経済史概要
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 11:14 UTC 版)
韓国の経済は朝鮮戦争の激戦でインフラが破壊されたことによって1960年代前半までは大きく立ち後れていたが1960年代後半から始まる漢江の奇跡以降は成長を続け、2021年時点の経済規模(GDP)は世界10位、先進国内では8位の規模を持つ。主要な産業は電子機器、IT、造船、鉄鋼、自動車など。1962年から1994年の間、年20%の輸出の伸びを記録し毎年平均GDPが10%成長した。高度経済成長を遂げ、新興工業経済地域(NIEs)のひとつに数えられた時期を経て、1996年にOECD(経済協力開発機構)加盟、アジアで2番目の先進国となった。 1997年にはアジア通貨危機により韓国経済は大きな危機に直面し、大量倒産や失業と財閥解体が起こり、外資導入と市場の寡占化が進んだ。大手輸出企業や銀行の株主の多くは外国人になった。2000年ごろには一時期な経済の立ち直りがあったものの、政府の金融政策のためクレジットカードを大量に発行した余波もあり、2003年ごろには個人破産が急増して国内での信用不安が高まり、金融が危機的状態となった。2008年時点では大学新卒者が正規社員として働くのは困難であり、2009年大卒者就業見込みは55万人中4万人だけであった。徴兵義務や就職難のため、優秀な若者は韓国国内の経済状況に関わらず海外への脱出を目指す傾向が強いが、経済的苦境のためにますます国を離れて米国や日本の企業に就職する若者が多くなっており、頭脳流出が懸念されている。 大手製造業である財閥系輸出企業は好調であるが、韓国全体の雇用に寄与しておらず、内需はきわめて停滞しており、韓国国内においては財閥系企業の寡占が問題となっている。2008年時点で、韓国の国内総生産の18%、輸出の21%を三星財閥ひとつで占めていた。このため、社会では「二極化」という言葉がよく使われるようになり、経済的格差の拡大が問題となっている。 2000年ごろから富裕層向けの高層マンションブームとなり、2002年から2012年までの10年間に不動産価格は68.5%上昇した(日本のバブル景気とほぼ同率)。これらは一時低迷したものの2018年には不動産高騰によるバブル経済に突入し、2022年におけるソウルの一般マンション平均価格は1億6000万円前後を推移、年8%の継続的な物価高騰が続くものの、いずれも賃金上昇率に見合わないため社会問題化している。 2007年ごろには、韓国の製造業が、技術的に先行する日本と、大量生産により追い上げる中国の存在に追い込まれるのではないかとする「サンドイッチ現象」への懸念が持ち上がっていたが、2010年ごろから2012年末までに続いた超円高や、2011年のタイの大規模洪水や東日本大震災などの天災で、日本の製造業が大規模な被害を受けたため、韓国の製造業は大きく業績を伸ばした。特に好調なサムスン電子は売り上げ高と利益を伸ばし、世界最大のエレクトロニクス・テクノロジー企業となっている。また現代自動車は欧米先進国における自動車販売台数を急激に伸ばし世界3位の自動車メーカーとなった。 主要な産業は情報技術、造船、鉄鋼、自動車などである。主要な企業としては、サムスン電子や、現代自動車、LG電子、ポスコ、現代重工業などがある。リーマン・ショック以降、ウォン安政策によって輸出が伸び、2011年には韓国の貿易依存度は対GDP96%となった。2011年度の統計によると、核心技術や素材、部品産業を日本に依存しているために、日本との貿易収支は208億ドルの赤字である、また好調な輸出に支えられて、韓国の総貿易収支は452億ドルの黒字であった。 2018年10月時点での国内総生産は世界11位であり、近年は知的財産への投資も増加している(韓国の知的財産権問題も参照)。 2020年最低限の住宅基準以下の世帯は4.6%に改善、 2010年の10.6%の半分以下になる。 一向に解消されない財閥企業への一極集中により若者の就職難や格差問題が続いており、2015年ごろから韓国のSNSでは「ヘル朝鮮」という言葉が流行語になり、韓国内外の複数のマスコミにも報道される事態となっている。2018年時点で従業員300人未満の中小企業が国内の労働者全体の87%に相当する1300万人を雇用している。最低賃金上昇など人件費負担や政府の政策に反発する中小企業の国外脱出が増加している。行きすぎた最低賃金引き上げによる副作用の補填に8兆ウォン(8000億円)を投入する事態になっている。
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