第1海兵連隊壊滅・歩兵第81師団投入
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「ペリリューの戦い」の記事における「第1海兵連隊壊滅・歩兵第81師団投入」の解説
第5海兵連隊が大きな損害を被りながら攻略した飛行場には、島で激戦が行われていた最中の9月24日は早くも海兵隊の戦闘爆撃機部隊が進出していた。海兵隊のパイロットはペリリューに到着すると即攻撃に出撃したが、飛行場から攻撃目標まではわずか15秒と第二次世界大戦中もっとも距離が短い出撃であった。あまりにも距離が近いため、航空機は離陸後に脚を格納する暇すらなかったという。日本軍は飛行場の運用を妨害するため、飛行場に向けて夜間さかんに攻撃をかけたが、その主力は逆上陸に成功した飯田少佐率いる第15連隊第2大隊の残存兵であった。飯田少佐は3名を一つの班とした斬り込み決死隊を組織し、夜陰に紛れ巧妙にアメリカ軍陣地に迫って斬り込みをかけた。斬り込み隊は地下足袋を履き銃剣と手榴弾だけを持ち、音もなくアメリカ軍陣地に突入するとアメリカ兵を銃剣で刺殺し、発見されると手榴弾で自爆するといった決死の攻撃であったため、アメリカ軍も対策に苦慮し、二世兵士を使って「勇敢な日本兵の皆さん、夜間の斬り込みは止めて下さい。あなた方が夜間の斬り込みを中止するなら、我々も艦砲射撃と爆撃を中止します。」という放送を戦車に取り付けたスピーカーを通じて行い、ビラもばらまいたが、かえって日本軍の士気を高めただけだった。日本軍の斬りこみによりアメリカ軍の飛行場要員にも100名以上の死傷者が出たが、飛行場の稼働を止めるまでには至らなかった。 第1海兵連隊は強力な航空爆撃と艦砲射撃に支援されながら、引き続きファイブ・シスターズ陣地の攻略を目指したが、損害ばかりが拡大し進撃は捗らなかった。ファイブ・シスターズという呼び名は、ペリリュー中部に連なる山岳地帯で5つの低い尾根が連なっている場所を称して名付けたものであるが、その連なる尾根には中川大佐指導の下で地形を最大限に利用して構築された、何重にも渡る縦深複郭陣地が待ち構えていた。この陣地への攻撃でガダルカナルで海軍十字章などの表彰を受けた歴戦の海兵隊員も多く命を落とした。そのような過酷な状況で、海兵第1連隊のC中隊は激しい戦闘の上、死傷者続出で中隊が90名に激減しながらも、標高100mの尾根ウォルト・リッジの頂上に達した。しかしそこは他の尾根や日本軍陣地から丸見えで、四方八方から集中射撃を受けた上に、頂上奪還のために反撃してきた日本軍との激しい白兵戦となった。ここでも今まで戦われてきた白兵戦と同様に、日本兵は銃剣や軍刀で斬りかかり、アメリカ兵は銃の台尻や時には素手で殴るといった激しい肉弾戦が戦場のあちこちで繰り広げられた。その後頂上を丸1日確保したC中隊であったが、最後は手りゅう弾を投げ尽くし石を投げるところまで追い詰められるほどボロボロになって頂上からの撤退を余儀なくされ、その際の残存兵力はわずか9名になっていた。第1海兵連隊は激戦の中で傘下の第1大隊が壊滅したため、第2大隊と合流させたが、それでも通常の1個大隊分の基準兵力には大きくおよばなかった。連隊内部での人員のやりくりも限界に達しており、ついには炊事兵・ジープの運転手・憲兵・会計担当までを第一線に投入したが、士気や練度が低くまともな戦力にはならなかった。 9月21日に第3海兵水陸両用部隊司令官ロイ・ガイガー少将が戦況把握のために海兵第1連隊司令部を訪れたが、その惨状を見て言葉を失った。ブラー大佐はガダルカナルで受けた古傷により歩行できなくなっており、担架に乗りながら作戦指揮をしていたが、疲労で憔悴しきっていた。兵員も約3,000名の連隊の定員の内1,749名が死傷しており、第1海兵連隊はアメリカ軍史上最も激しい損害を受けた連隊となっていた。傘下の大隊の内、第1大隊の死傷率は71%に達しており事実上全滅していた。配下のライフル歩兵3個中隊(1個中隊は通常240名)の残存兵員は74名しかおらず、上陸時の小隊長は一人も残っていなかった。第2・第3大隊もそれぞれ56%と55%の死傷率であり事実上壊滅していた。それでもブラー大佐はファイブ・シスターズ陣地を独力で攻略可能と息巻いていたが、ガイガー少将はその足で師団司令部を訪れると「第1海兵連隊は終わった」と言い放ち、リュパータス師団長に陸軍の増援を求めるよう提案した。しかしこの期におよんでもリュパータス師団長は陸軍の支援を受けることに抵抗を示したが、それに構わずガイガー少将はアンガウルの戦いで日本軍守備隊をほぼ撃破していた陸軍第81歩兵師団(山猫部隊 Wildcat )(英語版)の予備部隊であった第321連隊をペリリュー島に移動させる様命令している。 9月23日に交替が告げられた第1海兵連隊は、25日にはパヴヴ島へ海上移動するために第5海兵連隊が残敵掃討した海岸に撤退してきたが、第1海兵連隊の人数の少なさに第5海兵連隊将兵は衝撃を受けている。第5海兵連隊のユージーン・スレッジ一等兵は第1海兵連隊にいたはずの多くの知り合いの顔が見えないのに愕然とし、ある旧友に中隊が何人残っているのか?と尋ねたところ「たったの20人だ、全滅寸前だった。」という答えが返ってきたが、これは第1海兵連隊に代わってファイブ・シスターズ陣地に駆り出されることとなった第5海兵連隊の将来の姿となった。
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