kVAを発電することで150 - 200 kVAの最大消費電力に対応する。地上で一般的な50 / 60 Hzより高い周波数の400 Hzにすることによって、電圧変換用トランスのコアを小さく軽量化できるためである。発電機は通常、並列運転されて支障が無い限りすべてが単一の電力母線に接続される。異常がある交流式発電機は電力母線から切り離される。それぞれの発電機は互いの有効出力と無効出力が等しくなるように、位相と負荷が制御される。
  56. ^ エンジンの回転軸からギヤで駆動される交流式発電機では周波数変動が生じるために、1930年代からのCSD(定速駆動装置)や、1970年代以降にはCSDと発電機が一体になったIDGが導入されたこともあり、また1970年代以降には発電機は自由に回転させておいて半導体素子によって一定周波数を作るVSCF(可変速・定周波)も一部で導入されることもあったが、1990年以降は、変動する交流周波数をそのまま主電源として電力消費は大きいが周波数の変動に影響を受けない機器だけを接続する方式が増える傾向がある。
  57. ^ オイルポンプは必要に応じて送り出す量が調整できる可変吐出量型であり、また、大型機では長大な油圧配管そのものがアキュムレータの働きをするため、アキュムレータを持たないことがある。例えば駐機中の脚のブレーキ・システムのように、ポンプを停止した状態でも、アキュムレータによって油圧システムは加圧状態が維持できるようになっている。
  58. ^ 圧縮空気系統は基本的に完全な多重化はされていないが、いずれか系統の一部が機能を失ってもマニホールド間のアイソレーション・バルブで連絡することで影響の極小化を図るなど、できるだけ飛行に支障が出ないように工夫されている。
  59. ^ B-787では、ゼネラル・エレクトリック社のGEnxエンジンとロールスロイス社のトレント1000エンジンの両方でニューマチック用の高圧空気の抽気システムと圧縮空気式の始動タービンを廃止して、代わりに電動スターターを兼ねた発電機を強力にして、従来は抽気した高温高圧の空気を供給していた機内与圧の空調システムや主翼前縁などの着氷防止システムへは、電動ポンプや電気ヒーターによって対応している。
  60. ^ 鋭角な突起先端を丸くすることで電荷の集中を避ける。
  61. ^ 燃料の残留を正確に知ることは、経済的な飛行を行うためだけでなく、滞空可能な時間の限界を知ることで安全確保にも重要である。多くの大型航空機では、機体の傾きなどを考慮して、1つのタンク内での複数箇所の静電容量センサーによる残油面の高さからコンピュータでできるだけ正確な残油量を計測している。幾つかの新しい機体ではタンク内の燃料密度を測るセンサーを備えるものもある。
  62. ^ 日本では民間航空機の非常用設備は「耐空性審査要領」で規定されている
  63. ^ 客室乗務員はドアモードの変更時には、シューターがドア開口部下縁にラッチでつながれてドアを開けばシューターが膨らんで素早く避難できるようにするか、又は、地上で降機する時点では、つながれたものを外してドアが開いても膨張しないようにしている。
  64. ^ 与圧が失われる事態とは、おおむね14,000フィート以上の高度での気圧を意味している。これに相当する気圧より機内が低くなるとダイヤフラム式のアネロイド・スイッチが接続されて、自動的に乗客用緊急酸素装置のドア開放機構が作動し、ビニールチューブにぶら下がったマスクが座席の頭上部分から落ちてくる。乗務員の操作でも同様に起動できる。乗客用のものは概ね固体式の酸素発生装置であるが、この状態でもまだ酸素発生装置は酸素を発生していない。幾つかのマスクごとが1組となって1つの酸素発生装置を共有しており、いずれか1つでもチューブが引かれることで化学反応が始まる。高圧式や液体式のものでは床下などに集中式のボンベが置かれ、配管によって頭上に導かれている。この形式では1つ1つのマスクが各々小型のバルブを開放するためのピンに接続されており、引かれたマスクからのみ、酸素が供給される。
  65. ^ 乗客用の酸素マスクにはリザーバと呼ばれる袋が付いていて、酸素を一時的に蓄えることで細かな調節を省いて細い管から連続的に供給している。
  66. ^ 乗員用の酸素ボンベは酸素を示す緑色に塗られ機体の長軸に直角にボンベの端を向けて設置するなどが規定されている。
  67. ^ 客室用の緊急用酸素には化学式酸素発生装置が使用されることが多い。これは塩素酸ナトリウムや塩素酸カリウムの粉末を金属容器に詰めておき、内部の電気ヒータや電気雷管で点火することで徐々に酸素と塩化ナトリウムや塩化カリウムに化学反応が進む仕組みになっている。一度反応を開始すれば容器は高温となって停止もできないが、薬剤は(一応十年程度の保証期間が設定されているが)実質的には半永久的に安定した品質が保たれるために、打撃信管も用いることで動作に確実性がある。ポータブル用酸素発生装置としても用いられる。他にも極低温を保つボンベごと飛行ごとに交換する液体酸素式のものもある。
  68. ^ B-777やA321では飛行時の風圧を利用する「ラム・エア・タービン」(Ram Ait Turbine; RAT) が主脚ドアの右後方に備わっており、非常時には機外に展開されて交流電力と油圧を飛行に必要な機器に限って供給する。B-767では油圧によって発電する「ハイドロ・ドリブン・ジェネレータ」(Hydrau Driven Generator; HDG) を備え、非常時には交流と直流を供給する。
  69. ^ 洗面所手洗水と調理用排水はドレーンマストによって機外に排出される。胴体部の燃料タンクと機内の燃料配管すべてには万一の漏洩時でも機体内に滞留しないよう二重壁や二重鞘で覆われているが、漏れた燃料を機外に捨てるドレーンマストには凍結防止対策は行われていない。
  70. ^ 小型のレシプロエンジン機では、燃焼ヒーター式と呼ばれる翼内で燃料を燃やし前縁部に導く方式もある。前縁部にデサイア・ブーツと呼ばれるゴム製の覆いを取り付けておいて、圧搾空気を吹き込むことで膨張・収縮を起こすことで防除氷を行うものもある。いずれも21世紀現在ではあまり用いられない。
  71. ^ 機体に溜まった静電気はコロナ放電を起こして通信妨害となるため、スタティック・ディスチャージャから常に空中に少しずつ放電する必要がある。
  72. ^ レドームは主に強化プラスチックのハニカム構造のものが使われている。
  73. ^ 従来のINSでは、センサ類が3軸方向で自由に回転するジンバル上に固定されていて、地平面に垂直な方向、または地球の南北方向のいずれか一方向に常に向きを合わせておくために、機の移動に合わせて連続的に修正されていた。
  74. ^ センサを乗せたプラットフォームを機体に固定する「ストラップダウン方式」は、B-767から採用が始まった。
  75. ^ 地球は常に1時間当たり約15度の角度で回転しており、これを地球自転率として補正する。
  76. ^ 機体が飛行することで地球方面を移動する。その分を移動率として補正する。
  77. ^ 磁気コンパスは微弱な地磁気の方向を検知するため、これを狂わさないように機体の部品すべては脱磁されて組み立てられる。
  78. ^ 電波高度計の計測方式は2種類ある。1つはパルスを下方へ向けて送信し反射波の遅れ時間を計測する「パルス方式」である。もう1つは三角波発生装置の出力で周波数を変調し、周波数を変えながら下方へ向けて送信し継続的に反射波と送信中の信号との周波数のずれを計測すること反射波の遅れを知り距離とする「FM方式」である。
  79. ^ 小型飛行機のオートパイロットだけを備えるが、大型旅客機ではオートパイロットにフライト・ディレクタが組み込まれたAFCS全体がオートパイロットと呼ばれる。
  80. ^ 21世紀現在では新たに製造されるすべての大型旅客機がフライ・バイ・ワイヤ (Fly-by-wire; FBW) 方式による操縦システムを採用している。FBW以前の操縦システムでは、操縦桿やペダルの操作量をケーブルやロッドといった機械的・物理的な動きとして油圧作動機構に伝え、油圧によって操縦翼面を動かしていた。FBW方式では操縦桿やペダルの変位量はセンサーによって電気信号に変えられ、ケーブルやロッドに代わって電線によって伝えられ、電気制御によって油圧システムが操縦翼面を動かす。ほとんどのFBW方式では、操縦士の操作が電気信号に変えられた後、コンピュータによる一定の「制御側」を受けて、操縦翼面への制御指令となる。制御側は、例えば高速飛行時と低速飛行時では同じ操作量でも舵角を変えたり、ロール時やピッチ時に手を離せば当て舵を必要とせずにそのロールやピッチを維持するなどがある。フライ・バイ・ワイヤーに限らず油圧動力などの機械力によって操縦翼面を制御する場合には、操舵の感覚を操縦士にフィードバックさせるためのバックドライブ制御と呼ばれる人工感覚システムが備わるのが普通である。フライ・バイ・ワイヤーの電線の代わりに光ケーブルを使ったフライ・バイ・ライトも開発途上である。
  81. ^ 左右推力の不均衡是正や前後重量の偏り是正のような調整はトリム (Trim) と呼ばれる。
  82. ^ EFISのPFDは従来のEDAI(電子式姿勢指令指示器)が、NDは従来のEHSI(電子式水平位置指示器)がそれぞれ置き換わったものであり、画面が大きく見やすくなったのに加えて新たな情報も表示できるようになり、不要ならば情報表示を行わないこともできる。
  83. ^ B-777ではDMUとMOによるデータ記録装置に加えて液晶ディスプレイ、キーボード、トラックボールが備わっている。
  84. ^ エンジン停止のような重大なトラブル発生時には音声通話で報告がなされ、搭載機器の軽微な不調は飛行中のACARSによる送信では送られない、また不調となった箇所の整備能力が到着地に備わっているとは限らないため、飛行性能モニター・システムの活用で目的地ですぐに修理や整備等が行えることはそれほどないとされる。
  85. ^ 機上の装置類の作動状態を示す動作状態表示灯は、総称してアナンシエイター (Annunciator) と呼ばれ、単なる動作中は「青」、正常時は「緑」、故障や異常時には「オレンジ」に点灯する。

出典

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