第1段階:溶岩を噴出する噴火
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/13 06:33 UTC 版)
「2010年のエイヤフィヤトラヨークトルの噴火」の記事における「第1段階:溶岩を噴出する噴火」の解説
英語版ウィキニュースに本記事に関連した記事があります。Icelandic volcanic eruption prompts evacuation, flight diversions 現地時間2010年3月20日午後10時30分から午後11時30分(UTC)にかけて、氷河の数 km東にあるフィムヴェルズハゥルス峠の北側の斜面で遂に噴火が起こり始めた。エイヤフィヨットル、フリョゥスフリーズ(英語版)、ランドエイヤル(is)の地域に住まいを構える500人ほどの農家とその家族は一晩の間避難を余儀なくされ、レイキャヴィーク空港及びケプラヴィーク国際空港を離着陸する航空機は欠航が相次いだ。しかし、翌3月21日の夜には国内線・国際線ともに復旧している。 避難していた危険地域の住民達は、3月22日夜の市民保護部 (Civil Protection Department)の会議後に帰宅を許されたが、それはあくまで一時的なものに過ぎなかった。警察によりソゥルスメルク(英語版)やフリョゥスダールル (英語版)の渓谷地帯の道は封鎖され、通行を許可されたジープ便だけがスコゥガル村からフィムヴェルズハゥルス峠にかけての区間を通行することを許可された。3月29日には一時的に通行止めは解除されたものの、「2つ目の亀裂」が発見されると、「氷河や雪原の近くで噴火が起こり、ラハールが発生する危険性が高まった。」として、再び道路は封鎖された。しかし、この封鎖も翌4月1日正午過ぎには解除された。 噴火が起こった斜面には、巨大な亀裂が北東から南西にかけて長さ500 mに渡って広がっており、そこにあると考えられる10箇所から12箇所ほどの噴火口からは摂氏1,000度(華氏約1,830度)の溶岩が高さ150 mまで吹き上がった。溶岩はアルカリ性で粘度は高く、溶岩流の移動速度は遅かった。そのため、これは典型的なeffusive eruptionに分類される。溶岩は亀裂の4,000 m以上北東まで到達し、フルーナギル(Hrunagil)渓谷では、200 m(620 ft)以上の『溶岩の滝』が形成され、ソゥルスメルクへとゆっくりとした速度で流れ込んだ。また、溶岩流は3月28日か3月29日までにはクロスアゥ (Krossá) 氾濫原に達し、景色を激変させてしまうだろうと予想されていたが、今のところこの場所に溶岩流が到達したという報告はない(2010年4月5日現在)。2010年3月25日、科学者たちはこの地で偽火口 (pseudocrater) が噴火の時の水蒸気爆発により形成されるのを、有史以来初めて目撃することとなった。ソルヴァルスエイリ (Þorvaldseyri) での地殻変動は噴火が始まってからも2日間に渡って続いたが、徐々に終息する傾向にある。それに伴って今度は火山活動が活発になり、それはマグマ溜まりのマグマが減少していく傾向にあるということを示しており、噴火活動は小康状態に入るだろうとの見方が強くなった。現地時間3月31日午後7時(UTC)に、最初の噴火の亀裂の200 m北西に新たな亀裂(「2つ目の亀裂」)が発見された。多くの人々がこの亀裂の出現する瞬間を目撃している。目撃者の証言によると、「その亀裂は300 mほどの小さなものである。」とのことで、この亀裂から流れ出た溶岩は、既にフルーナギル渓谷に達している。地理学者によると、この2つの亀裂は地下で同じマグマ溜まりを共有しているようである。なお、この新しい亀裂が出現した際に、付近の地震計やGPSが異常な地震活動や地殻変動を捉えたという報告は一切なかった。 地理学者のマグヌース・トゥミ・エイナルスソン (Magnús Tumi Einarsson) はクヴォトルスヴォトルール(英語版)村での2010年3月21日の報道会議の場で、「この噴火はヘクラ山での2000年の噴火のように、比較的小規模なものになるだろう。」と語った。噴火は、氷河の地下というよりも、エイヤフィヤトラヨークトル氷河とミールダルスヨークトル氷河の間にある峠で発生した。この場所は氷河からも離れているため、洪水の危険性は低いと考えられたが、噴火口の亀裂が氷河にまで延び、洪水の危険性が一気に高まる可能性も捨てきれなかった。アイスランド気象研究所のレーダー基地では、噴火開始から24時間以内は火山灰が観測されることはなかった。しかし、2010年3月22日夜に、フリョゥスフリーズ (Fljótshlíð) 地域(噴火地点より20 kmから25 km北西)で火山灰の降下が確認され、Hvolsvöllur町(噴火地点より40 km北西)でも、火山灰により車両がうっすらと灰色に染まる光景が見られた。3月22日午前7時頃、上空4 kmにも達する大きな噴煙が空に上がり、これは噴火が始まって以来最高のものとなった。現地時間2010年3月23日8時30分(UTC)、近くにあった雪の吹き溜まりまで高温のマグマが接近したことで小規模な水蒸気爆発が発生し、上空7 kmに達する水蒸気の柱が上がった。アイスランド気象研究所のレーダーがこの水蒸気爆発を観測し、それ以来、数多くの水蒸気爆発の発生が確認されている。 現地時間2010年3月22日午前10時頃(UTC)、クロスアゥ (Krossá) 川(この川の水はエイヤフィヤトラヨークトルやとミールダルスヨークトルに流れ込む)のソゥルスメルク地区(噴火地点から数 km北西の位置)に設置された流量測定装置が、この川の急激な水位と水温の上昇を記録。最終的に水温は2時間余りで摂氏6度(華氏43度)も上昇し、これは観測史上最高値となった。その後間もなく水位と水温はほぼ元の値へと戻っている。フルーンアゥルギル(Hrunárgil)渓谷を流れるフルーンアゥ(Hruná)川に溶岩流が入り込み、水温が摂氏50度(華氏122度)から摂氏60度(華氏140度)の間まで上昇していることが地質学者の計測により判明した。これによりこの渓谷に流れ込んだ溶岩はこの川の水によって冷却されていることが証明された。 噴火口の近くで採取された火山灰のサンプルに含まれていた二酸化ケイ素の含有率は58%で、溶岩流のものより高濃度であった。また火山灰中の水溶性フッ化物の濃度はヘクラ山のものの3分の1くらいで、これは平均で灰1 kgあたりに104 mgのフッ化物が含まれていることになる。近くの農家には、「家畜に池や川の水を飲ませないように。」と注意が呼びかけられた。家畜の腎臓や肝臓に悪影響を及ぼし、死亡させてしまう危険があるためである(特に羊は危険性が高い)。しかし、この地域の伝統的な農業はアイスランドにとって欠かすことのできないものであった。 噴火の知らせを受け、さっそく「火山観光ツアー」を企画した旅行社も現れた。
※この「第1段階:溶岩を噴出する噴火」の解説は、「2010年のエイヤフィヤトラヨークトルの噴火」の解説の一部です。
「第1段階:溶岩を噴出する噴火」を含む「2010年のエイヤフィヤトラヨークトルの噴火」の記事については、「2010年のエイヤフィヤトラヨークトルの噴火」の概要を参照ください。
- 第1段階:溶岩を噴出する噴火のページへのリンク