担架
ストレッチャー
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/09/18 07:42 UTC 版)

車載用ストレッチャー
(アメリカ)
ストレッチャー(英語: stretcher, 日本語: 担架〈たんか〉)は、自立歩行や車椅子での移動が困難な者の搬送に用いられる資機材。メインストレッチャー、サブストレッチャー、布担架などの種類がある[1]。病院で使用されるストレッチャーは病床から手術室などへ移動する際に用いられるほか、 救急処置室では移動の簡便さ・時間短縮を重視して初療台としても用いられる[2]。
種類
メインストレッチャー
メインストレッチャー(メーンストレッチャー)は救急活動における主要資機材である[3]。特に心肺停止傷病者に心肺蘇生法を施す場合、サブストレッチャーや布担架のままでは姿勢や背面の剛性の関係で、適切な強さと深さによる胸骨圧迫の継続的な実施が困難である[1]。
アンビュランスタイプストレッチャーとロールインタイプストレッチャー(エクスチェンジタイプストレッチャーやスカッドメイトタイプストレッチャーなど)がある[3]。
- アンビュランスタイプストレッチャー - 脚の折り畳みがなく、固い構造であるため、心臓マッサージ時に力が逃げにくい[3]。他方で固い構造のため路面の振動が直接傷病者に伝わる[3]、脚は折り畳めないので隊員が救急車等に持ち上げて収容する必要があるなどのデメリットもある[3]。
- ロールインタイプストレッチャー - 脚を折り畳めるため救急車への車内収容や救急車からの車外搬出の労務負担が少ない[3]。他方で脚構造が複雑なため、質量が重くなったり、搬送途上に変形した場合に高さの調節が困難になるなどのデメリットもある[3]。
サブストレッチャー
狭隘な場所や階段搬送にも使えるストレッチャー[4]。椅子型に固定して傷病者を坐位で搬送することもできる[4]。
なお、階段搬送ではサブストレッチャー以外に階段搬送用ストレッチャーがある[5]。また、サブストレッチャーよりも簡易なものに椅子状で2人で計4か所の持ち手を持って搬送するレスキューシートがある[6]。
布担架

布担架は傷病者の屋内での搬送、階段や狭隘な場所での搬送に用いられる[7]。病人や負傷者を搬送するため枠に麻布などを張った持ち手部分をもつ器具である[8]。
布担架についてはポリエステル繊維を塩化ビニールで覆ったターポリン製のものが多くなっていることからターポリン担架ともいう[7]。
担架による傷病者の搬送法を担架搬送法という(背負ったり横抱きにするなど担架を用いない搬送法は徒手搬送法という)[9]。担架は原則として傷病者の足側が進行方向に近いほうに向けて搬送する[9]。ただし、階段など傾斜がある場所の移動の場合は、傷病者の頭側が高いほうにくるように移動する[9]。
その他の種類


- バックボード - 主に外傷傷病者を固定するための木製あるいはポリエステル製の器具で、両側にストラップのピンを掛けたり搬送時に持ち上げるための穴がある[10]。
- スクープストレッチャー - アルミ合金製あるいはポリマー樹脂製で、本体は2分割できるようになっており、傷病者をすくうように収容して固定できる[11]。
- バキュームスプリント - スプリント内の空気を減圧することで、その内部の細かいビーズを使って傷病者の体形に合わせて固定するもので全身用と四肢用がある[12]。
- バスケット型ストレッチャー - 搬出や救出に用いられるもので、その形状から舟型担架ともいう[12]。ポリエチレン製、アルミ製、ステンレス製などがある[12]。
付加機能
陽・陰圧装置付搬送具(アイソレーター)
感染症患者を移送するために、内部気圧を陰圧もしくは陽圧にして隔離した状態で運べるストレッチャーである[13]。英語では、isolation stretcher という呼び名もある。
応急担架
毛布や衣服を利用した応急担架を使用する方法もある[9]。ボーイスカウトやガールスカウトなど団体によって簡便な担架の作り方を講習しているところもある。
いずれの場合も2本の棒に
- 椅子をくくりつけたもの(王様が運ばれるような四人持ちの輿と考えればよい)
- 上着の服を二枚逆にむけ、2本の棒を通すもの
- 二本の棒に毛布を折りたたみながらかぶせたもの(意外と重みに耐えられ、丈夫)
- 均等に紐を二本の棒に括り付けていったもの(あやとりを思い浮かべれば考えやすい)
歴史

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関東大震災の記録映像には、豊多摩郡渋谷町(当時)の日本赤十字病院で活動を行う救護看護婦と、大正12年当時のストレッチャーの貴重な動画が残っている[14]。
脚注
- ^ a b 三橋正典ほか「搬送資器材の選択は,病院前心肺停止傷病者の一カ月脳機能予後に影響を与えるか?―東京都のウツタイン搬送データの分析―」『日本臨床救急医学会雑誌』第18巻、2015年、15-21頁。
- ^ “第1回 済生会横浜市東部病院 救命救急センター | お知らせ | 日本救急撮影技師認定機構”. 2025年1月27日閲覧。
- ^ a b c d e f g 佐藤衛寿ほか「メーンストレッチャーに関する研究」『消防科学研究所報』第40巻、81-88頁。
- ^ a b 安田康晴 2014, p. 25.
- ^ 安田康晴 2014, p. 26.
- ^ 安田康晴 2014, p. 27.
- ^ a b 安田康晴 2014, p. 28.
- ^ ステッドマン医学大辞典編集委員会『ステッドマン医学大辞典 改訂第6版』メジカルビュー社 p.1755 2008年
- ^ a b c d “搬送法”. 富士山南東消防本部. 2021年9月25日閲覧。
- ^ 安田康晴 2014, p. 30.
- ^ 安田康晴 2014, p. 36.
- ^ a b c 安田康晴 2014, p. 39.
- ^ 感染症の患者の移送の手引きについて 厚生労働省健康局結核感染症課長 平成16年3月31日付け健感発第0331001号
- ^ 関東大震災デジタルアーカイブ「日本赤十字病院での救護活動」【動画】
参考文献
- 安田康晴『傷病者の搬送と移乗』へるす出版〈救急現場活動シリーズ〉、2014年6月 。
関連項目
担架
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/05 02:20 UTC 版)
病人や負傷者を搬送するため枠に麻布などを張った持ち手部分をもつ器具。最も基本的な構造としては、人の身長より長い棒またはパイプを左右に配し、その間に丈夫な布を渡して縫いつけたもの。 折り畳み式のものもある。また、傷病者の体を固定するためのベルトを供えたものもある。 かつて日本では、戦乱や災害の折など雨戸の戸板や畳を担架がわりにすることがあったが、雨戸や畳がある住宅が減少したことにより現在ではほとんど見られなくなった。
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