キリスト教福音宣教会
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キリスト教福音宣教会(キリストきょうふくいんせんきょうかい、Christian Gospel Mission[1])は、キリスト教プロテスタントに属する教会。「CGM」「JMS」「摂理」などとも呼ばれる。創設者は鄭明析。教団の本部は大韓民国忠清南道錦山郡珍山面石幕里(月明洞)にある[2]。世界77カ国に数万人の信徒がおり、日本では30教会を有する。
起源
1982年3月に鄭明析が韓国で設立した「韓国大学宣教会」を起源とする[3]。その後、1999年10月に「キリスト教福音宣教会」を設立し現在に至る。日本への伝来は1985年。
教義
基本理念
イエス・キリストの福音を伝えることに対する至上命令を基本に、21世紀最大のトピックである平和をこの地に実現しようという全世界と全世代への「愛すれば平和が来る」という精神を伝え、実践することを設立理念としている[4]。 「宗教は理論ではなく生活」であり、神を愛することで神の性格に似ようとし、御言葉を聞いて実践することを重視し[5]、実際の生活の中で、聖書に記録された神とキリストの教えと愛を実践することによって、生活に息づかせ、真に平和な世界の実現を目指している[1][6]。
キリスト教福音宣教会では御言葉を重要視しており、特に主日、水曜日に伝えられる御言葉を重要視している。
Bible Study(30個論)
創設者の鄭明析が修道生活の中で体系化した一連の講義。
初級
- 聖書を見る観
- ペテロと魚
- 日よ、とどまれ
- エリヤとカラスのパン
- 7段階の法則
- 人間(三分説)
- 比喩
- 火の概念
- 終末
- 洪水の裁き
- 無知の中の相克世界
中級
- 異端
- 予定
- 中心人物
- 復活
- 三位一体
- 御子
- 啓示
- 霊界
- 天使とサタン
- カインの性格
- 罪と悔い改め
上級
- 再臨
- 引き上げ
- 創造目的
- 堕落
- イエスとエリヤの再臨実相比較
- バプテスマのヨハネとイエスの関係使命
- 二本のオリブの木と二人の証人
- ひと時ふた時半時
- 歴史
賛美歌
鄭明析が作詞作曲した「セノレ」「明曲」と呼ばれるオリジナルの賛美歌が主に歌われる。「セノレ」とは韓国語で「新しい歌」という意味であり、ヨハネの黙示録14章3節に由来する。その他、牧師や一般会員による創作活動も盛んに行われている。
自然聖殿
教団の本部として、自然聖殿「月明洞修練院」を所有している。所在地は大韓民国忠清南道錦山郡珍山面石幕里。鄭明析が信徒と共に、自らの故郷を開発して造られた。数万人を収容できるほど巨大であり、野心作(やしんさく)と呼ばれる岩の造形や月明湖、316記念館や芝生広場などが特徴的。御言葉や賛美歌によく登場し、月明洞を開発したように、自分自身を神様の構想通りに開発するよう教えられる。
教会
2025年4月18日現在、日本各地に30の教会を有する。
東日本
- 聖恩教会(北海道札幌市)
- 主信仰教会(宮城県仙台市)
- 山形教会(山形県山形市)
- つくば始音教会(茨城県つくば市)
- 主の峰教会(栃木県宇都宮市)
- 主の岩教会(埼玉県さいたま市)
- 千葉愛の教会(千葉県千葉市)
- New Harmony Church(東京都新宿区)
- 主真愛教会(東京都文京区)
- 希望光教会(東京都墨田区)
- Heaven’s Holy Church(東京都品川区)
- Sail of the Lord Church(東京都足立区)
- 東京主信仰教会(東京都江戸川区)
- 天運教会(東京都八王子市)
- 横浜主真理教会(神奈川県横浜市)
- 静岡教会(静岡県静岡市)
西日本
- 主の栄光教会(愛知県名古屋市)
- 主星雲教会(石川県金沢市)
- 京都愛火教会(京都府京都市)
- 主聖霊教会(大阪府大阪市)
- 大阪主愛教会(大阪府守口市)
- 徳島教会(徳島県徳島市)
- 神戸主心教会(兵庫県神戸市)
- Lord Peace Church(広島県広島市)
- Lord’s Fire Church(熊本県熊本市)
- 主恵城教会(愛媛県松山市)
- 埠頭教会(福岡県博多市)
- 主多雲教会(長崎県長崎市)
- Harmony Church(鹿児島県鹿児島市)
- 沖縄聖陽教会(沖縄県那覇市)
礼拝
主日礼拝
毎週日曜日の午前10時から開催。鄭明析が執筆した御言葉原稿をもとに説教が行われる。信徒は御言葉を深く聞き、1週間の生活の中で御言葉を実践するよう教えられる。[7]。
水曜礼拝
毎週水曜日の午後8時から開催。主に鄭明析が執筆した御言葉原稿をもとに説教を行うが、原稿が無い場合は主日礼拝の御言葉を振り返る時間を持つこともある。信徒は週の半ばで自らの行いを見直し、神様のもとに立ち返るよう指導される[7]。
早天礼拝
月曜日から土曜日の午前5時から開催。主に鄭明析が執筆した箴言形式の御言葉をもとに説教を行う。
金曜プログラム
毎週金曜日の午後8時から開催。鄭明析が執筆した御言葉原稿をもとに説教を行う場合もあるが、原稿が無い場合は賛美大会や交流企画など、各教会により様々な企画が行われる[7]。
宣教方法
設立当初は、大学の偽装サークルなどといった非宗教的な団体を通じて、宗教的な性質や教義、本当の目的を明らかにせずに行われていた。東京大学、東京外国語大学、早稲田大学、広島大学などで大学生の信者を獲得したものの、「宗教団体であることを隠した悪質な信者勧誘や、脱会希望者への執拗な引き留め行為」が他宗教団体同様、問題視されていた。
そうした批判も受け、教会や宗派を明らかにした宣教活動が行われるようになり、現在は教義を伝える際、キリスト教福音宣教会の教えであることを明示して伝えることがルール化されている。
献金
鄭明析は村に四軒しかない極貧地域で育った。献金するお金がない時は、家で採れた大根などの野菜のうち、最も形の良いものをきれいに洗って神様に捧げていた。
聖書に記載があるとおり、「献金は神様に捧げるもの」であることを伝えており、「自分の身なりもきちんとするように」と、過度な献金に対する注意喚起もされている。
会員への指導
まずは自分自身が成長すること、そして将来に良い結婚、良い家庭を作ることが教義にある。聖書に基づく婚姻、結婚に関する教育を結婚適齢期の会員にはしており、それ以前の男女交際、婚前交渉は禁止されている。飲酒喫煙も禁止。
2006年の証言によると、配偶者を選ぶための祝福行事は、27歳以上、信仰歴3年以上、3人以上伝道したことを参加条件とした2泊3日ほどの合宿形式で行われ、参加者内で自由に会話して相手を選んで良いが、鄭の承認が必要だったという[8]。2006年春までに6回行われた「祝福式」には150組以上が参加したとされる[8]。
被害[9]。
韓国の毎日放送(MBN)は、鄭明析の一連の性的暴行事件に関する過去の報道内容に対して一部の内容を訂正するプレスリリースを出しており[10]、YTNは過去の報道の内容の一部を修正している[11]。
統一教会と摂理
鄭が修道生活の中で聖書を通読し体系化した「30個論」というものがある。その教えは世界基督教統一神霊協会に類似しているという指摘がある[12]。宗教研究者卓明煥によれば、「30個論」のうち、26・27・28・29・30ら「高級編」を含む9講論には、統一教会の教典「原理講論(원리강론)」と「相当程度」の共通点がみられるという[13][14]。
その点について教団は、鄭が一時期統一教会を訪れたことは事実であるが、訪れる前に既に教団の教義を体系化しており、統一教会の教義に由来するとの風説は非論理的と否定している[15]。
年表
- 1978年6月 - 鄭明析がソウルに上京し、宣教を始める[1]。
- 1980年 - 愛天教会を設立[9][12][注 1]。
- 1981年3月 -「MS宣教教」設立[17]。
- 1982年 - キリスト教福音宣教会の前身となる大学生宣教会創立[1][16]。
- 1983年 - 鄭明析、キリスト教メソジスト派の神学校を卒業。牧師按手礼を受ける[18]。
- 1985年 - 日本支部設立[19][注 2]。
- 1988年 - 台湾支部設立[19]。
- 1989年 - 月明洞自然聖殿の開発を開始。
- 1999年
- 1月 - 海外宣教を始める。(ヨーロッパ、アメリカ、アジア)
- 3月20日 - 韓国SBSテレビの特集番組「救いの門なのか、堕落の罠か JMS」(視聴率34.3%)により、元信者女性の拉致・監禁、鄭の女性信者に対する性的暴行が明らかになる[20]。報道後、テレビ局に100人以上の女性から被害報告が寄せられ、鄭は国外逃亡した[20]。同年7月24日にSBSが続編「JMS その後」を放送すると、社会問題として認知されるようになり、脱会者団体「エクソダス」が組織された[20]。
- 8月 - 地球村文化芸術平和協会(国際文化芸術平和協会・Global Association of Culture and Peace:GACP)設立。GACP第1回国際平和サッカー大会を開催(フランス・パリ)。
- キリスト教福音宣教会設立[19]。
- 2001年
- 2004年8月 - GACP第8回カンファレンス長野 開催。
- 2006年 - 朝日新聞が7月28日から「摂理」を批判告発する報道を開始[21]。日韓の元女性信者が東京で記者会見し、被害実態を証言。「被害者は大勢いる」として世論喚起[22]。
- 2007年
- 5月 - 中国公安当局が遼寧省鞍山市郊外の鄭明析の隠れ家を強制捜索し、翌月鄭を拘束[9]。
- 8月 - 2007国際平和スポーツ芸術 祝典(韓国)
- 2008年 - 中国国務院は鄭の身柄引き渡しを決定し、2月に韓国のソウルに送還されソウル拘置所に収容された[9]。
- 2009年 - 鄭明析に女性信者に対する強姦及び準強姦罪で懲役10年の実刑判決が下り、韓国最高裁が鄭の上告を棄却したため刑が確定した[9]。
- 2014年 - CGMアジアカップサッカー大会 (韓国)
- 2015年 - CGMクリスマスコンサート
- 2016年
- 5月 - Spring Event 2016 ~春の賛美コンサート~ in東京
- 10月 - アジア平和カップ体育大会 (韓国)
- 10月 - Autumn Event 2016 〜秋の賛美コンサート~ in東京
- 2017年
- 8月 - CGMボランティア発足(日本)
- 12月 - 日台韓・合同コンサート ~Peaceful World~ in東京
- 2018年2月18日 - 大田(テジョン)刑務所を満期出所。
- 2019年
関連項目
脚注
- ^ a b c d e “私たちについて”. キリスト教福音宣教会. 2020年7月24日閲覧。
- ^ “Break News 2010/05/17.“정명석 총재의 자연 성전 '감동스런 성전'”” (朝鮮語) (2015年5月17日). 2015年5月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年10月7日閲覧。
- ^ “被害者の性的暴行告訴なく壁に 監禁、傷害での立件視野”. 東京新聞 (中日新聞社). (2007年2月17日). オリジナルの2007年2月20日時点におけるアーカイブ。
- ^ “환경소방경찰신문(環境消防警察新聞)"세계 50여개국 20여만명의 회원 보유, 기독교사의 이정표” (2013年10月15日). 2020年9月30日閲覧。
- ^ “주간저널(週刊ジャーナル)2003/03/20号“기독교의 새로운 시도, 기독교 복음선교회”” (2003年3月20日). 2020年10月7日閲覧。
- ^ “시사뉴스저널(時事ニュースジャーナル)2005年8月号“기독교복음선교회 정명석 총재”” (2005年8月1日). 2020年10月7日閲覧。
- ^ a b c “礼拝”. 天運教会(キリスト教福音宣教会)東京都八王子市/摂理. 2025年4月18日閲覧。
- ^ a b “摂理の合同結婚式150組以上が参加 教祖が縁組”. 朝日新聞. (2006年7月31日). オリジナルの2006年7月31日時点におけるアーカイブ。 2014年7月29日閲覧。
- ^ a b c d e f 野方 2009.
- ^ “MBN뉴스(MBNニュース)” (Japanese) (2015年1月13日). 2015年1月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年9月30日閲覧。 “2014年5月15日に放送された記事内容の中で、キリスト教福音宣教会から事実と違うと知らせてきたため、これを正します。事実と異なる内容で、キリスト教福音宣教会の鄭明析(チョン・ミョンソク)総裁と会員たちの名誉を毀損した点についてお詫び致します。”
- ^ 引用エラー: 無効な
<ref>
タグです。「YTN
」という名前の注釈に対するテキストが指定されていません - ^ a b Sakurai, Yoshihide (18 May 2007b), “日本のカルト問題 : 「摂理」を事例に”, 日本近代学会大会 , "1975-77年の間に統一教(統一教会)に関わった。そのために、摂理の教義は統一教会の教義とかなり似通ったものになっている。"
- ^ 卓明煥 (탁명환)『기독교 이단 연구 [キリスト教カルトの研究]』국제 종교 문제 연구소、1986年。[要ページ番号]
- ^ 櫻井 2006, pp. 2–3 [143–4]: ”研究家、卓明煥『キリスト教異端研究』(国際宗教問題研究所、1986)によれば(表2)、14,17,19,20,26,27,28,29,30 の各章に統一教会の『原理講論』と相当程度の類似がある。”
- ^ 当宣教会と他の宗教団体との関連を窺わせる言及について 2022年7月10日
- ^ a b 秋本 2019.
- ^ “삶의 여정”. 기독교복음선교회. 2015年9月24日閲覧。
- ^ 秋本彩乃『命の道を行く 鄭明析氏の歩んだ道』パレード、2019年、150頁。ISBN 9784434262944。
- ^ a b c 秋本彩乃『命の道を行く 鄭明析氏の歩んだ道』パレード、2019年、106頁。 ISBN 9784434262944。
- ^ a b c 櫻井・中西 2010, pp. 414-415.
- ^ 櫻井 2006.
- ^ 「「被害者 大勢いる」 元女性信者 勇気ある告発 「摂理」教祖の暴行」 2006年8月8日(火)「しんぶん赤旗」
- ^ a b “시사저널(時事ジャーナル)“(단독)종교단체 JMS, 대우조선해양건설 무자본 인수?”” (2019年4月17日). 2021年1月23日閲覧。
- ^ “시사저널(時事ジャーナル)“정정보도문”” (Japanese) (2020年2月7日). 2021年1月23日閲覧。
注釈
出典
- 櫻井義秀、中西尋子『統一教会 日本宣教の戦略と韓日祝福』北海道大学出版会、2010年。 ISBN 978-4832967205。
- 櫻井義秀「「カルト」の被害をどう食い止めるか : 摂理とキャンパス内勧誘」『中央公論』2006年10月、142-149頁。
- 野方いぐさ「「性的な堕落」は教祖自身!?」『GAKKENムックEsoterica別冊[図説]宗教と事件―この国をほんとうに動かしたのは誰か?殺人事件からスキャンダルまで』、学研プラス、2009年、150-151頁。ISBN 9784056054477。
- 文化庁編『宗教年鑑 令和元年版』文化庁、2019年。 平成26年版から冊子の市販は行わず、文化庁ホームページでPDFファイルにて公開。
- 秋本彩乃『命の道を行く 鄭明析氏の歩んだ道』パレード、2019年。 ISBN 9784434262944。
外部リンク
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