第1波 大阪モデル発表
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/16 15:05 UTC 版)
2020年(令和2年)に流行した新型コロナウイルスを巡っては、1月31日に感染防止のため、関西国際空港に入国した中国からの乗客に災害備蓄用のマスク10万枚を無償配布することを決めた。 3月13日には、「新型コロナの特徴や弱点が見えてきた。(感染が)急拡大する環境を作らず、社会活動を再開させることも重要。経済活動を戻すべき時期と判断した」と述べ、府主催のイベントや休館中の府の屋内施設を21日以降順次再開する方針を決めた。しかし、3月19日に厚労省から提供された資料から独自に判断をして、20~22日の3連休について「兵庫で爆発的な感染がいつ起きてもおかしくない。大阪も増えており警戒しなければいけない」として「大阪と兵庫間の不要不急の往来は控えてほしい」と呼びかけた。この呼びかけは兵庫県への事前相談もなく行ったため、井戸敏三兵庫県知事も同日、吉村の対応に不快感をにじませた。また、大阪府は翌20日に「具体的に大阪が挙げられており、専門家の提案や試算は重く受け止める必要がある」として府主催のイベントの自粛を4月3日まで延長する方針を決めた。 吉村は同日、厚生労働省の専門家の試算が盛り込まれた非公開前提の文書を公開したが、文書には「大阪府・兵庫県内外の不要不急な往来の自粛を呼びかける」と太字で記載されており、「両府県内外の往来」がなぜ「府県間の往来」に変わったのかについて吉村は「(厚労省提案の)文字面を読めばそうなる」「普通の日本人が読めば大阪、兵庫間の往来と読める」と述べ理由を明らかにしなかった。しかし、厚労省は「趣旨は2府県間の往来ではなく一般的な外出の自粛呼びかけだった」と説明し、府庁内でも「単に文言を読み間違えたのではないか」との指摘が相次いだ。その後、吉村は「政治判断で大阪と兵庫に絞り込みをかけた」と主張した。また、兵庫との往来のみを自粛要請したことで、結果的に京都府への人出が増えた。 兵庫県は24日に自粛期間を31日まで延長することを決めたが、吉村は26日、「大阪府内での今の感染者数の推移では、今週末に外出の自粛をお願いすることはない」と述べ、府内では現時点で、外出の自粛などを求める状況にはないという認識を示した。しかし、27日に一日としては最も多い20人が新型コロナウイルスに感染していることが確認されたことを受け、同日午後8時半に翌28日、29日の週末の2日間の不要不急の外出自粛を呼びかけた。 4月7日には、大阪府を含む7都府県について国が緊急事態宣言を発令したことを受け、同日以降、改めて府民に対して外出自粛を強く求めた。娯楽施設の休業要請については、「2週間から3週間の間に効果が見えてくる。それを踏まえて、使用制限を判断する」と述べ、経済への悪影響を懸念して対象を絞りたい政府に配慮する形ですぐさまに実施することを見送っていたが、10日に東京都が政府を押し切る形で幅広く休業を求める方針を決定したため、同日、前倒しして13日に実施するかどうかを判断する方針を明らかにした。 4月14日には、新型コロナウイルス感染症における予防ワクチン・治療薬などの研究開発のため、大阪府が大学や医療機関、大阪市などと連携・協定を締結したことを発表し、この中で吉村は「ワクチンの治験については、早ければ7月から開始予定。9月から実用化に向かう。年内には10万から20万単位でワクチン投与させる」と述べたが、同年11月には接種開始時期について「来年春から秋ごろになると聞いている」と見通しを修正している。 5月5日には、政府が休業要請の解除基準を示さないことを理由に、大阪府独自に「大阪モデル」という数値的な指標を掲示した。主な自粛緩和の基準として「新規感染者のうち感染経路不明者が10人未満」「PCR検査においてコロナ陽性率が7%未満」「重症患者用の病床使用率が60%未満」という3つの条件を7日連続で達成した場合、大阪府内の自粛要請を慎重に経過観察しつつ段階的に解除すると発表した。吉村はこの中で政府に対し「具体的な基準を示さず、単に(緊急事態宣言を)延長するのは無責任だ」などと述べたが、西村康稔経済再生相は、休業要請は都道府県知事の権限で行うものだとする新型インフルエンザ等対策特別措置法の内容を説明し、「(吉村氏が)自身で説明責任を果たすのは当然だ。何か勘違いされているんじゃないかと思う」と不快感をあらわにした。この指摘を受けて吉村は後日、謝罪を行った。また、京都府の西脇隆俊知事は「関西モデル」を作れなかったのかとテレビ番組で問われた際、「(大阪から)根回しや相談はなかった」と説明した。 吉村は大阪モデルの発表にあたり、「具体的な数値や割合を出して、判断ができるだけ恣意的にならないように」と述べていたが、5月23日にはモデルの基準を一部変更。この変更に当たっては、記者会見も、専門家を交えて協議する対策本部会議も開かれなかった。これを受け京都大学iPS細胞研究所所長の山中伸弥は「結果を見てから基準を決める。科学でこれをすると信頼性が揺らぎます」「府の対策が、科学から政治に移ったことを意味します。大阪府民として非常に心配です」と懸念を表明した。6月12日には大阪モデルの再見直しに着手し、会議の中では感染収束のスピードを、直近1週間の感染者数を累計の感染者数で割った数字で予測する「K値」の考案者である大阪大学の中野貴志教授(物理学)が大阪・兵庫の往来自粛や、緊急事態宣言に伴う大規模な休業要請について「効果が無かった」と発言した。吉村はこれらの見解に対し「その時の判断として必要だったと思うが、一つの有力な意見だ」と強い関心を示した。その後の情報公開請求で吉村と中野は6月4日に事前に意見交換をしており、吉村は「専門家会議で、自粛は意味がなかったとどんどん発信してほしい」と要請していたことが明らかとなった。修正版の大阪モデルは7月3日に決定され、①経路不明者数(10人以上、直近7日間平均)②経路不明者数の前週比(2倍以上、同)③直近7日間の累積新規感染者数(計120人以上かつ後半3日間で半数以上)の①~③すべてを満たせば黄信号、④黄信号が点灯した日から25日以内に重症者の病床使用率が70%以上を満たせば赤信号となる内容で、従来のモデルより黄・赤信号を点灯しにくくした。大阪モデルの指標の一部に考え方が採用された「K値」の予測では7月上旬には感染者数がピークアウトする見通しであったが、その後も感染者は増え、K値による感染状況の予測には狂いも生じた。
※この「第1波 大阪モデル発表」の解説は、「吉村洋文」の解説の一部です。
「第1波 大阪モデル発表」を含む「吉村洋文」の記事については、「吉村洋文」の概要を参照ください。
- 第1波 大阪モデル発表のページへのリンク