反対運動が強まる
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こうした中、既に管理栄養士養成課程を設置している松本大学 がこの構想案に強く反発、構想案決定時の委員会を傍聴していた住吉廣行・松本大学長が「何のための審議なのか。私大の存続を圧迫する設置構想には最後まで反対したい」と批判、他の県内私立大学とともに改組反対運動を展開する意向を表明するに至り、いよいよ事態は混迷の度を深めた。事態打開のため同月21日、阿部知事自ら急遽松本大学を訪れ住吉学長に構想案を説明するも住吉学長から「こちらから歩み寄ることはない」と返され、議論は平行線を辿った。和田副知事らも諏訪東京理科大学などを訪れ説明に努めるも了解は得られなかった。 県内私大側との溝を埋められないまま、構想案を県の方針とせざるを得ない状況となり、同月24日、長野県短期大学を改組し4年制化する県立大学の基本構想を決定、同時に県内私大振興案も発表した。決定した基本構想は設立準備委員会がまとめた内容に字句の修正を加え、既存の県内私大の懸念や反発を意識し「グローバルな視野を持った人材育成」という4年制県立大学の特色を強調、1年次全寮制、全学実践英語力習得集中プログラムの導入、留学など海外プログラム必修化などにより既存の県内私大との差別化を図った。また県内私大振興案では「産学官共同人財育成円卓会議」(仮称)の開催や県内私大による地域貢献への財政支援検討、県と私大との連絡会議の開催などの構想を示した。同日、連日の混乱を受けて臨時に記者会見した阿部知事は、県内私大との差別化に重ねて言及し、特色を強く打ち出すことで管理栄養士養成コースや経営系学科設置に対する私大からの異論や反発に答え、県内私大との協力関係を構築したい考えを示した。 一方、住吉学長が改組反対運動を展開する意向を表明した松本大学と設置者である学校法人松商学園は、松本大学同窓生・松商学園関係者らが中心となって同年7月、「新県立大学構想の見直しを求める会」(代表・横山公一松商学園常務理事)を結成。同会は「多額の税金を使い県内私立大学を圧迫してまで新県立大学を設立することは県民益に適わない。広く県民の意見を聞き、検討を重ねることを求める」と主張、長野県議会9月定例会への請願提出を目指し、8月盆休み明けから県立大学の基本構想の見直しを求める署名活動を開始した。松商学園高等学校の同窓会会員や松本商工会議所などが会に協力し、9月中旬までの約1ヶ月の間にのべ9万6000人を超える署名(知事宛9万6025人、県議会議長宛て9万6104人)を集めた。同月23日には学校法人松商学園が中信地区選出の各会派県議会議員8名を松本大学に招いて懇談会を開催、横山代表が署名活動の趣旨説明を行い、住吉学長や松商学園の藤原一二理事長らも意見を述べた。同月24日、横山代表が長野県庁を訪れ、本郷一彦県議会議長に請願書を、阿部知事に陳情書を、それぞれ署名簿を添えて提出した。請願は9月県議会総務企画委員会に付託され、審議される。同月25日からの県議会の一般質問開始に合わせて提出し、県議会内での議論を促すという。またこの請願は県が9月定例会に提案した県立大設立準備の関連経費972万円の補正予算案審議にも影響を与え、県議会9月定例会最大の議題ににわかに浮上した。横山代表から陳情書を受け取った阿部知事は、面会した横山代表らに対し、松本大学が競合を懸念している新県立大学の健康文化学科・管理栄養士課程食健康コースの定員は25〜30人程度に絞る考えを示した。また知事は6月の基本方針決定の際の「差別化する」との説明を繰り返し、「県民意見は十分に聞く。県立大と私大が共に発展できるようにしたい」と述べて理解を求める一方、県内高卒者の県外流出や管理栄養士の需要増などを根拠に、県立大学の設立や管理栄養士課程の必要性を強調した。本郷議長は「所管の委員会において慎重に審議する」とのみ述べた。県議会9月定例会では施設整備専門部会、教育課程・教員選考専門部会の設置にかかる関連予算は可決されたものの、委員の日程調整の遅れなどを理由に設置が延期された。その後施設整備専門部会(有識者ら5名による。部会長・上野武千葉大学工学部教授)は11月県議会開会直後に設置されたが、教育課程・教員選考専門部会の設置については先延ばしされた。 「新県立大学構想の見直しを求める会」はなおも署名活動を継続するほか、長野大学関係者も県立4年制大学開学による志願者大幅減への懸念を表明した。県内私大との差別化を図ったとされる「グローバル化」や「英語教育重視」「留学」なども新設大学が掲げる教育内容としては広く見られる要素であり、長野市内においても既に清泉女学院大学が「英語」や「海外体験」などを重視する教育を行っている。県内私大側では県の構想への反発や懸念がますます強まっており、県内教育関係者の間でも異論が提起され続けている。同年10月18日、阿部知事は愛知県名古屋市にて開かれた中部圏知事会主催の公開シンポジウムの席上、県立大の開学について「最速で2017年度、または18年度。まだ決めていない」と述べ、初めて2018年度開学の可能性に言及した。また県も11月21日に開会した県議会11月定例会に提案した補正予算案に新県立大設置関連経費を計上しなかった。このため施設整備専門部会において施設設計・施設設備の具体化に向けた検討を行っても、それにかかる経費の計上は2014年度以降にずれ込む見込みとなったため、開学時期が再延期される可能性も出ている。高田幸生・県総務参事(県立大設立担当)は「県立大の開学時期は基本構想では『施設整備計画等を策定する中で決定していく』としており、構想に何ら変更はない」と述べたものの、県立大基本構想の見直しを求める意見にも一定の配慮を見せた形となっている。
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