台湾への日本映画輸出
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台湾への日本映画輸出は、1969年に日本映画の輸入が台湾映画の製作に圧迫を与えるという理由で、事実上輸入禁止措置がとられ、日本が中国と国交を回復した1972年以来、商売の道も閉ざされ、1973年から全面的に禁止された。岡田茂映連会長以下、各映画会社首脳陣の長年の努力が実り、台湾行政院新聞局から映連に、1980年の金馬奨に日本映画の出品要請があり、1980年、当時の映連加盟四社から各一本づつ、松竹『砂の器』、東宝『サンダカン八番娼館 望郷』、東映『二百三高地』、日活『先生のつうしんぼ』の4本が金馬奨の招待作品として上映された。以降は日中関係も懸念され、濃すぎる日本色を抑えるためか、台湾の製作者や一部ジャーナリストの間で解禁に反対の声もあったが、1982年に岡田映連会長が訪台した際に、宋行政院新聞局局長に「(1980年の)金馬奨に出品した4作品だけでも特別に輸入を解禁してほしい」と要請。台湾側の外貨事情、対日感情の好転などの背景もあり、これが認められ1983年12月6日に東京会館での記者会見で岡田が「台湾が15年ぶりに日本映画輸入の門戸を開いた」と発表し、1984年8月、台湾行政院新聞局から正式に日本映画輸入を解禁するとの報道された。これを祝して1985年2月に新宿東映ホール1で日本で初めての台湾映画祭が開催された。復活初年度の1985年は、東映だけ『二百三高地』を『魔界転生』に入れ替え、他の三社は1980年の金馬奨に出品した同じ作品が台北、高雄の映画館で一般公開され、日本映画の輸出が復活した。台湾の解禁で主要国で日本映画を上映禁止するのは韓国だけとなった。これらは大人気となり、現地の業者が群がり大変な騒ぎになった。翌1986年は前年の4本から6本に枠が増え、増加分は映連加盟四社で抽選があり、抽選に勝った東映と松竹が2本づつになり、角川映画は当時映連に加盟していなかったが、『里見八犬伝』はこの東映の増加枠に入れられ、1986年9月25日に台湾で公開され大ヒットした。Record Chinaは、大ヒットした日本映画の1本として『里見八犬伝』を挙げている。封切に合わせ、薬師丸ひろ子や松坂慶子、三船敏郎、岡田茂東映社長・映連会長らが訪台し、台湾でも大人気の薬師丸が熱烈歓迎を受け、大きな騒動になった。当時台湾では最新の日本とアメリカのビデオが見られる同伴喫茶が大流行しており、台湾のヤングは国際芸能によく通じていたという。岡田は台湾の映画関係者と輸入に関する取り決め事項の調整を行った。『海角七号 君想う、国境の南』の監督・魏徳聖(ウェイ・ダーション)は「『里見八犬伝』は初めて自分で2回チケットを買って観た作品なんですよ。今でもストーリーや登場人物を鮮明に覚えています」などと話している。 1986年から1994年10月にかけては、行政院新聞局が6回の輸入割当本数の告示を行い、合計201本の輸入割当を許可したが、日本映画の著作権料が跳ね上がり、実際に輸入された日本映画はこの間52本であった。1994年10月以降は全面的に日本映画の輸入が解禁されている。日本映画輸入自由化は、岡田茂映連会長の永年の努力が大きいといわれる。1986年の岡田と台湾の映画関係者との折衝の際に、台湾側から「日本映画は輸出するのに、台湾の映画は日本ではやってくれないではないか」と不満が出て、急遽、東映で1987年2月14日から『スケバン刑事』との併映で公開予定だった香港映画『蜀山』(『蜀山奇傅 天空の剣』)を後ろにずらし、台湾側から要望があった『カンフーキッド/好小子』をこの枠に入れ、東映洋画系で公開した。同作は日本のメジャー映画会社の番線に乗った初めての台湾映画である。また1995年4月に台湾初のCATV、党営の「博新多媒體」(PHTV)が開局の際、これらの交渉で岡田と懇意になった同社社長・廖祥雄からの要請で、東映台(東映チャンネル)がディズニー台(ディズニー・チャンネル)などと共に四チャンネルの一つに選ばれた。台湾はレンタルビデオやCATVなどのメディアの普及が日本より早かった。台湾は1960年代から1970年代に日本映画の興行を禁止していたため、台湾人には東映のヤクザ映画が新鮮で人気が高かったという。東映台は三年の供給契約で東映の過去の映画850本とテレビドラマなど供給本数は1600本に上った。台湾のCATVで最初に放映された日本映画・ドラマは東映作品であった。東映はこれを機にアジア戦略を強化し、日本での二次利用、三次利用が一段落ついた旧作品ビジネスをアジアで広げようと1996年夏に日本で公開されたが配収が4億円と振るわなかった『That's カンニング! 史上最大の作戦?』の主演・安室奈美恵が1997年にアジアでコンサートを開いて人気を高めたことから香港で同作を上映したり、当時アジアの衛星放送で日本のトレンディドラマが相次いで放送され、『Lie lie Lie』の出演者である豊川悦司や鈴木保奈美らが知名度を高めていたことから台湾と香港で日本公開に先駆け同作を先行上映するなどしている。
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