緊急着陸の決断と準備
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/08 06:45 UTC 版)
「ユナイテッド航空232便不時着事故」の記事における「緊急着陸の決断と準備」の解説
15時32分、TCA機長が客室乗務員達はゆっくり準備をしていたと伝えた。これを受けて機長は不時着の可能性を示唆し、備えを急いだ方がいいと答えた。まもなく、機長はスー・ゲートウェイ空港の進入管制官に、油圧の作動液を失い昇降舵を制御できないこと、そして滑走路にたどり着けず不時着する可能性があることを伝えた。ユナイテッド航空の運航管理部門も直接スー・ゲートウェイ空港の管制塔に連絡し、緊急着陸、消火、救命の準備を要請していた。 15時34分、機長はスー・ゲートウェイ空港に着陸を試みる決断をした。機長は、航空機関士に高揚力装置を使用せず着陸する場合の情報を求め、進入管制官に計器着陸装置の周波数および滑走路の方向と長さを問い合わせた。管制官は周波数を回答し、UAL232便の現在地と進路、そして滑走路31の長さを伝えた。このとき、UAL232便はスー・ゲートウェイ空港から北東約35マイル(約65キロ)の地点にいた。 15時35分、機長は急速投棄で燃料を放出するよう航空機関士に指示した。燃料は自動投棄の下限である3万3,500ポンド(約15トン)まで放出された。15時38分、乗員の一人が「クリーン形態(高揚力装置と降着装置を格納した状態)の進入操作速度は200ノット(時速約370キロ)だろう」と発言した。副操縦士が、機長に200と185にバグ(速度計の縁にある可動式の目盛り)をセットするよう求めた。 15時40分、機長は先任客室乗務員に、客室は全員準備できているか尋ねた。機長は、この乗務員に油圧系統の喪失により機体をほとんど操縦できないことと、スーシティに向かっていることを伝えた。続けて、難しい着陸で結果がどうなるかわからない、そして脱出を成功させられるかもわからないとも述べた。機長は、着陸へ備える時になったら客室へ警報放送「ブレース、ブレース、ブレース」を流すと伝えた。「ブレース(Brace)」とは、衝撃を低減するために体を前に折り曲げる不時着時の姿勢のことである。 15時41分、空港の進入管制官からUAL232便に、非常用設備は待機中だと連絡が入る。続いて、翼の損傷を目撃した客室乗務員がいると航空機関士が報告した。航空機関士は後部に確認に行くか尋ね、これを機長が許可した。航空機関士はコックピットを離れ約2分半後に戻った。彼は機体の尾部に損傷があると報告し、機長は「それこそ私が考えていたことだ」と言った。 15時48分、降着装置(ギア)が降ろされた。油圧が使えないため、重力を利用する予備(alternate)の方法でギアが降ろされたとパイロット同士が会話している。15時49分、機長はパイロットたちに座席のベルトをしっかり締め、周囲を片付けるよう指示した。TCA機長は航空機関士席でベルトを締め、スロットルの操作を続けた。
※この「緊急着陸の決断と準備」の解説は、「ユナイテッド航空232便不時着事故」の解説の一部です。
「緊急着陸の決断と準備」を含む「ユナイテッド航空232便不時着事故」の記事については、「ユナイテッド航空232便不時着事故」の概要を参照ください。
- 緊急着陸の決断と準備のページへのリンク