緊急経済安定化法案
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/03 03:19 UTC 版)
「世界金融危機 (2007年-2010年)」の記事における「緊急経済安定化法案」の解説
アメリカのジョージ・ブッシュ政権は2008年に最大7000億ドルの公的資金を投入する法案の策定に着手した。法律番号 H.R.1424(英語版)にあたり、不良資産救済プログラム(英語版)(TARP)や緊急経済安定化法が作成された。事前に議会指導部と政府は合意しており、9月29日の法案成立は確実とみられていた。しかし、共和党の議員はアメリカの伝統的な自己責任の価値観にもとづいて多数が反対票を選んだ。このため予想に反してブッシュ大統領自身が属する共和党の反対によって下院で否決された。この日のニューヨーク証券取引所のダウ平均株価は史上最大となる777ドルの下落を記録し、世界中でも信用収縮が起こった。 その後、緊急経済安定化法案は修正を加え、10月3日午後1時に下院の民主党議員の74%、共和党議員の46%が賛成して可決した。しかし当日の米国株は後場急落し、翌週10月6日から10月10日の1週間は世界の株式市場は大きく下落した。10月8日には欧米の中央銀行が協調利下げに踏み切り、ヘンリー・ポールソン財務長官が金融機関への公的資本注入を示唆したが、株価の下落は止まらなかった。10月10日は、株価変動確率の激しさを表すボラティリティインデックス(VIX、通称恐怖指数)と呼ばれる指数が、1997年のアジア通貨危機の約38、2001年のアメリカ同時多発テロ事件の約45を上回って75を超えるなど、市場は混乱した。財務省・FRB・連邦預金保険公社(FDIC)は主な9銀行への公的資本注入を検討し、13日の銀行との会合で承認を得た。製造業大手ではクライスラーとゼネラルモーターズ(GM)が破綻の可能性に陥り、GMは事実上国有化された。しかしGM、フォード、クライスラーの各首脳は、11月に公的支援を求めてアメリカ議会の公聴会に出席した際、自家用ジェット機を使用したため議員から批判された。
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