反対運動とその反響
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「FUTURE WAR 198X年」の記事における「反対運動とその反響」の解説
制作準備段階だった1981年2月、東映動画の労働組合は本作の準備台本1冊を入手し、これがコピーされて職場で回覧される。現場の従業員からは「戦争がカッコよくしかもリアルに描かれ危険」という意見が出され、組合は教職員組合やPTAにも呼びかける形で反対運動を開始した。この運動は同年4月3日付朝日新聞に「組合が本作の一切の製作協力拒否を会社側に通告」という形で掲載され、この記事に関心を寄せた団体「日本母親大会」が反対運動に参加。5月15日には日本母親大会や東京都教職員組合、「日本子どもを守る会」など38団体が日本教育会館で集会を開いて「戦争アニメを作らせないようにしよう」というアピールを採択し、7月17日に「『198X』に反対する会」が結成された。 アニメ雑誌『アニメージュ』は本作の完成が近づいた1982年4月号で「FUTURE WAR198X年をきみたちはどう見るか!?」という記事を掲載した。その内容は、本作の最高責任者(製作総指揮)である東映の渡邊亮徳常務に芸能評論家の加東康一が質問する形での対談と、アニメ監督の勝間田具治や東映動画労組の副委員長、子ども調査研究所長の高山英男、日本母親大会事務局長の談話を並べた「私はこう思う!」と題したコメント集からなっていた。対談の中で渡邊は「”動くゲルニカ”を作ってやろうと思った」「第三次世界大戦が起こったらどうなるのかを観客に提示することが、ほんとうの意味で平和への示唆になる」と製作理由を述べている。また、アニメでリアリティが出るのかという加東の質問には「生頼範義のイラストへの起用とコンピューター・アニメ(原文ママ)でリアリティを出そうとした」と答えている。渡邊はそれらも含めた総制作費を6億円と明かし、フルオーケストラ音楽の使用やフランスの有名デザイナーへの衣装デザイン発注などもおこなったと述べている。当時の「右傾化」傾向の延長ではないか、現実の世界大戦を想定した作品を中高生という「子ども」に見せるのは危険ではないかという加東の問いに対して、渡邊は戦争映画即右傾化ではない、悲劇も描いており、なぜ未来を描いて「右傾化」になるのかと答え、「絶対、好戦映画にはしてありません」と述べた。 「私はこう思う!」では勝間田が自分にも戦争体験があり好戦的作品は絶対に作らないと発言する一方、組合の副委員長は作品に平和への尊厳がない、スタッフの中にも生活のために「いやいややっている」人がたくさんいると述べ、高山英男は「台本には平和の志がないが、組合側も平和を望むなら実力行使でもして止めるべき」と両者を批判するとともに作ること自体には反対ではないが自分の子どもには見せないとコメントした。 監督の舛田利雄は、組合のボイコットを受けて作品内容をより平和を希求する方向に修正したと後年回想しており、上記記事で「日本母親大会」の事務局長も自分たちが反対の声を上げたことで、シナリオの内容がどんどん変わったと述べている。 当時、『アニメージュ』にエッセイ「月づきの雑記帳」を連載していた安彦良和は、次の5月号でこの話題に触れ、「まじめな反戦映画になるだろうなどとは全然思わない。そういうものを目指して企画されたとも思っていない」と述べた上で、「大変月並みで通俗でマトを得ていない(原文ママ)政治認識をあたかも最もシビアな現実であるかのように錯覚して、その上に物語を築いてしまったこと」を「(本作が)犯してしまった最大の間違い」と批判した。さらに、アニメのリアリズムは「ウソのかたまり」であるアニメをそれらしく見せるための手段に過ぎず、戦争を真剣に考えるためのフィルムとしてはアニメは不適であると指摘している。また、衣装デザイナーや生頼範義のイラストの起用などを「大ゲサ趣味」と評し、「百歩譲って、現実政治を素材としてリアリズムで反戦を謳うというモチーフがありえたとしても、その作品は多分6億円などという法外な製作費は必要とはしないはずだ」と述べている。渡邊の「アニメでゲルニカ」発言には「偽善のニオイ」を嗅ぎつけて反感をおぼえたという。安彦はこのエッセイの最終回で、この回の内容に対する反響の多くが「あなたの言うことはわかったからそれが正しいかどうかは自分で考えてみる」という真摯なものだったことが嬉しかったと記した。
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